新型コロナウイルス感染拡大により歴史的な数の失業者が出ているアメリカ。アメリカ不動産オーナーの多くが心配しているのは、景気悪化による「入居者の家賃滞納」問題です。今回は、現時点での米国内の家賃滞納率や「住宅強制退去」再開のメリット・デメリットについて解説します。

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停止されていた強制退去手続きが再開したアメリカ

テキサス州とジョージア州の裁判所で、6月より順次強制退去の審理が再開されました。

 

アメリカでは新型コロナウイルス感染症対策として、3月頃から日本よりも厳しい外出制限が行われてきました。それによって歴史的な数の失業者が出ていますが、そうなると心配されるのが家賃の滞納です。

 

新型コロナ流行で「家賃滞納者」は増加したのか
新型コロナ流行で「家賃滞納者」は増加したのか

 

感染症が拡大している状況で家を失う家族が増えるのは社会にとっても好ましくないため、トランプ大統領から家賃滞納裁判や強制退去執行手続きの停止が通達が出ていました。

 

しかし、テキサス州では5月に、ジョージア州では6月にその猶予を終了させ、強制退去の審理を再開しました。

 

家賃の滞納があったからといって、家主は即座に賃借人を追い出すことができるわけではありません。普通は、まず期限を決めて立ち退きを要求する旨とその理由を記載した書類を賃借人に出し、その期間内に立ち退けばそれで済みます。それでも期間内に立ち退かなかった場合には、裁判所に強制退去の申し出を行って、審理の末に強制退去が認められるという手順になるでしょう。

 

なお、日本とアメリカを比べると、日本では賃借人の保護が重視されているため、家賃の滞納があってもすぐに強制退去を執行できるわけではないのですが、アメリカでは貸し主と借り主の立場が対等に近く、日本よりはずっと容易に、短い期間で強制退去が執行できます。

「手厚い手当て」の影響で、家賃滞納率は高くない

強制退去の手続きが再開されたことで、実際に立ち退き手続きの通知が出始めているようです。とはいえ、この新型コロナ渦に関しては、アメリカは手厚い失業手当など、様々な手当てを行っていることもあるのか、これまでのところ実際の家賃滞納率はそれほど高くないようです。

 

あくまでもアパートメントに関するデータですが、全米で2020年4月の家賃回収率が94.6%、5月が95.1%でした。2019年は4月が97.7%、5月が96.6%だったので、それと比べると多少悪化はしていますが大きな下落ではありません。

なお、上記はアパートメントのデータで、オープンハウスが主に扱っているのは戸建ての物件のため、数字は多少変わってくるでしょう。どちらかといえば戸建てのほうが収入が安定している賃借人が多いと思われます。実際オープンハウス取り扱い物件の賃料に関しては、4月分、5月分共に順調に回収が進んでいます。

 

なお、アメリカでも、大規模な強制退去が行われる恐れがあるという報道はなされているものの、まだ実際に家を失った方の報道というのはあまり見られないようです。

強制退去の手続き再開によるメリット・デメリットは?

強制退去の手続きが再開されたということには、どういったメリットとデメリットがあるのでしょうか?

 

もちろん、多くの賃借人が家を失ってしまうことは、それぞれの家族にとっても不幸なことですし、社会的にも好ましくありません。不動産市場においても、供給過多の状況になり、相場が下落するなどデメリットも多くなります。

 

かといって家賃を払えない賃借人がいつまでも出て行かないと、今度は貸し主の負担が増大します。貸し主のほうも物件に抵当権を設定し、ローンを組んで物件を購入しているケースが多いため、ローンの支払いができなくなり、担保として設定している不動産を失う恐れが出てくるわけです。

 

そういう意味では、強制退去の手続きが再開されたということは必ずしも悪い話ではありません。実際には支払い能力があるのに「追い出される心配がないのなら、ちょっと滞納してもいいだろう」というわけにはいかなくなるからです。

 

弊社ではこの状況を鑑みて『柔軟に応じる=相談に乗る』ことを基本的な原則としつつ、4〜6月分の賃料をずっと滞納していたり、直近2ヵ月間に返答がないような一部の借り主に対しては、現地の認識とすり合わせをしつつ立ち退き申請も進めていく方針です。

 

このコロナ禍の非常に特殊な状況下で立ち退き要求をすることの是非、それと同時にオーナーの方々の利益や意向、借り主の支払い能力等を確認しながら、バランスのとれた取り扱いを目指してまいります。

 

 

株式会社オープンハウス

ウェルス・マネジメント事業部

※本記事は、オープンハウスのアメリカ不動産投資 海外不動産コラムで2020年6月23日に公開されたものです。