実は増加している「札幌」の人口
いま日本では、国全体としては人口減少が加速する一方で、東京への人口と富の一極集中が進んでいます。人は、経済活動が活発で、仕事が得やすく、また暮らしやすい場所へと向かうからです。高齢者が、医療や生活インフラの整っていない地方から都会へ移り住む動きも、東京への一極集中に拍車を掛けています。
実はこれとまったく同じ現象が、北海道内でも起こっています。道内の地方から、札幌やその近郊へと人々が移り住む動きが加速しているのです。北海道全体の人口はこの20年余りで20万人以上も減少しましたが、札幌市の人口は20万人以上も増えています。農産品の輸入自由化などによって道内各地の農業や酪農、漁業などが衰退し、高齢化によって働けなくなった人たちの多くが、札幌に移り住んでいます。
道内最大の経済圏である札幌とその近郊には、地元だけでなく、全国の大手企業の支社や支店も集積しています。これも多くの人材や労働力を道内外から集め、札幌の人口増加を促す大きな要因になっています。2018年1月末時点の札幌市の人口は約196万人。福岡市より40万人以上も多く、東京23区、横浜市、大阪市、名古屋市に続く国内5位の大都市です。
空室リスクを抑えるためには、人口が増え続けている場所を選ぶことが重要なポイントですが、札幌はその条件を十分に満たしていると言えます。ただし、どんなに人口が増えている都市であるとは言っても、エリアごとに細かく見ていくと、空室率の低いエリアとそうでないエリアがあります。東京でも、駅から離れている物件は入居が決まりにくく、空室が増えやすい傾向がありますが、これは札幌についても同様です。
札幌は、東京のように鉄道路線が入り組んでおらず、交通機関はJRと3本の地下鉄、市電、バスしかありません。そのため、おのずと“駅近”のエリアも限られてしまいます。そのうえ、冬の雪道を長い時間を掛けて歩くのは面倒なので、駅から遠いエリアは東京以上に敬遠されがちです。
そのため、札幌市内のアパートやマンションは、札幌駅や大通公園のある中央区をはじめ、その周辺の東区、白石区、厚別区、豊平区、西区、手稲区、北区など、JRや地下鉄の走っているエリアにとくに密集しています。市内で唯一、JRも地下鉄も走っていないのは、南東部にある清田区です。
北海道日本ハムファイターズの本拠地移転もカギに⁉
生活や交通の利便性を考えると、同じ札幌市内でも、鉄道の走っているエリアのほうが入居付けはしやすいのではないかと思われがちです。しかし実際には、地下鉄もJRも走っていない清田区のほうが、中央区やその周辺の区に比べて高い入居率を実現しているアパートやマンションが多いようです。
なぜなら、アパートやマンションの数が多い分、中央区やその周辺の区のほうが入居付けの競争は激しいからです。東京ほどではありませんが、札幌市の中心部でもここ数年、投資用不動産の供給は増えています。その結果、入居付けの競争はますます激しくなり、空室率が少しずつ上がってきました。どんなに入居希望者が多くても、それを上回る勢いで供給が増えれば過当競争になってしまいます。むしろ、入居希望者は少なくても、競争にさらされにくい清田区のほうが狙い目だと言えそうです。
さらに言えば、札幌から少し離れた北広島市や恵庭町、千歳市などのほうが、もっと狙い目です。これらの市や町は、札幌まで電車で20~30分ほどのところに位置し、東京で言えば神奈川や埼玉、千葉などと同じく、札幌への通勤圏となっています。札幌の中心部に比べて空室率は低く、過当競争が起こっていないので物件価格も安めです。そのため、表面利回りも札幌の7~8%台に対し、北広島や恵庭、千歳は9%台と、やや高めの水準になっています。
札幌近郊をお勧めするもうひとつの理由は、入居付けのため仲介会社に支払う「広告料」の安さです。過当競争が激しい札幌の中心部では、広告料を3~4ヵ月分取られることもありますが、札幌近郊の物件なら1ヵ月分で済むケースが多いようです。札幌の家賃は1LDKで5万~6万円なので、4ヵ月分だと20万~24万円が取られることになります。近郊なら5万~6万円で済むのですから、その差はかなり大きいと言えます。
ちなみに、恵庭や千歳は千歳空港に近く、空港職員や航空会社の社員、自衛隊員などがたくさん暮らしています。札幌への通勤者だけでなく、地元の需要も期待できるわけです。
また、北広島には2023年に北海道日本ハムファイターズの本拠地移転が決定しており、今後の発展が見込まれています。