日々の「歯の手入れ」もグンと楽に
――“セルフケアプログラム”を受診して、どんな点が変わりましたか?
岡本 プログラムを受けている1ヵ月の間は、学ぶことで精いっぱいでした。今まで自分が信じて長年やってきた方法とは全く違ったので。1ヵ月が過ぎ、自分自身でケアするようになってからのほうが、受けてよかったという実感はありますね。今、朝昼の歯のお手入れは3分くらいで、夜は5分くらいです。フロスのかけ方に慣れるまでは10分くらいかかっていたと思います。コツというか、自分のケアの癖が体でわかってきたみたいです。歯と歯の溝、裏のどこを磨き残しやすいか、ビジュアルで把握できているので、そこを必ず重点的にケアしています。
鈴木 意識面での変化はいかがですか?
岡本 プログラムに通って得られた大きな成果は、「意識改革」と「習慣化」ですね。夜寝る前、どんなに忙しくてもフロスをかけなきゃいけないと思うようになったのは、プログラムを受けてからです。プラーク※が取りきれていない自分の歯の写真を思い出すと、「このまま寝れないぞ」という気持ちになります。プログラムで、「何をさぼってもいいから、寝る前のフロスだけは欠かさないでください」とご指導いただいたのもありますが、自分の中の意識づけがうまくいっているのかなと思います。
※プラークとは、食べかすや糖分などを栄養源にして急速に増加する細菌のこと。歯に定着することで、むし歯や歯周病の原因になります。
鈴木 それは素晴らしいですね。ご自分の歯に対する意識の変化を、生活にしっかり取り入れていらっしゃいますね。
岡本 朝昼晩のライフスタイルで、ケアにかけるべき時間をしっかり把握できたことも大きいですね。仕事先ではじっくりケアする時間もないので、夜に重点的に磨くというやり方を提案していただき、それを実践しています。
修了時には「プラーク残存率」が10%以下にまで減少
――セルフケアに対する自信はつきましたか?
岡本 受診する前までは、歯ブラシと糸ようじを使っているだけで大丈夫だと思っていたんです。でも、初診時に調べてもらった口腔内のプラーク残存率が74%と高めの数値がでてしまって。きちんと磨いてから受診したので、かなり衝撃的でした。
鈴木 3ヵ月に一度は定期健診に行かれたり、歯磨きの際に糸ようじを利用されたりと、岡本さんはセルフケアに対する意識が高い方だと思います。しかし、そのような方でも高めの数値がでてしまうことはよくあります。
岡本 それが、プログラム修了時には10%を切ることができました! 結果が目に見えたので、大きな自信につながりました。プログラムを修了した今では、もう将来にかけて歯について悩むことはないかなと思っています。教えてもらったセルフケア方法を続けることさえできれば、歯についての心配事とは無縁でいられるだろうなという安心感があります。
鈴木 多くの方が、自分に合ったセルフケア方法をご存じないんです。根本的には、口の中の細菌を取り除くことができれば、甘いものを食べたとしてもむし歯になることはありません。いかに細菌を除去するセルフケア方法を身につけることができるかが重要です。 “自分の歯”を“自分”で守るために“自分”から知識とスキルを学びにいくという岡本さんのような姿勢を、ぜひ皆さんにも意識していただきたいと思います。
――健康なうちに予防することはどんな意味を持つのでしょう?
鈴木 口の中に残った細菌により、全身疾患に発展する可能性が指摘されています。実際に、口腔内の細菌が脳に達し、そのせいで認知症になるという研究データも発表されています。歯周病リスクが“健康寿命”に関わるということを意識していただき、少しでも早くセルフケアと向き合ってもらいたいです。日本人の“平均寿命”と“健康寿命”との間には、約10歳もの差が生じています。“健康寿命”とは「健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間」を意味します。ということは、多くの日本人が健康上に問題を抱えた10年間を将来的に過ごす可能性があるのです。人生100年時代といわれる今、健康なうちに“予防”をして、健康で充実した日々を過ごしていただきたいです。
岡本 歯周病リスクについては知っていましたが、口の中の健康状態が大事なんですね。
鈴木 メインテナンスの必要性はそこにあります。理想としては月1回、クリニックで口の中をチェックしていただきたいです。そうすることで、口の中だけでなく、全身の健康に視点を向けてほしいと考えています。セルフケアを通してより健康的な生き方を提案し、長い関係性を築いていくのが私たちの願いです。