マンション投資にはいくつかの種類がありますが、それぞれにメリットやデメリットがあることはご存知でしょうか。本記事では、資金面やリスク分散など、いくつかのポイントごとに、1棟マンション投資と1Rマンション投資を比較して考察していきます。※本連載は、将来お金に困ることがないように、若いうちからできるライフプランニングに役立つ情報を紹介する「ライフプランnavi」の記事を抜粋、一部改変したものです。

 

マンション投資にはいくつかの種類があります。大きく分類すると、建物を丸ごと購入する「1棟投資」と、1部屋ずつ購入する「区分投資」、さらに区分投資は「ファミリータイプマンション投資」「1R(ワンルーム)マンション投資」等に分けることができます。では、会社員の副業の場合は「1棟マンション投資」と「1Rマンション投資」のどちらが適しているのでしょうか?

必要な資金額で比較すると?

1棟マンション投資と1Rマンション投資の大きな違いは、必要となる投資資金額です。

 

そもそも、1棟マンション投資はその名の通りマンション1棟まるまる購入するもので、通常1億~数億円の費用が必要となります。一方、1Rマンションは1000万円以下で購入できる場合もあり、ずっと手軽です。

 

ひとくちに会社員といっても、年収にも、投資に充てられる自己資金にも大きな差があるため一概にはいえませんが、たとえば年収400万円~800万円程度で、預金額が1000万円に満たないような一般的な会社員の方の場合、1棟マンション投資をしようと思っても、融資を受けられないなどの制約が生じる可能性が高いといえます。融資の受けやすさ(審査の通りやすさ)という点では、1Rマンション投資の方が有利でしょう。

 

また、1Rマンションの場合、1棟マンションと比べればずっと低価格であるため、1部屋目を買うときに、自己資金を多く、融資を少なめにしておけば、すぐに残債が減るため、最初に購入した部屋を担保にすることで、2部屋目の購入資金も借りやすくなります。このようにレバレッジを効かせながら、自分の資産状況や収入の増加にあわせ、徐々に所有部屋数を増やしていくこともできます。

資産価値で比較すると?

1棟マンション投資の場合は、その土地の権利もすべて所有することになります。一般的に、建物は年数が経過するにつれて価値が下落していきますが、土地は建物ほど価格が落ちません。東京の都心部など立地によっては、また、時期によっては価格が上昇することもあります。そのため、長期的な資産価値の保全という点では、投資に占める土地の割合が多い1棟マンション投資の方が有利だといえます。

 

ただし、1Rマンション投資でも、その区分割合に応じて土地の所有にかんする権利(敷地権)を持ちますので、土地の価値上昇の恩恵を受けることはできます。その割合が1棟全体の場合よりは少ないということです。

空室リスクで比較すると?

所有する不動産が空室になれば、当然ですが、賃料を得ることができません。そのため、不動産投資では空室リスクが恐れられています。

 

1棟マンション投資の場合、仮に10部屋あるとすると、そのうちの1部屋が空室になっても(賃料がすべて同じだとすれば)10%の収入減です。空室の数に応じて100%から0%まで段階的に家賃収入が推移するわけですが、全戸がいきなり空室になることは考えにくいので、家賃収入がゼロになる心配は少ないでしょう。

 

一方、1Rマンション投資で1部屋しか所有していないとすれば、入居者がいれば収入100%、空室になればいきなり0%です。つまり、1Rマンションは空室が発生した場合の影響がとても大きいのです。

 

このように説明すると、1Rマンションのほうがハイリスクに感じられるかもしれませんが、実際は違います。空室リスクに影響するのは、物件そのものの魅力(立地環境や建物など)だからです。

 

人気のある立地の1Rマンションであれば、ほぼ入居者が住み続ける(100%稼働が続く)でしょう。人気のないエリアの1棟マンションであれば、ずっと50%以下の稼働率となることも考えられます。つまり、空室リスクについては1棟か1Rという比較より、エリアや建物自体の魅力のほうがずっと重要なのです。

リスク分散で比較すると?

上記の点とも関連しますが、10部屋を持つ1棟マンションが不人気な物件であれば、稼働率はずっと低いままです。たまにあるのが、大学等のそばで学生の需要も稼働率も高かったのが、大学の移転によって学生がいなくなり、低稼働率の物件になってしまうケースです。こうなると、投資金額が大きいだけに、キャッシュフロー(必要経費や融資返済を差し引いた手残りの現金)のマイナス額も大きくなり、非常に危険です。

 

もちろん、こういうリスクは1Rマンション投資でもあり得ます。しかし1Rマンション投資の場合、先に書いたように、保有物件を担保にしてレバレッジを効かせながら複数の物件を保有していくことも可能です。その際に、リスク分散として異なるエリアの物件を購入していけば、上記の被害を最小限に食い止めることができます。

 

たとえば、異なるエリアに3戸の1Rマンションを保有していた場合、そのうちの1戸で上記のような環境変化が起きたとしても、該当の物件を処分して、別のエリアに新たに購入しなおすといった対応が可能でしょう。

 

この「エリア分散」という考え方は、不動産投資に大きな影響を与える自然災害に対する備えとしても有効です。

売りやすさ・わけやすさで比較すると?

なんらかの理由でまとまった現金が必要になり、保有不動産を売却する必要ができたとき、売りやすいのは、数億円の高額になる1棟マンションより、単価が低い1Rマンションです。換金しやすさという点では1Rマンションに軍配が上がるでしょう。

 

また、1Rマンションを複数保有しておくことは、将来の相続などの場合に財産を分割しやすいというメリットもあります。1棟マンションを保有していて、相続人が複数いる場合には、共有名義などにしなければなりませんが、これが先々のトラブルのタネになることはよく知られています。1Rマンションを複数保有し、1部屋ずつ遺産分割できれば、”争続”の心配も減らせます。

維持管理の手間・費用で比較すると?

マンション投資は実物のある投資であり、購入後は管理・運用していく必要があります。

 

2013年の価値総合研究所(日本政策投資銀行グループ)のデータによると、賃貸住宅のうち、65.2%の人が契約も管理もすべて管理会社に委託しており、一部を委託している14.3%の人とあわせると、全体の8割が管理を委託しています(2013年株式会社価値総合研究所「賃貸住宅の管理の現状について」)。

 

1Rマンション投資の場合、共用部分の日常管理などはマンションの管理組合などが委託している業者がやってくれます。必要なのは、家賃の管理とたまのトラブル対応だけなので、会社勤めをしているオーナーでも自主管理(オーナー自身による管理)対応が可能でしょう。それなら、管理会社に委託するより管理コストは安上がりです。

 

一方、1棟マンションの場合、共用部を含めた日常清掃や点検などは必須で、さらに多くの入居者からのトラブル対応も必要です。その場合、会社員が自分だけで行うことは現実的ではなく、管理会社への依頼はほぼ必須です。玄関、廊下などの清掃など、共用部分を含めた管理が必要となる1棟マンションのほうが、収益に対する管理コストの割合が高くなります。

 

また、1棟マンションの場合、共用部を含めた日常の修繕のほか、大規模修繕に備えた費用を積み立て、用意なければなりません。修繕費用自体も1棟マンションのほうがずっと高額になり、資金管理、準備の手間も必要です。

まとめ

1棟マンション投資と1Rマンション投資には、それぞれメリット・デメリットがあります。しかし、会社員が副業として始める場合には、資金面、管理・運用面などの面から、まずは1Rマンション投資から始めることをお勧めします。1Rマンションの場合は、異なるエリアに複数持つことによるリスク分散効果があることも忘れてはなりません。1棟マンション投資か1Rマンション投資かで悩んでいる方は、その点も参考にしてください。

 

 

 

※本連載は、『ライフプランnavi』の記事を抜粋、一部改変したものです。