札幌近郊以外の地域ではコンパクトシティ化にも留意
ここまで北海道の投資用不動産のメリットについて解説してきましたが、もちろん不動産投資には相応のリスクがあります。とくに「北海道不動産」の場合、人口減少などによって入居者が確保しにくくなる空室リスク、それに伴う家賃下落リスク、雪による建物の劣化や修繕などのリスクは気になるところでしょう。建物の劣化が進めば、入居付けがますます困難になって、空室率が高まるという悪循環に陥る可能性もあります。しかし、物件選びや管理をしっかりと行えば、これらのリスクは低減できるはずです。
まず空室リスクですが、すでに述べたように、同じ北海道でも人口が増えている札幌やその近郊の物件を選べば、かなり抑えることができます。過当競争の兆しが表れている札幌の中心部を外せば、入居付けに困る心配は、まずないと言っていいでしょう。
ただし、札幌圏から遠く離れた旭川や釧路、帯広といった地方都市の場合、人口が減り続けているので、エリアや物件選びは慎重に行う必要があります。旭川などの地方都市は、札幌よりさらに地価が安いので、投資用不動産の表面利回りも10%前後と高いのが魅力です。しかし同じ市内でも、駅や市役所などのある中心部は一定の賃貸需要が見込める半面、中心部から離れた場所は生活や交通の便が悪く、入居が付きにくい傾向があります。
まさに“二極化現象”ですが、この傾向は今後、ますます深刻になるでしょう。なぜなら過疎化が進んでいる市町村については、国の政策として、居住者を郊外から中心部に誘導する「コンパクトシティ化」が進行しているからです。過疎化が深刻な北海道では、旭川や釧路といった地方の中心都市でも、今後「コンパクトシティ化」が加速するはずです。居住誘導地域から外れた郊外エリアには、道路の補修やごみの集配といった行政サービスが行き渡らなくなるので、おのずと賃貸需要は縮小していきます。
いまは入居者を確保できても、10年後、20年後にはゼロになるリスクが想定されるわけです。北海道の地方都市の物件を取得するのであれば、居住誘導地域に含まれるエリアの物件を選ぶのが鉄則だと言えます。
意外にあなどれない除雪、融雪関連費用
家賃下落リスクについても、札幌やその近郊であれば、さほど気にする必要はないと思います。札幌市の1LDKの家賃は新築で月5万~6万円、築20年で4万~5万円といったところです。建物の老朽化や陳腐化とともに家賃が下がるのは致し方ありませんが、エリアや物件を厳選すれば、需要の縮小によって家賃が大幅に下がるリスクは抑えられるはすです。
どのエリアの、どんな物件が人気なのかということは、やはり地元の不動産会社に教えてもらうのがベストだと思います。インターネットで得られる情報には制約がありますし、土地勘のない北海道以外の投資家が自分の判断だけで選んでしまうと失敗しやすいものです。
また、大雪の降る北海道では、建物の修繕やメンテナンスをしっかり行わないと、劣化が早く進行して入居付けが困難になる恐れがあります。このリスクを抑えるためには、建物の状況をこまめにチェックし、きちんと修繕やメンテをしてくれる管理会社を選ぶことが大切です。定期的に状況をレポートし、何か大きな問題が発生したらすぐに電話やメールで連絡してくれるような管理会社が望ましいでしょう。
あまり報告や連絡のない管理会社には、オーナー側から積極的に連絡を取ることも大切です。口うるさいと思われても構わないので、建物や設備の状況に問題はないか、入居者からクレームが出ていないか、空いている部屋の入居付けはいつごろできそうか、といったことをこまめに確認しましょう。
オーナーから頻繁に連絡を受けると、管理会社としても気を抜けなくなるので、管理や入居付けがしっかりしてくるものです。口うるさいオーナーになることは、“満室経営”の基本と言えるかもしれません。
ちなみに雪の降る北海道では、除雪や融雪に関連する費用もかかります。除雪そのものは入居者負担ですが、除いた雪を運び出す排雪についてはオーナーが負担するのが一般的です。建物や敷地の大きさにもよりますが、排雪費用は年間10万~20万円ほど掛かります。このほか、敷地の雪を埋設した電熱線や温水パイプで溶かすロードヒーティングを導入すると、初期費用のほか、月3,000~4,000円ほどの運転費用が掛かります。オーナーは初期費用だけ負担し、運転費用は入居者が負担するという契約方法もあります。雪にかかわる費用は意外と大きくなりやすいので、なるべく自己負担を減らすようにしたいものです。