企業オーナーや個人投資家の「事業投資」に対する機運が高まる中で注目を集めているのが「コインランドリー事業」だ。本連載では、「事業」としてどう収益性を高めるのか、この点で特筆すべき取り組みを多数行っている株式会社ジーアイビー代表取締役の鈴木衛氏に、コインランドリー事業投資の最新事情を伺った。第5回目は、「ブルースカイランドリー」の収支シミュレーションを解説する。

通常は困難を極める商業施設内への出店だが・・・

本連載の第2回で述べたとおり、商業施設内(スーパー、ホームセンター等)への出店が、コインランド経営で成功を収めるための最大のポイントとなります。我々も商業施設内への出店に特化したコインランドリー店舗「ブルースカイランドリー」を全国的に展開しており、2018年4月現在、48店舗の出店を実現させています。

 

商業施設内に出店できれば、ほぼ「勝ち」が決まるとはいえ、実際の出店交渉は困難を極めます。なぜ我々がこの困難なハードルを越えられたのかというと、もともとは17年前から取り組んでいたコンサルティング事業において、東海地方を中心とした商業施設とビジネス上のコネクションがあったからです。

 

 

出店実績を重ねた現在では、出店計画の段階で、商業施設側から積極的に情報を提供いただけることも増えました。とはいえ、立地選定にはさまざまな検討事項があるため、最終的に出店可能な施設の数は限られ、「椅子取りゲーム」のような早い者勝ちの状況になっていることも、本連載の第2回で解説したとおりです。

 

「ブルースカイランドリー」に参画される場合、出店地の検討からのスタートとなります。我々が候補地として選定した中から、気に入った場所を選んでいただきます。店舗の運営・管理は、我々がすべて一括して行いますので、オーナー様のお住まいの近隣に絞る必要はありません。

 

出店地が決まったら、資金計画のご相談や現地確認等といったフローを通して、出店・経営にあたって懸念事項を解消していきます。最終的に、商業施設側へ出店を申し込み、契約という流れです。契約完了後から実際にコインランドリー店舗を建設し、事業スタートとなりますが、立地選定からオープンまでに4ヵ月~半年程度かかります。

 

オープン後、1日に原則として3時間、パートさんが店舗に常駐し、清掃や顧客対応を行います。パートさんの業務教育、勤怠管理や給与管理などは徹底して我々が行います。

 

標準的な店舗の広さは約20坪で、洗濯機と乾燥機を合わせて12機16台の設置となります。この標準的な店舗での、初期の投資金額は以下のようになります。

 

【初期投資金額】
 ●建物:1,450万円
 ●機械:2,200万円
 ●その他オプション:100万円
 ●オープン準備費用:100万円
 ⇒ 計:3,850万円(税別)

 

[図表1]「ブルースカイランドリー」店内図

出典:株式会社ジーアイビー提供資料
出典:株式会社ジーアイビー提供資料

 

一方、運営が軌道に乗ってからの月間の収支は、以下のように見込んでいます。

 

【収入】
 ●売上予測:80万円
【支出】
 ●変動費(電気、ガス、水道、洗剤等):20万円(25%)
 ●賃料:15万円
 ●店舗運営委託費:16万円(20%)

 ⇒ 収支合計:29万円

 

これは最低限のラインとして、かなり保守的に見込んでいます。月29万円の収益だとすると、年間の収益は348万円で、3,850万円の投資に対して約9%の利回りです。我々の提供するコインランドリー事業投資の場合、これが最低ベースでの予想収益利回りとなります。


では、この予想をベースにした場合、投資資金の回収はどのように進むのでしょうか。上述のように、標準的な初期投資金額は3,850万円ですが、計算の簡便化のために初期投資4,000万円として計算したのが、下記図表2です。

 

[図表2]投資回収後の増加資金(最終利回り別)

出典:株式会社ジーアイビー作成資料
出典:株式会社ジーアイビー作成資料

 

最低限の予測数値である利回り9%だとすると、回収に11.1年かかり、20年間の運営では3,200万円の資金増加となります。仮に、マーケティング施策の成功等により、この利回りを15%にできれば、20年間の収益は1億2,000万円で、キャッシュは8,000万円も増えることになります。店舗によって異なりますが、実際には10%~15%程度になると思われます。ある社長は、必ずもとが取れて1億以上稼げる可能性があるなら、やらない理由はないと言っていました。

太陽光発電投資のリスクヘッジにもなる!?

最初の「ブルースカイランドリー」がオープンしたのは2015年です。これまでの中で最高の売上を記録したのは、秋雨前線が活発化して長雨が続いた2017年10月です。この月には、155万円という売上記録があり、利回りを計算すると約22%という数字になります。

 

もちろん、これは瞬間最大風速なので利回り22%が続くわけではありませんが、オープンから3年未満ということを考えると、今後のマーケティング施策の充実により、瞬間最大値がさらに伸びる可能性は十分にあり得ます。少なくとも、平均売上予測の80万円という数字が、非常に保守的なものだということは、ご理解いただけると思います。

 

 

実際にはオープン当初は認知度が低いため、売上も少なく、認知が進むにつれてだんだんと売上が伸びていきます。したがって、収益の伸びも直線的な動きにはなりません。この点を考慮したより詳細な予測推移は、下記図表3の事業計画書をご参照ください。

 

[図表3]「ブルースカイランドリー」事業計画書

出典:株式会社ジーアイビー作成資料

 

上述のように、コインランドリー事業は「悪天候(雨天)が続くと収益が跳ね上がる」という特性を持っています。これは、いわゆる太陽光発電投資と、ちょうど反対の収益特性です。実際、太陽光発電へ投資しているオーナー様から、2017年10月の長雨の時に「太陽光のほうがひどいことになっているが、コインランドリーをやっていて本当に良かった」と言われたことがあります。事業投資ポートフォリオによるリスクヘッジの一例として、参考までにご紹介しておきます。

 

次回、本連載の最終回では「コインランドリー事業」の未来を考察していきます。

取材・文/椎原芳貴
※本インタビューは、2018年4月5日に収録したものです。