少子高齢化が深刻化している現在では、退職金と年金だけでは老後の生活を豊かなものにできなくなりつつあります。40代、50代になってから老後への備えを始めたのでは準備期間も短くなってしまうため、十分な資金をためるには30代の早い段階から計画的に人生設計をする必要があります。そこで今回は、老後の生活を豊かにするための30代から始める人生設計について解説します。※ 本連載は、「ライフプランnavi」の記事を抜粋、一部改変したものです。

平均寿命は男女ともに80歳を超えている

今からほんの20~30年ほど前までは、60歳で定年退職を迎えると同時に、退職金と年金、貯蓄だけでゆっくり老後を過ごすことができていました。しかし、平均寿命が延び、少子高齢化が進んだ現在では、状況が一変しています。

 

厚生労働省が発表した平成29年の簡易生命表によると、日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.26歳と男女ともに80歳を上回っています。仮に、現在の年金支給開始年齢である65歳まで働いたとしても、20年前後は年金収入と貯蓄だけで暮らしていかなくてはいけません。

 

また、総務省が発表した平成29年の家計調査によると、65歳以上の高齢夫婦無職世帯の1カ月あたりの収入と支出は、約20万円の年金収入に対して、支出が約25万円と1カ月あたり約5万円の赤字になっています。さらに、どちらか一方に介護が必要になった場合は、1人あたり約8万円の支出が上乗せされることを考えると、とても年金だけでは賄いきれないということが分かるでしょう。

 

65歳を過ぎてからも働き続けるという選択肢もありますが、満足できる再就職先が見つかるとは限りませんし、予期せぬ病気やケガによって働けなくなってしまうことも考えられます。

生活費の余剰分だけでは「老後への貯蓄」は難しい

老後を迎えるにあたり、ある程度の貯蓄を残しておくことができれば、安心して暮らしていくことができますが、実際はどうなのでしょうか。総務省が発表した平成29年の家計調査によると、税金などを差し引いた各家庭の平均月収が約53万円なのに対し、支出が約41万円と約12万円の黒字になっています。

 

この約12万円の黒字をすべて貯蓄できれば、老後の資金もある程度は確保できそうですが、そう簡単にはいきません。例えば、子供の教育費は幼稚園から高校まで全て公立だった場合は約540万円、全て私立だった場合は約1770万円かかります。この他にも住宅の購入や親の介護、病気やケガによる入院など、月々の決まった支出以外の出費は驚くほど多いものです。

 

こうした出費に備えて、生活費の余剰分は、貯蓄と別にして確保しておく必要があるでしょう。子供の教育費や住宅の購入、親の介護など、様々な出費に備えながら、将来への貯蓄を行うのは簡単なことではありません。

 

そこで、注目したいのが資産運用によって老後の資金を貯めるという方法です。

 

資産運用には、キャピタルゲインを狙うものとインカムゲインを狙うものの大きく2つに分けられます。キャピタルゲインとは、資産を売買することによって利益を得ることで、株式や不動産の売却などが挙げられます。もう一方のインカムゲインは、資産を保有することによって利益を得るもので、株式の配当金、投資信託の分配金、不動産投資の家賃収入などがこれにあたります。

 

キャピタルゲインは、大きな利益が期待できる反面リスクも大きく、最悪の場合、資産を減らしたり失ったりすることも少なくありません。それに対してインカムゲインは、短期間で見た場合の利益は少ないものの、安定した利益を長期間に渡って得ることができるため、老後の資金作りには最適と言えます。

 

インカムゲインを狙う資産運用は、月々に得られる利益が大きくないため、長い時間をかけて運用する必要があります。特に不動産投資の場合は、ローンを払い終わってしまえば必要経費を除いた金額がすべて収入となります。つまり、30代の早いうちに物件を購入して、年金をもらい始めるころにローンが完済できていれば、年金の他に安定した収入を得ることが可能になるのです。

 

このように、インカムゲインの資産運用はできるだけ早いタイミングで始め、目先の利益にとらわれるのではなく、長い目で見てじっくり取り組むことが肝要であると言えるでしょう。