「ソーシャルレンディング」は、個人を中心とした幅広い投資家と、借り手企業とを結ぶ、新たな投資手法です。年間5~10%の高利回りが人気となり、銀行の定期預金や国債などに代わる新たな資産運用手段として注目されています。しかし一方で、投資利回りが高いぶん、リスクも大きいという不安を抱く投資家も少なくありません。そこで今回、株式会社ジャルコが運営するソーシャルレンディング「J.LENDING」はなぜ安心・安全なのかを、2回に分けて説明します。第3回は社長の田辺順一氏が「J.LENDING」を運営する株式会社ジャルコについて説明します。

2つの不動産事業と金融事業は絶好調そのもの

株式会社ジャルコは1956年に雪ケ谷金属として創業した会社です。現在はジャスダック上場企業であるJALCOホールディングス株式会社の100%子会社です。ソーシャルレンディング市場に参入したのは2015年です。

 

ジャルコはもともと電子部品製造を手がける会社でしたが、業績不振が長く続いていました。私は経営立て直しのために取締役として入社、その後、社長となり、同事業からの撤退を決断、事業転換を図りました。

 

その間に、海外の工場を含め大規模なリストラを行いました。資金繰りに奔走するなど経営再建では想像を絶する苦しみを味わいました。その経験から、新生ジャルコは絶対に潰れない会社にしようと徹底的に考え抜きました。そこで着目したのが不動産と金融でした。

 

 

その2つがジャルコのいまの主力事業となっています。不動産事業は現在、全国に26物件、約285億円の不動産を保有しています。

 

大別して大手物流倉庫、商業施設、アミューズメント施設の3分野の優良顧客にテナントとして貸し出し、20~40年の長期契約で安定した収益(年間約21億円)を確保しています。3分野のバランスはほぼ3分の1ずつで、多くが上場企業です。不動産のエリアも全国にバランスよく配置しています。投資金額は2017年以降、毎年約70億円で、右肩上がりで増えています。

 

もう一つの事業の柱である貸金業は、個人向けではなく、アミューズメントビジネスをはじめとした企業への融資です。融資額は現在、約37億円です。

 

この2つの事業がジャルコの売上の多くを占めています。業績は順調に伸びており、親会社であるJALCOホールディングス株式会社の2021年3月期の売上高は前年同期比約57%増の27.1億円、経常利益は同約29%増の7.9億円で、4期連続増収、3期連続増益です。

 

3の事業「J.LENDING」が安心・安全な理由

この安定した2つの事業基盤をベースに、第3の事業の柱と位置づけているのが、ソーシャルレンディングの「J.LENDING」です。

 

サービスの内容については次回に詳しくご説明しますが、当社は不動産事業と貸金事業で培った実績やノウハウを生かし、信用力の高い企業だけを厳選して融資対象とすることで、より安心・安全なローンファンドの供給を行うことを志向しています。究極的に目指しているのは、社会インフラとしての新しい金融システムの構築。つまり、銀行の定期預金や国債に代わる受け皿になる金融インフラが最終的な目標です。

 

田辺順一・JALCOホールディングス株式会社 代表取締役社長、株式会社ジャルコ 代表取締役社長
田辺順一・JALCOホールディングス株式会社 代表取締役社長、株式会社ジャルコ 代表取締役社長

 

こうした考えを持つようになった背景として、私自身の経歴が関係しています。私は大学卒業後、野村証券に入社しました。地方の支店でまさに「ドブ板営業」で走り回り、多種多様な商品を販売しました。その中には正直、販売に適さない商品もありました。とはいえ証券会社は手数料ビジネスですから、顧客が損をするとわかっていても、末端の営業マンとしては売るしかありませんでした。

 

しかし、そうしたビジネス手法にはずっと忸怩たる思いがありました。本当はいい商品を売りたいし、買っていただきたいけれど、それができない。私はお客さまに損をさせることがどれほど重く、投資家を落胆させるかを、骨の髄まで染みて知っているつもりです。ですから「J.LENDING」のファンド組成においては、「年老いた自分の親にすすめられる投資商品かどうか」という基準を自分の中に設けています。

 

私は、ソーシャルレンディングが金融の社会インフラにならなければいけないという強い思いがあります。起業家は通常、最初に銀行に融資を申し込みます。しかし、銀行の融資はハードルが高い。また、すでに銀行から借り入れているけれど追加融資が受けられない企業もあります。私自身、ジャルコの再建でそのことを、身をもって経験しています。

 

定期預金に代わる「金融インフラ」に育てる

そうした企業に対し、当社が融資を行う。その原資となるのが「J.LENDING」で投資家から集めたお金です。そのためにも銀行の定期預金に預けているお金を、「J.LENDING」に投資していただくことが重要になります。現在、銀行の定期預金はほぼゼロ金利ですから、「J.LENDING」への投資は投資家にメリットがあります。同時に銀行からの融資が受けられない企業にとっては、借り入れのチャンスとなります。

 

「期限の利益」という言葉があります。私は「債務者が買う将来の時間」を期限の利益と理解しています。その期限の利益を当社は販売していると考えています。チャレンジしたい人が、機会均等で誰もが平等にお金を借りられる仕組みをつくりたいのです。期限の利益とは言い換えると「将来への希望」のようなものです。期限の利益を提供できるというのは、とても夢のあるビジネスだと思っています。

 

こんな話をすると、偽善者のように思われるかもしれませんが、私は本気です。当社はソーシャルレンディング事業を社会貢献の一環として位置づけています。この点が同業他社とは大きく異なるポイントです。当社の事業の2本柱は盤石な収益体制を構築し、業績は好調です。

 

したがってソーシャルレンディング事業では大きな収益を生み出す必要がありません。もちろんビジネスですから最低限の収益確保は不可欠ですが、急速な事業拡大は必要ありません。利益を最優先すると、どうしてもムリが生じます。結果、デフォルトなどの問題が発生する可能性が高まり、「安心・安全」なソーシャルレンディングが実現できません。

 

実際、当社の利幅は非常に少ないです。たとえば、融資先企業に年利6%で貸し出したとして、投資家には5%配当します。当社の利益は1%です。

 

とはいえ、どんなに理想を語っても、残高が10億円程度では意味をなしません。当社が金融業界で存在感を示すためには1000億円の残高が必要だと考えています。もちろんそれは先の話ですが、幸い「J.LENDING」は順調に口座数が増えています。再投資率はほぼ100%です。2020年度の募集額は14億5000万円で、2021年度は50億円を予定しています。ちなみに今年4月に募集した1億5000万円のファンドは、約1分で完売となりました。

 

 

田辺順一
JALCOホールディングス株式会社 代表取締役社長
株式会社ジャルコ 代表取締役社長

 

取材・構成/田之上信
※本インタビューは、2021年4月26日に収録したものです。

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