居住用であれ賃貸用であれ、購入した不動産の価値は保ちたいものです。高価格なタワーマンションならなおさらでしょう。本記事では、資産価値を保ちやすいタワーマンションの選び方を解説します。※本連載は、将来お金に困ることがないように、若いうちからできるライフプランニングに役立つ情報を紹介する「ライフプランnavi」の記事を抜粋、一部改変したものです。

そもそも「マンションの資産価値」とは?

ほとんどのタワーマンションは、一般マンション(タワーマンション以外のマンション)より高額です。しかし、タワーマンションにもグレードの違いがありますし、同じマンションでも低層階と高層階では価格差があります。そのため、タワーマンションと一般マンションとの価格差については簡単には語れません。とはいえ、面積が同じなら、一般的にはタワーマンションのほうが高価格です。

 

注意が必要なのは、「高価格=資産価値が落ちにくい」ではないという点です。

 

では、マンションを投資対象として見た場合、その資産価値はどうやって計るのでしょうか?

 

不動産の価格は、固定資産税評価額や相続税評価額といった、公に定められるものもありますが、それらと実際に売却する際の市場価格とは大きく乖離しているのが通常です。そして、より重要なのは市場価格のほうなのです。

 

「不動産は世界に2つと同じ物件がない」といわれるとおり、建物が違えばもちろん、同じ建物でも階数や位置が異なれば違う物件であり、価格も異なります。中古なら部屋の状態にも左右されます。

 

不動産の価格は「相対(売り手と買い手の一対一)」で決まり、物件の状況や売買当事者の状況(売却を急いでいる、購入意欲が高い、等)によっても変わるだけでなく、そのときどきの不動産市況や景気動向などの影響も受けます。

 

上記のような影響を受けつつも、新築販売時の価格から大きく下がりにくいマンションが、資産価値を維持しやすいマンションだといえるでしょう。

 

たとえば、新築時に1億円で、5年後に8000万円で売れたタワーマンションと、新築時に3000万円で、5年後に2600万円で売れた一般マンションでは、後者の方が資産価値を維持できているということになります。

 

資産価値は、実際に売却しなくてもある程度見当がつけられます。近隣の似たタイプの物件の取引相場から推測したり、賃貸に出した際の利回りからも計ることができます。

 

もし1億円で購入したマンションを月30万円で賃貸に出し、年間360万円の賃料収入があれば、3.6%の表面利回りです。3000万円で買ったマンションを月10万円で賃貸に出し、年間120万円の家賃収入があれば、4%の表面利回りということになり、後者の方が資産価値が高い、ということになります。

 

資産価値は、購入金額と売却金額の比較、あるいは購入金額と貸し出したときの賃料の比較などにより計ります。そのため、相続税評価額や固定資産税評価額、あるいは売却価格などだけでわかるほど単純ではないのです。

タワーマンションの資産価値を支える3つの要素

最初に書いたように、タワーマンションの価格は、一般マンションと比較して高額ですが、その高い金額分が正当なプレミアム(価値を反映した上乗せ分)なのか、見極めることが重要です。

 

たとえば、デベロッパーが強気な価格設定をしていて、正当なプレミアム分よりも販売価格設定が割高になっていたら、そのマンションの資産価値は下がりやすくなるでしょう。

 

では、タワーマンションのプレミアム分が正当なものかどうか、どうやって判断すればいいのでしょうか?

 

プレミアムは「タワーマンションであること」から生じるのですから、「タワーマンションならではの特徴」がどの程度しっかりしているか、という視点で判断するのがいいでしょう。特徴が弱いのに一般マンションより高額なら、割高であり、資産価値が落ちやすいと判断できるということです。

 

タワーマンションならではの特徴にもいろいろありますが、多くの人が求めるのは「眺望」「立地」「共用施設・サービス」ではないでしょうか。そこで、それら3点について確認していきたいと思います。

 

●眺望

 

タワーマンションにおいてもっとも特徴的なのは眺望です。とくに高層からの眺望は、一般マンションでは得ることができません。また低中層階(5~10階程度)でも、一般マンションより眺望がよいことがあります。

 

タワーマンションの敷地内に、公園や緑地のようなスペースがあることにお気づきの方もいると思います。その部分は、超高層建築物の建設における、容積率(一定の土地面積に対する建物の延べ床面積の割合)の規制をクリアするためのものです。

 

その空間があるために、タワーマンションでは中低層階でも目の前が開けている住戸が多くなり、一般マンションと比べて眺望がよくなるのです。

 

逆に、タワーマンションが密集している東京・中央区の湾岸エリアなどでは「目の前もタワーマンション、隣もタワーマンション」ということがあります。こうなると、たとえ高層階といえども、完全に開けた眺望は得られません。つまり、その分を資産価値からマイナスして考えなければなりません。

 

とくに注意したいのが、新築時は周囲に高層建築物がなく眺望を期待して購入したのに、数年後により高いタワーマンションが近隣に建ってしまうケースです。新築時に想定していなかったものだけに、資産価値的にはかなりマイナスの要素になります。

 

周囲に高層建築物の開発計画があるかどうかは、市役所の都市計画課などに問い合わせると教えてくれます。デベロッパーは積極的に教えてくれるとは限らないので、眺望を重視する場合は、自分で調べてみるとよいでしょう。

 

●立地

 

タワーマンションは、駅などを含めた地域一体で開発されることがよくあります。そのため、駅から極めて近い、あるいは駅の地下道と直結しているといった物件も多いのです。立地は建設後に変化することがありませんから、立地のよさはタワーマンションの資産価値を長期間にわたって担保する要素となります。

 

ただし、隣に同条件の一般マンションがあった場合は、その部分における比較優位性はないということになります。つまり、もしそのタワーマンションと隣の一般マンションに大きな価格差がある場合は、立地以外の部分で優位性があるかどうかを見極めなければならないということです。立地以外の優位性が感じられないのであれば、そのタワーマンションは割高である可能性があります。

 

●共用施設・サービス

 

ゲストルーム、バーラウンジ、ジム、スパ温泉、プール、ライブラリ、高級感のあるロビーやホテルのようなコンシェルジュサービスなど、充実した共用施設・サービスを誇るタワーマンションは少なくありません。このような施設やサービスもタワーマンションを特徴付けるものです。

 

ただし、200戸前後の比較的小規模なマンションの場合、このような共用施設を備えていないものもあります。また、戸数が少ないにもかかわらず、豊富な共用施設・サービスがある場合、管理費は割高になります。なかには、毎月10万円以上の管理費が必要なタワーマンションもあります。そうなると、将来の売却価格や賃貸料にも管理費の高さが影響してくるでしょう。

 

つまり、共用施設・サービスの費用の比重が大きすぎると、資産価値の面で不安が生じるということです。あくまで戸数や管理費とのバランスにおいて、最適な共用施設・サービスが設定されているかどうかがポイントです。

まとめ

タワーマンションは、一般マンションに比べて高額です。その「高い部分(=プレミアム部分)」については、タワーマンションならではの特徴として本当に価値があり、適正なものなのか、しっかり見極めるようにしてください。単なる割高物件を高値掴みしてしまうと、買い手も借り手も見つからないお荷物になるばかりか、今後の資産形成の足かせになってしまいます。

 

 

※本連載は、『ライフプランnavi』の記事を抜粋、一部改変したものです。

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