新型コロナウイルスが世界的な猛威を振るうなか、全米で住宅価格の高騰が続いています。今回はオープンハウスのウェルス・マネジメント事業部が、アメリカにおける「住宅価格」高騰の理由を考察していきます。

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なぜコロナ禍でも、住宅価格が高騰しているのか?

アメリカの住宅価格水準を示す指標、S&P/ケース・シラー・全米住宅価格指数によると2020年11月の住宅価格は前年同月より9.5%上昇。またオンライン不動産データベースZillowによると、2019年末時点の住宅価格の平均は24万5,000ドルでしたが、コロナ禍を経た現在では26万6,000ドル以上にアップしています。

 

新型コロナウイルスの影響でさまざまな業界に不況が訪れるなか、なぜ住宅価格は高騰しているのでしょうか?

 

その要因を一言で表すなら「需要と供給の不均衡」に尽きます。

 

家を探している人の数(需要数)が物件の数(供給数)を上回れば、限られた物件を多くの購入希望者が取り合うことになり、価格は高騰。一方、市場に出回る物件の数(供給数)が購入希望者(需要数)よりも多ければ、価格も当然下がります。

 

これに沿って考えるならば、新型コロナウイルスは住宅の需要数を増やし、かつ供給数を減らしたといえるでしょう。ではその背景には、どのような要因があり、どのようなメカニズムが働いているのでしょうか?

住宅ローンの金利引き下げが価格高騰の大きな要因に

「需要」という観点から、今回の住宅価格の高騰を見ていきます。住宅購入の需要が増大した最大の要因として挙げられるのが、住宅ローン金利の引き下げです。

 

コロナ禍による景気悪化に対する救済措置の一環として、住宅ローン金利は今、かつてない水準にまで引き下げられています。2021年1月時点の金利は、過去最低の2.65%。家を購入する際にローンの借り入れを行う人は大多数ですが、かってない低金利で借り入れコストも大幅に下がり、「今が買い時」と考える購入者が増えているのです。

 

具体的な数字を追って見てみましょう。

 

約1年前の住宅ローン金利は3.73%。この時に固定金利の30年ローンで30万ドルの家を購入したとします。その場合、購入者が支払う総額は約49万8,940ドル。トータルで住宅本体の価格より20万ドル近くを余計に支払う計算になります。

 

一方、2021年1月の金利2.65%時に同じ条件で住宅を購入した場合、支払う総額は約43万5,200ドル。1年前に購入した場合と比べて、差額は6万ドル以上にもおよび、日本円で優に600万円を超える節約が可能になります。

 

こうした比較からも、金利が低い今のタイミングで住宅を購入しようと考える人が増えるのは、ごく自然なことだといえるでしょう。

「アメリカの人口構造」が住宅購入者数の増加を後押し

その他、さまざまな要因も住宅購入者数の増加を後押ししています。

 

大きな要因として挙げられるのが、アメリカの人口構造です。高齢化が進む日本と比べて、アメリカはミレニアル世代(1981年以降に生まれ、2000年以降に成人を迎えた世代)の人口が多い国だと言われています。そうしたミレニアル世代の多くが住宅を購入する年齢期を迎えていることも、需要増を後押しする要因になっています。

 

またリモートワークが一般的なものとして普及するなかで、ホワイトカラーで高収入な仕事ほど、オンラインで仕事を完結できる傾向が強くなっています。こうした購買力の高い人々が自宅で過ごす時間が増えたことで、住宅購入への関心が一気に高まったことも、需要増の要因として挙げられるでしょう。

 

また、郊外への移住者が増えていることも、需要増に間接的に関わっています。都心に比べ土地が余っている郊外は、もともと持ち家比率が高く、手が届きやすい価格帯の物件も多いとされていました。これまでは都市部の賃貸住宅に住んでいた人が、郊外の戸建て住宅購入に踏み切る。コロナ禍を機に、そのような決断を下す人々が増えたことも、ごく自然なことだといえます。

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本記事は、富裕層のためのウェブマガジン「賢者の投資術」(Powerd by OPEN HOUSE)にて公開されたコラムを、GGO編集部にて再編集したものです。