――「シーフォルム西新宿五丁目」をテーマにさらにマンション建設について深くお伺いしたいです。まずは、部屋のレイアウトや内装などについて、こだわった点など教えていただけないでしょうか?
南雲:「シーフォルム西新宿五丁目」は、シーラが建築を始めた頃に開発した物件です。まだ会社専属のデザイナーもおらず、私ともう一人のスタッフで、どうすれば住みやすい物件ができるかイメージしながらデザインしました。その他様々な業務も並行しており目が回る時期でしたが、工事費やプランニングなどいくつもの制約がある中で、全力を尽くせた思い入れのある物件です。
――制約とは、どういったものだったのでしょうか?
南雲:「シーフォルム西新宿五丁目」のある西新宿は、建築時よりも開発がさらに進み、人口も増加してエリアそのものの価値がぐっと増しました。その影響もあり「シーフォルム西新宿五丁目」の賃料も建てたころより上がりました。
しかし、建築当時はまだ、今後エリアの価値は上がると予想されてはいたものの、確実ではありませんでした。そのため、販売価格は今よりも低く、建築のための予算も潤沢にはなく、決められたコストの中でいかに適正価格で良い物件をお客さまへ提供できるのかが大きな課題となっていました。
――販売価格が高くても売れるなら、その分建築コストに転嫁できますよね。西新宿というエリアを考えると建築コストは高めと思いがちですが、当時の状況から考えるとかけられる建築コストに制約があったということは、言われてみれば納得します。予算内に納めながらも良い物件を作るためにはどのような工夫をされたのでしょう?
南雲:たとえば同じ資材を使うにしても、業者さんによって価格が違います。全く同じものであれば、安いところで仕入れた方が、たとえ数百円の差だったとしてもコストダウンへと繋がります。そういった情報共有をスタッフとはもちろん、現場で作業する人とも迅速に行いました。
――現場と密に連絡を取り合いながら何でも相談し合えるような関係を築くことは、建築業界において一般的なのでしょうか?
南雲:一般的では無いかもしれません。デベロッパーによっては見積もりだけ決めて、あとはゼネコンに全て任せるところもあるでしょう。シーラは5社ほどのゼネコン会社と提携し、長い時間をかけて顔の見える関係を構築してきました。
――社内でも社外でも、確かな信頼関係と協力体制によって、シーラのやりたいことがより実現しやすくなるのですね。先ほどの話を考えると、間取りなど、規格がある程度決まっているファミリーマンションなどと比べると、ワンルームマンションは設計も多様で対応するゼネコンも大変なはず。その中で、シーラの理念を実現するためには外部との協力は必須ということですね。
南雲:そうですね。こちらの要望もより伝わりやすくなりますし、変な勘違いが生まれずにスムーズな意思疎通もできます。
また、もう一つのシーラの良い点は、部門を越えてコミュニケーションがしっかりとれているところです。シーラは、土地の仕入れから開発、建築、管理までトータルで行っています。土地代が高くなると建築費を抑える必要が出ることもあります。その辺りをいかに予算内に収めるかは、部門間の協力体制が整っていなければ難しいのです。
我々は、どうすればクオリティーを下げず、いかに予算内に収めるかを考えながら、土地の仕入れから皆で協力します。これはシーラの成せる「チーム力」だと思いますね。
――仕入れから管理まで一気通貫だからこそ、お客さまにも適正な価格で良いクオリティーの物件を提供できるということですね。仕入れ、建築、販売、管理と、それぞれ別の会社がやっていれば、その分コストも高くなり、他の会社のことを考えたり意見を取り入れることも少ないですよね。
南雲:そうですね。シーラは、物件の販売後、管理も自社で行っているので、建築チームは賃貸管理チームとも密に連絡を取り合います。自分たちが設計した物件について、実際に住んだ後に聞こえてくるクレームや故障などもすぐに報告がありますし、一緒に現場まで見に行くこともあります。
また賃貸管理チームは、入居者のリアルな声を聞く機会が多いので、会社にとってとても貴重な存在です。どのようにすれば住む人の満足度を上げられるのか、入居率をアップさられるかなど、つねにディスカッションして共にプランニングも進めています。
――現場の意見が建物に反映すれば、その物件のオーナー様の利益にも繋がりますね。