不動産オーナーなら、近年の「サブリース契約」にまつわるトラブルをご存じでしょう。サブリース会社からの一方的な家賃減額や契約解除が警戒される一方、大家の負担が軽減される点を評価する声もあります。ここでは、サブリースのしくみについて、メリット・デメリットとともに解説します。※本連載は、将来お金に困ることがないように、若いうちからできるライフプランニングに役立つ情報を紹介する「ライフプランnavi」の記事を抜粋、一部改変したものです。

大家とサブリース会社が「一括借上げ契約」を締結

サブリースとは、簡単にいえば「又貸し」のことです。

 

まず、大家さんとサブリース会社(不動産会社等)との間に「一括借上げ契約」が締結されます。たとえば、10戸の住戸があるアパートなら、その10戸をサブリース会社がまとめて借り上げます。この一括借上げ契約のことを「マスターリース契約」と呼ぶこともあります。そこから、サブリース会社は各住戸の入居者を募集して賃貸借契約を締結し、「又貸し」するのです。

 

通常、サブリース会社は設定賃料の80~90%を一括で大家さんに支払います。たとえば、1戸6万円の家賃で10戸のアパートなら、満室で60万円の家賃になります。その80%だとすると、48万円が大家さんに支払われるのです。

 

ここでのポイントは、一括借上げ契約であるため、入居者が入らずに空室が出ても、サブリース会社から大家さんに支払われる金額は変わらないという点です。これを「家賃保証・空室保証」などと呼ばれます。

 

上記の例の場合、仮に6戸しか入居がなければ、家賃は36万円しか入りません。しかし、サブリース会社は大家さんに48万円支払います。大家さんからみると、満室でも空室がたくさん出ても一定の収入が得られるということで、大家業の最大のリスクである「空室リスク」を減らすことができるというわけです。

国土交通省が「重要事項の説明を受けるよう」注意喚起

一方で、注意点もあります。

 

平成30年3月27日、国土交通省は「アパート等のサブリース契約を検討されている方は契約後のトラブルにご注意ください!」という文書を公表しました。この文書にはサブリース契約に関して大家さんが知っておくべきポイントとして、

 

★賃料は変更になる場合があること

★契約期間中でも解約されることがあること

★契約後の出費もあること

 

などを挙げ、「サブリース住宅原賃貸借標準契約書を活用し、重要事項の説明を受けましょう」と注意喚起しています。

 

このような文書が公表されるのは、サブリースにトラブルが多いことの証左であり、同時にまた、国土交通省・消費者庁・金融庁が、サブリースの健全化に力を入れようとしていることの表れでもあります。

メリットは「家賃保証制度」「煩雑な大家業の代行」

空室でも家賃が保証されること、本来なら大家さんがやるべきことのほとんどをサブリース会社が代行してくれて手間がかからないことがあげられます。

 

大家さんにとっての大きな悩みは次のふたつです。

 

1.空室だと家賃がまったく入らない(空室リスク)

2.入居中でも滞納があると収入が減る(入居者トラブルリスク)

 

この最大の悩みを解決してくれるのがサブリースの大きな魅力でしょう。

 

1の空室リスクについては、上の項目で述べた通りです。また、2については、家賃の管理や計算書類の作成、建物の管理や入居者からのクレーム対応といった煩わしい管理業務の代行も、サブリース契約に含まれます。そのため、管理委託費は不要になります。

デメリットは「家賃減額」「契約解除」のリスク

一方、サブリースのデメリットとして最大のものが、契約期間中の家賃減額や、減額に応じない場合に要求される「契約解除」です。

 

サブリースは長期契約を締結することが多いのですが、一般的には5年から10年、長いものだと30年契約もあります。

 

大家さんにとって「家賃30年保証」という契約は非常に魅力的に感じられるでしょうか、実際にはこの約束が反故にされることも多々あります。また、家賃の減額も同様です。10年間は値下げしないといった契約をしていても、入居状況の変動などにより見直されることは珍しくありません。

 

なぜそんなことが起こるのかというと、サブリース会社との契約は、基本的に「借地借家法」にもとづく契約だからです。借地借家法では、借主の権利のほう手厚く保護されています。サブリース会社は借家人になるため、契約変更などにおいて、サブリース会社の意図が反映されることになるのです。この点は、サブリースのもっとも大きなデメリットといえるでしょう。

 

また、ほかにも「更新料や礼金がサブリース会社の収入になり、大家の収益にならない」「入居促進のためのリフォーム工事費用は大家負担だが、工事内容に口はだせない」といったデメリットもあります。

サブリース業者の選び方「5つのポイント」

(1)将来の賃料変更内容や契約解除の条件などについて説明がきちんとされるか

 

サブリースの最大のデメリットである家賃の減額や契約解除について、契約前にきちんと説明してくれる業者であることが最も重要です。この点を隠したまま「30年間は保証します」など、耳当たりのいいことしかいわない業者は信用できないと思ったほうがいいでしょう。

 

インターネットで調べるだけでも業者の評判はかなりわかります。家賃や契約に関して多くのトラブルが報告されているような業者は、まず避けたほうが安全です。

 

(2)国土交通省に登録している賃貸住宅管理業者か

 

サブリース会社は管理業務も行うため「賃貸住宅管理業者」に該当します。国土交通省は「賃貸住宅管理業者登録制度」を創設し、消費者が管理業者や物件選択の判断材料として活用できる情報を提供しています。登録されているから絶対安心とまではいい切れませんが、一定の目安にはなります。

 

(3)契約書が「サブリース住宅原賃貸借標準契約書」に準拠しているか

 

国土交通省は「サブリース住宅原賃貸借標準契約書」を作成し、上記の登録業者以外のサブリース業者にも「標準契約書」の利用を求めています。契約書の内容が「標準契約書」に準拠したものか確認しましょう。

 

(4)契約解除に関する契約条項の記載があるか

 

上記の「サブリース住宅原賃貸借標準契約書」には、契約解除に関する条項を定めています。サブリース業者から事前に契約書の内容を確認させてもらい、契約解除条項がしっかり記載されているかを確認します。

 

(5)家賃設定変更に関する契約条項の記載があるか

 

上記と同様に「サブリース住宅原賃貸借標準契約書」には賃料改訂に関することの条項があります。その内容も必ず確認し、納得のいくものかどうかしっかりと判断してください。

ワンルームマンション投資でサブリースを使うメリット

サブリースのメリットとデメリットを説明してきましたが、メリットをより活用しやすいジャンルがあります。それは「ワンルームマンション」です。

 

アパートの場合、全室一斉に退去することはまずありませんから「収入がゼロ」になる可能性は低いのですが、ワンルームマンションは「空室=収入ゼロ」です。

 

そのため、メリットとデメリットを比較した場合、サブリースを選択するほうが経営的に安定するという考え方ができます。

 

また、本業が忙しい副業大家の場合、管理を自力で行うことはむずかしく、管理会社に委託するのが普通です。どうせ管理を管理会社に任せるなら、家賃保証のついたサブリースのほうが、メリットが多いとも考えられます。

まとめ

サブリースについて、トラブルが多く報告されていることは事実です。しかし、よく仕組みを理解していないこともトラブルの原因のひとつとなっている可能性もあります。

 

自身の投資スタイルをよく吟味し、サブリースメリットとデメリットを十分に理解したうえで、サブリースの活用を検討してみてください。

 

 

 

※本連載は、『ライフプランnavi』の記事を抜粋、一部改変したものです。

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