企業オーナーや個人投資家の「事業投資」に対する機運が高まる中で注目を集めているのが「コインランドリー事業」だ。本連載では、「事業」としてどう収益性を高めるのか、この点で特筆すべき取り組みを多数行っている株式会社ジーアイビー代表取締役の鈴木衛氏に、コインランドリー事業投資の最新事情を伺った。第2回目は、コインランドリー経営の最新ノウハウを解説する。

「買い物ついでに」利用する主婦たちを狙い撃つ

ここからは、実際にコインランドリー事業投資を検討する際に「絶対に外してはならないポイント」について解説します。


「コインランドリーの機能=洗濯、乾燥」というサービス自体は、どの店でもほぼ同じです。そのため、コインランドリーの収益性の差は、まず立地で決まります。では、どのような場所に出店するのがいいのでしょうか? どんなビジネスでも共通する基本ですが、まず「顧客のニーズ」「顧客の利便性」から考えてみましょう。

 

現在のコインランドリーは、「車で来店する」「主婦」が顧客の中心です。主婦の場合、コインランドリーで洗濯をしている間に買い物をすませてしまい、乾燥まで終了した洗濯物を取り出して家路につくという方がほとんどです。逆にいうと、買い物のついでにコインランドリーに寄っているということです。

 

 

すると、コインランドリー立地に対する顧客の主要なニーズは、「買い物に行きやすい場所にあること」です。究極的に買い物に行きやすい場所は、買い物をする商業施設の店舗そのものでしょう。しかし、商業施設の店舗内にコインランドリーを導入することは簡単にはできません。

 

そこで注目されているのが、商業施設の駐車場です。商業施設の広い駐車場の一部にコインランドリー店舗があれば、車を降りてコインランドリー店舗に寄ってから、そのまま買い物に行くことができます。帰りに洗濯物のピックアップをするのも楽です。

 


また買い物に行きやすい場所というニーズと同じくらい、多くの主婦が重要だと感じているのが「車を停めやすく、出し入れしやすい駐車場であること」です。車庫入れに苦手意識を持つ方が多いのでしょう。スーパーなどの商業施設の駐車場は、通常、出し入れが楽なように広い間隔が設けられています。その駐車場内に設置するコインランドリー店舗は、自動的にその面でもニーズを満たすことになるのです。

商圏を1.5kmから3km、5kmにできる理由

コインランドリー店舗の商圏は、通常1.5km程度といわれています。一方、大型商業施設の場合、地域にもよりますが、3kmから広い場合は5kmを商圏としています。つまり、商業施設の敷地内にコインランドリーを出店すれば、それだけで商圏を広げることができるのです。


商業施設敷地は、高い収益を生む可能性のある立地となります。たとえば、中規模のスーパーで年間売上高15億円だとします。この売上だと、年間来場者数は60万人、月間だと5万人くらいです。本連載の第1回で、コインランドリーの利用率は5%という話をしました。すると、ここにはすでに月間2,500人の見込み客がいる、ということになります。


我々が運営する店舗の最低売上げ目標は月80万円で設定しています。ここでは細かい計算は省きますが、この売上を達成するのに必要な顧客は、月間1,020人です。つまり、この中規模商業施設に建てるだけで、必要な顧客数の約2.5倍もの見込み客が、最初から目の前にいる、ということなのです。これは商業施設の顧客だけの数字ですが、さらにこの施設で働いている従業員もたくさんいます。商業施設で働いている従業員からすれば「職場にコインランドリーができた」ということになるわけですから、それを利用しないほうが不自然なくらいです。

 

 

このように商業施設内の敷地は、コインランドリーの店舗立地として非常に最適です。そこにコインランドリー店舗を作ることができれば、仮にその近隣エリアに後から競合店ができたとしても、よほど特別な事情が生じない限り、競争に負けることは考えにくいでしょう。


しかし、商業施設であればどこでもいい、というわけではありません。その商業施設の売上や来場者数などの業績を精査することが必要です。また、ロケーションや駐車場の構造も、コインランドリーの売上げに関係してきます。さらに、商業施設は借地で営業しているのが普通ですので、借地権の残存年数なども確認しなければなりません。


そして、これらの条件をクリアしたとしても、コインランドリー店舗を建てる土地の家賃などで折り合いがつかない場合もあります。当然ながら、家賃はなるべく安くしたいので、商業施設にとってもメリットがあることなども説明しながらの、粘り強い交渉が必要になります。


我々は、これまでに全国で約2,500箇所もの商業施設を調査しましたが、そのなかでコインランドリー店舗を出店できる可能性を考えられたのは2割程度でした。コインランドリー店舗の出店に適正な商業施設は、案外少ないのです。ある意味で、早い者勝ちの「椅子取りゲーム」的な面があります。


そして、こういった適正店舗の発掘調査やコインランドリー出店交渉を、個人、あるいはそのビジネスが専門ではない事業者の方が独自に行うのは、不可能ではないにしろ、相当ハードルが高いでしょう。こういった困難性まで鑑みると、信頼できる専門業者とパートナーシップを結び、「餅は餅屋」で業者を頼るべきところは任せるのが、最適な方法ではないでしょうか。

 

次回は、コインランドリー事業投資を活用した節税策を解説します。

取材・文/椎原芳貴
※本インタビューは、2018年4月5日に収録したものです。

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