資産100億円を作るにはどうすればよいのか。本連載では、「賃貸経営」を中心に資産を形成していくための考え方やノウハウを、自らも900戸の大家である、ゴールドトラスト株式会社の取締役会長・久保川議道氏に伺う。第2回目のテーマは、 国内不動産の現状と賃貸市場の実態である。

「負け組」賃貸経営者の空室率は40%⁉

いま、多くの地主さん、あるいは資産家の方が、大手ハウスメーカー、大手アパートメーカーの営業マンに薦められ、「土地活用」「相続税対策」として、アパート、マンションを建設しています。そして、そのうち9割は、失敗に終わります。中には、先祖代々の土地を失うだけでは済まずに、借金が返済できず自己破産に追い込まれる方もいます。どうしてそんなことになってしまうのでしょうか?

 

簡単に言えば、賃貸経営が「事業経営」だという本質を理解しないままで、つまり、単に「自分の都合」だけを考えて、賃貸経営を始めてしまう方がほとんどだからです。

 

現在、日本の総世帯数は約5300万世帯です。そのうち、1266万世帯(約24%)が賃貸住宅に住んでいます。一方、賃貸住宅は1745万戸あります。1745万戸ある住戸のうち、入居者が住んでいるのが1266万戸ですから、入居率は約70%、空室率は約30%です。

 

ゴールドトラスト株式会社 取締役会長 久保川議道 氏
ゴールドトラスト株式会社
取締役会長 久保川議道 氏

もともと、賃貸住宅のほうが多いところに、平成27年の相続税改正(基礎控除の大幅引き下げ等)の数年前から、「改正相続税対策」を口実に、大手ハウスメーカー、大手アパートメーカーが土地活用の営業を強化した影響もあり、ここ数年で、大量のアパート、マンションが建てられました。一方で、日本全体ではすでに人口が減り始めていますから、明らかに供給過剰で、空室率が上がるのは当然と言えば当然のことです。

 

皆さまは「空室率が30%とは、大変な数字だな」と思うかも知れませんが、実はそれも違うのです。空室率30%というのは、あくまで全戸「平均」だからです。実際は、満室経営を続けている少数の勝ち組賃貸経営者と、恐ろしい空室率に耐えている多数の負け組賃貸経営者との、大きな格差が生じているのです。

 

私が個人で所有する約900戸の入居率は99%以上ですし、私の会社のアサヒグローバルが管理(サブリースなど)している物件の入居率は約96%です。もちろん他にも、「満室経営」を実現なさっているオーナーさんは、たくさんいらっしゃるでしょう。満室経営に成功している割合が賃貸経営者の全体のうち30%だとします。すると、残りの70%の賃貸経営者は「空室率40%」ということになります。恐ろしい数字です。

 

例えば10年契約といったサブリースをしていれば安心でしょうか? 契約期間の後はどうなりますか? 大幅に、極端に言えば半額近くまで家賃を引き下げての再契約。あるいは空室率40%での自己経営。いずれにしても借入金の返済をすることもままなりません。

 

ですから、最初に述べたように、土地を手放したり、自己破産せざるを得なくなったりする地主さんが後を絶たないのです。

 

“我欲だけ”の土地活用で失敗するのは当たり前

しかし、大変申し訳ないのですが、厳しく言えばそれも地主さんの自己責任です。そもそも入居者さんのことを第一に考えて、入居者さんに喜んでもらえるような家を作ろうという気持ちから、賃貸経営を始めたのでしょうか? そのために、立地にあった建物の企画を考えたり、原価(建築費)を下げて家賃を低く抑えることを考えたりして実行なさったでしょうか?

 

入居者さん(お客様)のことを考えずに、「自分の土地を守りたい」「相続税を安くしたい」「孫にお小遣いをあげたい」というような“我欲だけ”で、営業マンに言われるままに賃貸経営を始めたしたら、失敗するのはほとんど必然でしょう。持っていた土地が、たまたまアパート向きの立地だったという、幸運に恵まれた一部の人以外は、まず失敗します。

 

それは、普通に個人商店や会社を経営するときのことを考えればわかるはずです。お客様に喜んでいただくことを第一に考えない店や会社が、長く繁栄するはずがないのは、自明の理です。こう言われれば、多くの人は「その通り」と納得なさるのに、なぜか「土地活用」ということになると、多くの地主さんが、お客様(入居者さん)の都合をまったく考えない我欲の賃貸経営に乗り出してしまうのですから、不思議です。

 

「お客様第一」という経営の本質を考えず、我欲だけで賃貸経営を始めた地主さんが70%だということは、その人たちと逆のことをすれば、簡単に満室経営ができて、30%の勝ち組に入れるということです。その方法を、次回以降ご説明します。

 

取材・文/椎原芳貴 撮影/石塚実貴 ※本インタビューは、2018年6月6日に収録したものです。