造幣局・鑑定会社・オークション会社が価格維持に貢献
現在、世界中で人気なコインと言えば、1800年代のもので、200年程度前に発行されたものです。1600年代から、1900年代のコインは人気があります。では、どんな人がコイン投資を行っているのでしょうか。
目的は圧倒的に資産保全が多いですが、これまで資産を金の地金や金貨に換えていた人が、徐々にコイン投資にシフトしているという傾向があります。
その理由は、金の地金で資産保全はできますが、大きな値上がりは期待できないからです。実際に過去の値動きを見ると、1980年には約600ドル(1トロイオンス当たり)でしたが、2015年8月時点では約1200ドルです。35年間で2倍程度の上昇しかしていません。コイン投資で同じ投資期間を考えると、10倍、20倍に値上がりしているものも珍しくありません。
実際に投資家と話をしてみると、資産保全をしながら、値上がり益を狙っている人が大半です。
コインの選び方によって値上がりの仕方は異なるので、自分で選定しなければなりませんが、一定のルールはあります。それをマスターしてしまえば、高確率で値上がり益を享受することができます。
たとえば、日本で不動産投資をする場合でも、青山や赤坂など、誰が見ても立地のよい場所であれば、値上がりは確実です。たとえ建物が古くても、空室が出ることはほぼないでしょう。これと同じようにコインにも、買えばほぼ勝てるというルールが存在するのです。
ただし、コイン投資の場合には、ある程度の長期投資が前提になります。最短でも5年程度は保有する必要がありますし、長年持ち続けていれば、さらに価値は上がります。
たとえば、親から子へ受け継いで次世代まで保有していれば、50倍程度になるものも少なくないでしょう。
それは、実際のオークションのデータで確認することができます。オークションにコインが出品されるときは、コレクターが亡くなったときなどが多いのですが、現在、70歳くらいの人が亡くなると、1960年代に購入したコインなどが出品されることがあります。
当時30ドルで購入したものが3000ドル程度で取引されていたりしますから、50年程度で約100倍になったことになります。コイン投資ではごく普通のことです。
オークション会社は、オークションに出品してくれる人がいて、落札する人がいてこそ手数料を稼ぐことができます。価格が上昇しているほうが出品者も出品意欲が増します。鑑定会社は、コインの所有者から依頼を受けて鑑定を行い、鑑定料を受け取ります。コインの価値が下がってしまえば、鑑定を依頼する人は少なくなってしまいます。
欧米のコイン投資は、日本でいうところの造幣局も下支えしています。たとえば、アメリカの造幣局にあたるのはUS Mint(The United States Mint)です。US Mintは記念金貨の発行元ですから、価格が下落することは好ましくありません。
この三者の利害は一致しています。コインの価格は下がらないほうがよいのです。ですから、コインの価格を維持する、あるいは上昇させるために、三者三様の取り組みを行っています。
オークション会社は、コインの所有者に働きかけてオークションへの出品を促します。出品がないと取引が行われないので、価格は以前のままです。価格の上昇が期待できるコインを出品してもらうことで、価格を更新することができるのです。
鑑定会社は、より正確に鑑定を行うことでオークション参加者がより安心して購入できるようにします。また、鑑定結果のグレードをより細分化して、価値のあるものには高いグレードを付与。より高い価格がつくようにします。
鑑定結果というのは、価格に大きな影響を与えます。人気のコインにアメリカの大統領夫人シリーズがあります。金貨の表面にファーストレディの肖像がデザインされています。このコインの場合、鑑定ケースに入っているものといないものでは、価格に3倍から5倍の差が生じています。
US Mintは発行枚数を調整することによって、価格を維持します。発行枚数が多すぎれば価格が下がってしまいますから、価格が下がらない程度に発行枚数を調整します。
コイン投資は価格の履歴が確認でき、実は透明性が高い
また、投資につきものなのが、販売会社に支払う手数料です。コインを購入する方法には主に、ディーラーから購入する方法とオークションで購入する方法がありますが、ディーラーの場合には一般的に2割か3割程度の手数料を徴収します。オークション会社の場合は、落札価格の17~18%が手数料になります。実際に払う金額は落札価格よりも高くなるのです。
手数料が高いと感じるかもしれませんが、現物資産の中ではむしろ安いといえます。クラシックカーなら3割から4割は手数料が上乗せされるのが普通ですし、さらに美術品となれば、最低でも5割近くが乗せられていると考えたほうがいいでしょう。美術品は安く仕入れたものを5倍、10倍で売却しているという印象です。
一方で不動産の場合には、売りに出ているその不動産を業者がいくらで仕入れたのか、原価は公表されていません。
市場の原理が働くので、仕入れ値の2倍、3倍で売却することは難しいでしょうが、バブルの時期の土地転がしではそれに近いことが行われていたのも事実です。コインの場合には、価格の履歴が確認できるので安心です。そういう意味では価格が明瞭だということがいえます。