不動産投資に興味があっても資金面が心配な人は多いでしょう。自己資金ゼロでフルローンとする方法もありますが、その実態はどのようなものでしょうか。今回は、フルローンによる不動産投資のリスク等を解説します。※本連載は、将来お金に困ることがないように、若いうちからできるライフプランニングに役立つ情報を紹介する「ライフプランnavi」の記事を抜粋、一部改変したものです。

フルローンなら高額物件の購入も可能だが…

フルローンで不動産投資を行う実態は、どのようなものなのでしょうか。

 

●投資の選択肢が広がる

 

フルローンを利用すると、資金力が厳しい不動産投資家でも物件購入が可能。そのため、自己資金のみで投資する場合と比較し、早いスピードで資産形成ができるのです。また、調達した資金で、自己資金では手の届かない高額物件も購入できます。

 

このように、時期・対象に関して不動産投資の選択肢が広がるのが、不動産投資をフルローンで行う最大のメリットです。

 

●フルローンでの収支サイクル


フルローンの場合、収益性の高い物件を購入し、ローン返済と必要経費を引いても手元に利益が残るよう運営し、収入を確保するサイクルを作り出すことが基本。ローンで入手した高収益物件で、高いリターンを取りに行く投資スタイルです。

 

●フルローンを扱う金融機関

 

一時期まで、スルガ銀行・オリックス銀行・千葉銀行などの金融機関がフルローンに対して積極的な姿勢を見せていました。最近はフルローンが利用できるような不動産物件は減り、フルローンの融資に熱心な金融機関も少なくなっています。

金利上昇時には大ダメージ?

ハイリターンを確保することが必須のフルローンによる不動産投資。そのリスクとして、どんなことが考えられるでしょうか。

 

●返済の負担が大きく空室リスクに弱い

 

高額のローンを組めば、それに伴ってたくさんの利息の支払いが生じます。予想以上に空室が発生した場合、一気に返済が厳しくなるのは明白です。

 

●支出増加に弱い

 

不動産である以上、空室リスクに加え、経年劣化による家賃値下げ・修繕の必要性など、収益を圧迫する事態とは隣り合わせ。フルローンは返済の負担が大きいため、支出増加で毎月のキャッシュフローがマイナスになりやすいのです。フルローンの場合、当然ですがローン借り換え・追加融資は受けにくい現実も忘れてはいけません。

 

●金利上昇時のダメージが大きい

 

フルローンは借入金が大きいため、金利上昇の影響も大きくなります。金利が上がって返済額が増えた場合も、キャッシュフローがマイナスになるリスクをかかえています。

 

●価格と抵当権が売却ネックに

 

返済等の問題で、物件を売却することになった場合を考えてみましょう。フルローンだからこそ高額物件が購入可能ですが、高額だと買い手が見つかりにくく、売却もそう簡単ではありません。

 

資金調達のために売却を焦り、値下げして大きな損失を被ることもあるでしょう。ローン残額の減り方が厳しいと、金融機関が融資の際に設定した抵当権を外さない事態もありえます。抵当権が理由で、売却もできない状況になってしまうことも考えられるでしょう。

 

●自己資金はある程度必要な理由

 

不動産物件を購入する際は、売買契約が成立した時点で買主が購入代金の一部を前払いする手付金、不動産会社に対する仲介手数料が発生します。それ以外にも、司法書士への報酬・銀行手数料・登記費用・火災保険料・不動産取得税・固定資産税・清算金など、物件費用以外にさまざまな費用が発生。その費用は、物件価格の8〜10%程度と言われています。

 

フルローンを利用する場合、これら諸費用を支払ってもある程度余裕のある自己資金を用意しておけないと、リスクが大きすぎるでしょう。

不動産投資の初心者が、安易に手を出すのは危険

不動産の取得には、物件費用以外にも相当額の諸費用が発生します。フルローンは、ある程度自己資金を持ち、不動産投資の経験がある人がハイリターンを狙って活用する場合、おおいにメリットが発生するローンです。

 

不動産投資初心者の方が、「自己資金ゼロでも投資が始められる」と安易に考えるのは危険です。空室発生・金利上昇時などのリスクに関して、十分理解した上で利用を検討するべきでしょう。

 

 

※本連載は、『ライフプランnavi』の記事を抜粋、一部改変したものです。

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