高額所得者の税対策としても有効な不動産投資。だが、「しっかり収益を上げられるか?」という視点が欠けているケースも散見され、「税金は減るけど、利益が出ないので資産が増えない」「次から次へと物件を買うので、借金がどんどん膨らんでしまう」といった悩みを抱えるオーナーも少なくない。本連載では、所得税や固定資産税などを差し引いた“手残りキャッシュフロー(税引き後キャッシュフロー)”を増やすために有効な「郊外の中古一棟不動産投資」のノウハウについて、コスモバンク株式会社の穴澤勇人代表取締役に解説していただく。第3回目のテーマは、中古一棟不動産投資で期待できる「税金面のメリット」についてである。

建物比率を高めれば「節税効果はアップ」する

中古一棟不動産の魅力は、安定的かつ十分なキャッシュフローが得られると同時に、多額の税メリットが期待できることです

 

税メリットをもたらすのは、建物の減価償却費用です。減価償却とは、購入した建物の費用を年間の経費として一度に計上するのではなく、耐用年数によって配分することです。

 

日本の税法では、事業用住宅の法定耐用年数は木造で22年、軽量鉄骨造は骨格材の肉厚に応じて19~34年、鉄骨造および鉄筋コンクリート造(RC造)は47年となっています。仮に新築の木造アパートを3,000万円で取得した場合、1年当たりの減価償却費用は取得費用を22年で割った136万円となってしまうのです。

 

しかし、築22年を超えた木造の物件であれば減価償却期間は4年となります。リフォーム費用などを含めた建物の取得金額が3,000万円だったとすると、4年間にわたって750万円ずつ費用計上することができるわけです。

 

このように、減価償却期間の短縮によって1年当たりの費用計上を大きくできるのが、税金面における中古不動産投資のメリットです。

 

例えば年収2,000万円の場合、750万円の減価償却費用を計上すると、所得は少なくとも1,250万円まで減り、所得税率は40%から33%に下がります。これによって数百万円単位の税メリットが見込めるわけです。

 

ただし、ここで問題となるのは物件価格に占める建物比率です。

 

減価償却が適用されるのは建物部分のみなので、取得価格に占める土地の割合が高く、建物の割合が低いと、計上できる減価償却費用も少なくなってしまいます。土地の値段が高い都心では物件価格に占める建物割合も低くなり、法定耐用年数の長い新築や築浅の物件であれば、なおさら税効果は薄れてしまいます。

 

その点、当社が扱っているような郊外の物件なら、地価が安い分、建物比率が高く、償却期間も短いので、より多くの費用を計上できるわけです。

 

仲介を間に入れないため「7~8割の建物比率」が実現

とはいえ、現実には郊外でも、それほど高い建物比率で中古物件が販売されることはありません。法定耐用年数を過ぎた建物は「タダ同然」とみなされ、いわゆる“土地値”で取引されることがほとんどだからです。物件価格のほとんどは土地の値段で、建物の値段は1割にも満たないケースが多いようです。

 

建物に値段が付かないのには、不動産仲介業者の事情もあります。

 

不動産取引では、土地の販売には消費税がかかりませんが、建物には消費税がかかります。建物比率が高くなると、その分、仲介業者が納める消費税額が増えてしまうので、なるべく比率を抑えようとする傾向があるのです。また、あまり建物比率を高め過ぎると、「売主の同意が得られなくなるのではないか?」という遠慮も働くようです。

 

その点、当社が扱う中古一棟不動産は、建物比率をなるべく高くして、お客さまがより多くの減価償却費用を計上できるようにしています。ケースにもよりますが、建物比率が物件価格の7~8割になることも珍しくありません。これが実現できるのは、仲介を通すことなく、当社が保有する物件を直接お客さまに販売するからです。

 

前回も述べたように、当社は物件を自社で取得してリフォームを施し、一定期間運用したうえでお客さまに直接販売しています。直接販売の仕組みを採用しているのには、物件の価値を高めて提供するという目的もありますが、仲介を立てないことによって、お客さまの希望に沿った建物比率を実現するという狙いもあるのです。

 

仮に物件価格が5,000万円でも、建物比率が1割なら減価償却できるのは500万円。4年に分けると、1年当たりたったの125万円です。しかし、建物比率を7割にできれば、減価償却できる金額は3,500万円。1年当たり875万円になります。どちらのほうがより大きな税効果が期待できるのかは、言うまでもありません。

 

もちろん、仲介を間に立てないので仲介手数料も発生しません。その分、割安に物件を取得できるというメリットもあります。

「海外不動産投資」よりも国内中古一棟が安心な理由

このように、築古の中古物件には所得税を大きく圧縮できるメリットがあります。

 

この方法は近年、高額所得の方々に広く知れ渡るようになり、メリットを最大限享受するために、米国など海外の不動産取得を勧める業者も増えてきました。

 

コスモバンク株式会社 代表取締役・穴澤勇人氏
コスモバンク株式会社
代表取締役・穴澤勇人氏

たとえば、日本よりも地価が安い米国では、建物比率が7~8割という築古の中古物件がざらにあります。しかも米国ではここ数年、不動産価格が大きく上昇しているので、税効果とともに値上がり益まで期待できるというのがセールスポイントのようです。

 

しかし、米国の不動産価格が値上がりしたのは過去数年間の好景気によるものであり、この先も上がり続けるとは限りません。米中貿易摩擦が深刻化して以来、米国の景気の先行きには不透明感が漂っており、ひとたび景気が下向けば不動産投資熱が冷え込んで、収益力を失った物件を売るに売れなくなる可能性があります。また、言うまでもなく海外不動産投資には為替変動リスクもあります。

 

その点、当社が提供する一都三県の郊外の中古物件であれば、為替変動リスクとは無縁です。しかも表面利回りは年10%前後と高く、郊外といっても人口が比較的密集する一都三県の範囲内なので、売ろうと思えばいつでも売れます。

 

そのうえ、希望に応じて建物比率を7~8割まで高めることができるのですから、わざわざ米国の不動産を購入するリスクを取るよりも、手堅くて賢い投資だと言えるのではないでしょうか。

 

取材・文/渡辺賢一 撮影/永井浩(人物)
※本インタビューは、2019年2月12日に収録したものです。