全国規模のトレンドとは逆に、人口増加が続く都心
「人口推計」(総務省統計局)によると、日本の人口は、2010年の約1億2,806万人をピークとして年々減り続けている。2017年10月1日時点では約1億2,670万人と、7年間で約136万人も減少した。奈良県ひとつがなくなったのとほぼ同じ人数であり、人口減少の勢いの強さを実感させる。
しかも、日本の人口減少ペースは今後ますます加速することが予測されている。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2053年までに1億人を割り込み、2065年には8,807万人まで落ち込むとのことだ。
人口減少が進めば、不動産市場にも大きな影響が及ぶことはいうまでもない。不動産の価値は、短期的には金利や景気の動向によって、下がることもあれば、上がることもある。だが、長期的に見ると、人が減って不動産の需要が縮小すれば、不動産価格も少しずつ下がり続けることになる。とくに人口減少が深刻な地方では、価格下落の勢いが増していくことが考えられる。
しかし、日本全体では人口減少が進んだとしても、部分的に見れば、当面は人口増が続くと予想されるエリアがある。いうまでもなく、その代表例は東京都心だ。
「人口推計」(総務省統計局)からもわかるように、東京都の人口は、日本の総人口がピークを打った2010年以降も着実に増え続け、2017年10月1日時点では約1,372万人と、7年間で60万人以上も増えている。
しかも、「住民基本台帳による東京都の世帯と人口」(東京都総務局統計部)から都心の過去7年間の人口増加率を見ると、千代田区が約26%増の6万1,269人、中央区が約30%増の15万6,823人、港区が約21%増の25万3,639人、渋谷区が約12%増の22万4,680人と、いずれも2ケタずつ伸びている(2018年1月1日時点)。これを見る限り、都内でも都心のほうが人口増加の勢いが強いことは明らかだ。
至便でありながら閑静なエリアを求める富裕層
都心ほど人口増加の勢いが強い理由として、外国人居住者や、郊外や地方などから移り住むシニア層が増えていることがあげられる。
国は成長戦略の一環として、東京の中心部に外国企業のアジア地域における業務統括拠点や研究開発拠点のさらなる集積を目指す「アジアヘッドクォーター特区」を設けた。特区としての機能を整備すべく、東京都心・臨海地域や品川駅・田町駅周辺地域、渋谷駅周辺地域などで大規模な再開発プロジェクトが進行している。
これらのプロジェクトが次々と完成し、外国企業の誘致が進めば、都心に流入する外国人居住者の数はますます増えることになる。
一方で、急速な高齢化の進展とともに、郊外や地方から生活に便利な都心に移り住もうとするシニア層の動きも顕著になっている。生活に何かと不便な地方よりも、駅から近く、移動や買い物などに便利で快適な都会に暮らしたいというニーズが高いからだ。
郊外や地方で暮らすシニアの富裕層が、リタイヤメント後の住宅やセカンドハウスとして都心のマンションを購入するケースも増えている。こうした層は、都会ならではの利便性を求めながらも、落ち着きのある閑静なエリアに開発されたマンションを選ぶ人も多いようだ。都心で閑静なエリアとなると本当に場所が限られてくるが、郊外や地方で長く暮らした人は、落ち着いた日常と、ほどよい利便性がミックスされた贅沢な場所を選ぶ傾向が強い。
都心でいえば、再開発が進む品川に近接した高輪や三田、都心の中心部である千代田区番町などが代表例であろう。これらのエリアには、大手デベロッパーが富裕層向けのマンションを次々と建設している。特に「アジアヘッドクォーター特区」として再開発が進む品川駅・田町駅周辺地域は、今後ますます生活の利便性が向上するであろう。世界中の企業が集まることで東京の国際化はさらに進み、一流ブランドや世界の名立たるレストランなどが都心に集積するはずだ。
再開発によって、都市インフラについても更なる向上が期待できる。バリアフリーなどが完備され、外国人だけでなく、シニアにとってもますます暮らしやすい環境が実現する。快適さを求めて、郊外や地方から都心に移り住む富裕層は増え続けるだろう。
富裕層が都心のマンションを購入するのには、「資産保全」の意味もある。人口が減り続けている郊外や地方では、不動産の価値が下がってしまう恐れがあるが、今後も人口増加が期待できる都心のマンションであれば、比較的価値が下がりにくい。そのため、自宅やセカンドハウスとしてだけでなく、投資目的で都心のマンションを購入する富裕層も多いようである。また、子供や孫のために大事な資産をしっかり守りたいと考えて、都心のマンションを購入するニーズも高いようだ。
このように、「今の暮らしの快適さ」だけでなく、「資産価値の保全」という2つの目的を同時にかなえてくれるのが、都心のマンションなのである。