会社員であれば、勤務先で年末調整をするのでわざわざ自分で確定申告をしたことがないという人も多いのではないでしょうか。しかし、会社員でも確定申告の義務があるケースや、確定申告すれば税金が戻ってくるケースがあります。今回は、どのような場合に会社員は確定申告する必要があるのか見ていきます。※本連載は、将来お金に困ることがないように、若いうちからできるライフプランニングに役立つ情報を紹介する「ライフプランnavi」の記事を抜粋、一部改変したものです。

会社員も「確定申告」とは無縁ではない

個人や自営業者等に限らず、会社員でも確定申告の義務があるケースや、確定申告すれば税金が戻ってくるケースがあります。それを知らずに申告漏れをしていてペナルティが発生してしまった、還付される税金があったはずなのに確定申告をせずに損をしてしまったなどケースが発生する場合があります。では、どのような場合に会社員は確定申告する必要があるのでしょうか。

 

通常なら勤務先で年末調整をしてもらえるはずの会社員でも、確定申告が必要なケースがあります。国税庁によると、給与所得者で確定申告が必要な人を以下の7つに定めています。

 

① 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人

 

② 1カ所から給与の支払を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人

 

③ 2カ所以上から給与の支払を受けている人で、主たる給与以外の給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人(※給与所得の収入金額から、雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円以下の人は、申告の必要はありません)

 

④ 同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人

 

⑤ 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている人

 

⑥ 源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人

 

⑦ 退職所得について正規の方法で税額を計算した場合に、その税額が源泉徴収された金額よりも多くなる人

 

いずれかに該当する人は自分で確定申告する必要があります。特に、働き方が多様化する近年は、副業や兼業により②や③に該当する人が多くなると予想できます。所得の種類は働き方によって変わり、副業でも会社に雇われて働くのであれば「給与所得」、フリーランスとして働くのであれば「雑所得」か「事業所得」になります。

 

いずれにせよ、副業で20万円を超える給与収入、あるいは所得(収入から経費を引いたもの)があるかどうかがボーダーラインとなります。

 

では、勤務先で年末調整はしたけれど、申告するのを忘れてしまった、あるいは年末調整に間に合わなかった控除がある場合はどうすればいいのでしょうか。

 

その時は、自分で確定申告することで各種控除を受けることができます。

 

例えば、生命保険やiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入している、学生時代に納付猶予を受けていた年金の追納をしたなどの場合、本来であれば年末調整の時に支払いの証明書を添付すれば手続きできますが、届け出るのを忘れてしまった場合には自分で確定申告をすることになります。

 

また、年末調整した後に結婚し、配偶者が扶養に入るような場合も、確定申告することで配偶者控除や扶養控除を受けることができます。

「ふるさと納税」も寄附金控除が適用される

すでに年末調整をしていて、確定申告する義務はないけれど、申告することで税金の還付が受けられるというケースもあります。

 

これは、年末調整では扶養控除や社会保険料控除といった多くの従業員が該当するような控除しか手続きをしないため、そのほかの個別の事情によるものは自分で確定申告する必要があるためです。どのようなものがあるのか見ていきましょう。

 

・医療費控除

1年間に支払った医療費が10万円(年間の総所得金額等が200万円未満の場合には総所得金額等の5%)を超える場合に、その超えた金額分が控除されます(ただし保険金などで補てんされる金額は除く)。医療費には、通院のための公共交通機関の交通費も含まれます。同一生計の家族の分も合算できるので、全員分の領収書を取っておき、1年間の医療費の総額が要件を満たすかどうか計算してみるといいでしょう。控除できる金額の上限は200万円です。

 

・住宅ローン控除

ローンを組み、一定の条件を満たす住宅の購入・増改築をした場合に住宅ローン控除を受けることができますが、初年度のみ確定申告が必要です。2年目以降は年末調整で手続きができるようになります。

 

・上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除

上場株式等の売買で損失が出た場合、確定申告により、配当所得の金額(申告分離課税を選択したものに限る)などと損益通算ができます。損益通算してもなお控除しきれない損失の金額は、翌年以後3年間にわたり、確定申告により繰越控除することができます。

(出所:国税庁No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除)

 

・寄附金控除

国または地方公共団体、公益法人などに寄付をした場合、寄付金額もしくは総所得金額の40%のいずれか低い金額から2,000円を引いた金額が控除されます。返礼品がもらえると話題の「ふるさと納税」もこの寄附金控除が適用されますが、納税先が5ヵ所以内であれば「ワンストップ特例」により確定申告なしで控除を受けることができます。ただし、他の控除を受けるため確定申告をするような場合には、ふるさと納税についても一緒に申告する必要があります。

 

ここで紹介した会社員でも確定申告が必要なケースは、ほんの一例にすぎません。また、個々のケースで確定申告の要・不要は変わってくる場合があります。自分では判断が難しいようなら、国税庁ホームページの「タックスアンサー」で検索したり、税務署や税理士に相談したりして、必ず確認するようにしてください。

 

 

※本連載は、『ライフプランnavi』の記事を抜粋、一部改変したものです。