圧倒的な土地価格の安さが「高利回り」を生む
では、数ある地方の中でも、どの地方の物件がインカムゲイン狙いの不動産投資に向いているのでしょうか?
わたしは北海道で生まれ、北海道を本拠地として投資用不動産の新築建売や企画、設計、賃貸管理、売買などのサービスを提供しています。ですので、ポジショントークが入っていると思われてしまうかもしれませんが、客観的に見ても、地方の中でとくに有望なのは「北海道の不動産」だと思います。
まず、北海道の物件は、ほかの地方に比べても表面利回りが高めです。同じ地方でも大阪や名古屋などのマンション供給は、近年“プチ東京化”が進んでおり、表面利回りの低下が顕著になっています。それでも東京に比べれば高めですが、新築の投資用不動産の表面利回りはせいぜい6%台。エリアによっては6%を切るところもあります。
これに対し、北海道の投資用不動産の表面利回りは、札幌の中心部でも7~8%台、札幌近郊なら9%台が平均です。旭川や釧路、帯広といった北海道の中でも地方の都市なら、10%以上の表面利回りを稼げる物件も少なくありません。一般に不動産投資の採算分岐点は、イールドギャップ(前回参照)で6~7%といわれていますが、表面利回りが高い北海道の物件なら、それに近い水準を得られるはずです。
なぜ、これほど表面利回りが高いのかと言えば、やはり物件の価格が安いからです。北海道の場合、一棟ものの新築木造アパートの価格は、札幌市内や近郊でも5,000万円前後。RC造なら2億~3億円といったところです。これなら、年収1,000万円以上、金融資産3,000万~4,000万円前後といった属性のよいサラリーマンや公務員の方であれば、ローンを組んで購入できます。都心では入手困難な一棟ものに手が届くのです。これほど安く取得できるのは、何と言っても土地部分が安いからです。地価の高い東京では、不動産価格の半分以上を土地の価格が占めています。
これに対し、北海道は全国的に見ても地価が圧倒的に低く、なかには土地の割合が価格の1~2割ほどの投資用不動産もあります。そのため、同じような物件でも、東京や他の地方に比べてかなり安く取得できるのです。
他地域に比べて「価格変動リスクが低い」という特徴も
しかし、東京や北海道以外の地方にお住まいの方は、北海道の不動産と聞くと、何となく不安を感じて、二の足を踏んでしまう方がいらっしゃるようです。
「人口が減っているようだけど、入居者は確保できるのか?」「そんなに遠くの物件を取得して、ちゃんと管理を任せられるのか?」といった心配が頭をよぎるからでしょう。その気持ちはよくわかります。北海道は海に隔たれていますし、何と言っても遠い。東京から札幌までは、飛行機で1時間半もかかります。ようやく2016年に北海道新幹線が一部開業しましたが、最南端の函館(新函館北斗)でさえ、東京から新幹線で4時間以上です。
距離的な遠さ以上に、海に隔てられているという“心理的な遠さ”が投資をためらわせる原因となっているのかもしれません。
けれども、その遠さがむしろ幸いして、北海道の投資用不動産は高い表面利回りを維持できているのだと言えます。新幹線ですぐに行ける名古屋や大阪は、安心して投資ができるので“プチ東京化”が進み、不動産価格が大きく上昇していますが、北海道のアパートやマンションを取得したいと考える投資家はそれほど多くありません。
そのため、北海道の投資用不動産価格は非常に安定しています。大きく値上がりすることもない代わりに、市況の変化によって価格が極端に下がるリスクも少ないのです。キャピタルゲインを狙って不動産投資をする人にはあまり魅力を感じないかもしれませんが、資産価値を保ちながらこつこつインカムゲインを得たいという人であれば、北海道の不動産はかなり魅力的だと思います。
それでもやはり気になるのは、やはり空室リスクでしょう。北海道と言えば、どうしても「過疎化」や「少子・高齢化」といったキーワードを頭に思い浮かべてしまう人が多いようです。人口が減っていけば、おのずと賃貸需要は減り、空室リスクは高まります。
たしかに北海道の人口は減少の一途をたどっています。日本の総人口が減少に転じたのは2008年ですが、北海道の人口は10年以上も早い1997年に約570万人でピークを打ち、2012年ごろには550万人を割り込みました。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2040年の北海道の人口は、現在より約2割も少ない419万人になるということです。
しかし、不動産投資の環境は「マクロ」ではなく、「ミクロ」でとらえるべきです。北海道全体では人口減少が進んだとして、エリアや物件さえしっかりと選べば、満室経営は必ず実現できます。