大量供給に価格高騰・・・厳しさを増す都心の投資用不動産
2020年の大きなイベントに向けて、都心ではマンションの大量供給が続いています。新たなタワーマンションが競い合うように次々と建設され、東京の街並みもずいぶん様変わりしました。私は札幌で不動産会社を経営し、東京と千葉にも支店があるので行ったり来たりしていますが、来るたびに新しいタワーマンションが建っているのに驚かされます。
たしかに東京都心の人口は増えていますし、ここ数年は景気もかなりよくなっているので、新しい物件が次々に供給されても不思議ではありません。しかし、インカムゲイン狙いの不動産投資を考える場合、物件が大量に供給されるのはあまり好ましい状況ではありません。なぜなら、選べる物件の数が増えれば増えるほど、入居希望者の奪い合いが激しくなり、空室リスクが高まるからです。
実際、不動産情報会社の調査を見ると、東京の賃貸用住宅の空室率は14.5%と、かなり高い水準になっています。木造アパートに限ると、東京23区の空室率は3割を超えるという調査結果もあるほどです。新しいマンションが供給されると、築年数が古く、見た目や建物の質がいまひとつの物件はどうしても敬遠されがちになります。利回りは新築より高くても、入居者が付きにくいので、空室率が上がって経営が成り立たなくなる可能性があります。
では、新築マンションなら大丈夫かといえば、必ずしもそうとは言い切れません。なぜなら、物件価格の上昇によって、都心の新築マンションの利回りはかなり下がってきているからです。いま、過剰とも言えるほど都心でマンションが大量供給されているのは、投資目的で購入する人や、それを融資で支える金融機関のニーズが異常に盛り上がっているからです。
需要が過熱すれば、当然ながら不動産の価格は上昇します。とくに都心の場合、2020年の大きなイベントに向けて地価が勢いよく上昇しています。労働力不足による建設費の高騰もあって、都心の投資用不動産の価格は、かなりの富裕層でなければ手が届かない水準になってきました。
都心5区(千代田・中央・港・渋谷・新宿)では、新築ワンルームマンションでも3,000万から4,000万円という物件はザラにありますし、1棟もののマンションとなると、中古でも10億円を下らないものも少なくありません。
大きな「イールドギャップ」が狙える地方物件の魅力
物件価格が上昇すれば、当然ながら利回りは下がります。都心の新築マンションの場合、現在の表面利回りはせいぜい年4%台、なかには4%を切っている物件もあります。
すでに不動産投資をしている方ならわかると思いますが、表面利回り4%というのはかなり厳しい水準です。月々の家賃収入からローンの返済や、諸費用、税金などを差し引くと、ほとんどお金が残らないか、赤字が出る水準だからです。
不動産投資の表面利回りと、ローン金利の差を「イールドギャップ」と言います。イールドギャップが大きければ大きいほど、投資の収益性は上がり、キャッシュも残りやすくなります。いまはマイナス金利政策によってローン金利がかなり下がっているので、相対的にイールドギャップを広げやすいタイミングだと言えますが、表面利回りがそれを上回るほど下がってしまうと、ギャップは縮んでしまいます。
仮に表面利回りが年4%、ローン金利が年2%だとするとギャップはわずか2%しかありません。諸経費や税金、空室の発生による損失などを差し引くと、たちまち赤字になってしまう恐れがあります。まさに“薄氷を踏む”思いです。
では、イールドギャップを大きくするにはどうすればいいのでしょうか?
答えは簡単です。なるべく表面利回りの高い物件を選び、有利な条件を取り付けてローン金利を抑えればいいのです。そうした条件を満たすとなると、やはり都心よりも、地方の物件に着目するのがお勧めです。都心の新築不動産の表面利回りは4%前後ですが、札幌や名古屋、大阪、福岡といった地方都市であれば、6~7%前後の表面利回りを期待できる物件がいくつもあります。
地方は都心以上に空室リスクが高く、物件管理も難しいという声もあります。しかし、選ぶエリアや物件さえ誤らなければ、リスクは最小限に抑えられますし、長期にわたって安定的なインカムが期待できます。インカムゲイン狙いの不動産投資を考えている人は、地方に注目すべきだと思います。