資産100億円を作るにはどうすればよいのか。本連載では、「賃貸経営」を中心に資産を形成していくための考え方やノウハウを、自らも900戸の大家である、ゴールドトラスト株式会社の取締役会長・久保川議道氏に伺う。第5回目のテーマは、最初の満室賃貸経営に成功した後の動きである。

複数棟経営で「中級の賃貸経営者」へ

入居者第一を心がけて、満室賃貸経営に成功したとします。借入金を返済し、利息などの必要経費、税金をすべて支払った後で、毎年、1~1.5%程度の手取りが残るはずです(土地費用+建物費用含む)。たとえば、1億5000万円の物件で、1.5%の手取りなら225万円です。これが、投資に対する純利回りになります。逆に言うと、これくらいの手取り金額を残すことが成功の目安になります。

 

この純利益額は毎年積み上がって増えていきます。一方、35年返済の借入金は毎年減っていきます。すると、どこかの時点で借入れの残債と、積み立てた利益額が等しくなります。0.8%の金利で借入れをして、1.5%程度の手取り額が続いた場合、通常は23~25年でこの状態になります。

 

このとき、残債を一括で返済してしまえば無借金になります(あるいは、返済しなくても、同額を積んで置けば、実質無借金です)。以後は、不動産から利益だけを得られるようになり、一安心です。賃貸経営者を「初級、中級、上級」と分けるとすれば、これが初級レベルでの成功です。

 

さて、成功は喜ばしいことですが、このままだと利益に対する所得税を払い続けなければなりません。また、将来の相続も心配になります。

 

ゴールドトラスト株式会社 取締役会長 久保川議道氏
ゴールドトラスト株式会社
取締役会長 久保川議道氏

そこで、1棟目の経営に成功した賃貸経営者は、再び借入れを行って、2棟目、3棟目と所有物件を増やしていくのが資産形成の王道です。借入れをして物件を増やすことでのみ、税金を減らすことができ、効率的に資産を増やせるからです。ところが、日本人の多くは「借金は怖いもの、できればしないほうがいい」という考えを持っています。資産100億円を目指す上では、世界一税金の高い日本では、その考えは捨てなければなりません。

 

もちろん、あらかじめ決められた毎月の返済は行っていきますが、それ以上に返済のために資金を積んでおく必要はありません。というより、資産100億円を目指すためには、賃貸経営の純利益として得られた手取り金額を、積極的に資金運用していかなければなりません。

 

その運用先の1つが、海外不動産、とくにアメリカでの木造住宅への投資です。アメリカの住宅は耐用年数が日本よりもずっと長く(日本27年・アメリカ103年)、築30年たった住宅でも普通に売買の需要があり、賃貸や分譲で利用されています。ところが、日本の税制では木造住宅の償却年数は22年であり、築22年を超えた住宅を購入すると4年で減価償却をすることが可能になります。この日米の住宅事情と税制の差を利用したスキームを使うのです。

 

海外ファンドで「複利運用」をすれば…

もう1つの運用先として考えられるのが、年利8%で回る海外ファンドで複利運用をすることです。現在の日本で年利8%などというのは、夢のような利回りですが、海外のファンドではよくある利回り水準です。かつては日本でも郵貯で年利8%の預金があったことを考えれば、驚くような水準ではありません。そして、複利の効果については、すでに皆様ご存知だと思いますが、8%複利で30年間運用すると、元本は10.1倍になります。8%というのは、最低でその程度の利回りを求めたいということで、海外では15~20%という成績のファンドもめずらしくありません。

 

ちなみに、今後急速に人口が減る日本経済の先行きはあまり明るい兆しがありません。いつ急速に円安になってもおかしくないことを考えると、資産を外貨にも分散して保有しておくことは、資産運用の基本です。さらに、外貨といってもいろいろあります。いまは米ドルが好調ですが、これもいつまで続くか保証はありません。可能であれば、オーストラリアドルや香港ドルなど、複数の通貨に分散投資できるファンドで運用しておくことが望ましいでしょう。

 

このようにして、1棟の賃貸経営の成功(初級)から複数の賃貸経営の成功(中級)、そして、海外不動産投資、海外ファンドでの複利運用などをミックスさせながら、資産を増やしつつ、借入により税金は最小化していくことが、資産100億円への道です(上級)。基本的な考え方自体は、決して難しいところはないということが、ご理解いただけたのではないかと思います。

 

あとは、実際にできると信じて、これを実行するかどうかだけです。

 

取材・文/椎原芳貴 撮影/石塚実貴 ※本インタビューは、2018年6月6日に収録したものです。