定期健診だけでは不十分!? 誤認される日本の”予防歯科”

欧米をはじめとする先進諸外国では、歯の健康を保つために“治療”ではなく“予防”を重視したセルフケアが常識になっている。本連載では、100歳になっても自分の歯で食べ続けることを目的とした“歯を守るためのセルフケア”の具体的なメソッドについて解説する。
第1回目は、株式会社オーラルケア・チーフ歯科衛生士の関山牧枝氏に、 誤認されている日本の”予防歯科”について伺った。

歯の”クリーニング”だけでは、むし歯は予防できない!?

――近年、むし歯・歯周病予防のために歯科医院へ通う人が少しずつ増えてきたように感じます。

関山
 たしかに少しずつではありますが、定期的に歯科医院へ通う人は増えてきています。ただ、“早期発見・早期治療”になっていることが多いようで、これでは本当の意味で歯を守ることはできません。早めに見つけるのではなく、むし歯や歯周病を発症させないために通うことが大切です。


“むし歯や歯周病になった根本的な原因”について、歯科医院で説明を受けたことがありますか? この質問をすると、ほとんどの方がこう答えます。


「治療法に関しては教えてもらったことがあっても、その根本的な原因や予防策について教えてもらったことはない」


また、定期的に歯科医院へ通っている方に“歯を失わないために実践していること”を尋ねたところ、「歯科医院での歯石除去」という答えが圧倒的多数でした。残念ですが、歯石除去だけでは歯は守れません。生涯自分の歯で豊かな人生を送るためには、“歯科医院任せ”ではなく“自分で管理する”という意識を持つ必要があります。

 

 

――歯科医院に定期的に通っていれば予防できると思っていたのですが、違うのですか?


関山 たとえば3ヵ月に一度、歯のクリーニングを受けて徹底的にきれいにしてもらったとします。そのきれいな状態、プラークという細菌の塊がない状態は、何日間くらい続くと思いますか?

 

プラークとは、食べかすや糖分などを栄養源にして急速に増殖する細菌のこと。歯に定着することで、むし歯や歯周病の原因になります。


――1ヵ月くらい……ですか?

 

株式会社オーラルケア
チーフ歯科衛生士 関山牧枝 氏
株式会社オーラルケア
チーフ歯科衛生士 関山牧枝 氏

関山 それくらいと答える方が多いのですが、実は歯をきれいにしたその日からプラークは溜まり始め、3日目には蓄積しているという研究結果があります。つまり3ヵ月に一度、年に4回だけ歯をきれいにしてもらったとしても、365日のうち4日しかきれいな日はないということ。歯の汚れが落ちてスッキリするのは確かですが、それによって歯を守れるとは言いきれないのです。


予防とは本来、疾患ができてしまう原因とメカニズムを理解し、その対策を講じることです。一人ひとり違う“むし歯・歯周病のなりやすさ(リスク)”を把握し、そのリスクとなる歯の部位を知る。そして、自分でケアできるスキルを身につけ、それを習慣化することなのです。以下は、歯を守る予防習慣をスタートした人たちのコメントです。


20代女性
「本当の原因と自分に合ったケアの方法を知ったことで、歯に対する意識も行動も大幅に変わりました。“むし歯になってからどうしよう”ではなく、“むし歯にならないために何ができるか”と先回りできる。それが本当にうれしいです」

 

30代男性
「むし歯のない家系の人以外は、歯を磨いてもむし歯になるものだと思っていました。予防できることを知ってビックリです。同時に、詰め物や被せ物は一生モノではない。そのことがわかって、自分の歯を大切にしなければと思うようになりました」


定期的に通っているのにむし歯が見つかって治療を受けた、なんてことは本来あってはなりません。「早めに見つける」のは、もちろん大事なこと。でも、それでは予防していることにならないのです。3ヵ月に一度のペースで通っているにもかかわらず、なぜむし歯になってしまったのか? 予防するための対策がきちんと取れていたのか? 治療を受けて終わりにせず、しっかり疑問を持つこと。それが予防の始まりです。

「歯を守る予防歯科」を実践する医院を見極めるには?

――歯科医院選びは本当に難しいですよね。見極めるためのポイントはあるのでしょうか?

関山
 「予防に関して何をしていただけますか?」と聞いてみてください。「歯石や汚れを除去します」といった回答だとしたら、そこの医院は“クリーニング”だけを提供している可能性が高いといえます。つまり、今ついている汚れを取り除いて、きれいにするという考え方です。


もちろん、口腔内の環境を整えるためにクリーニングは欠かせません。しかし、それよりも大事なのは“あなただけの予防プランを一緒に作ること”です。むし歯や歯周病の原因となる菌の数、だ液の質や量、歯並び、食習慣……。口の中の状態は人それぞれ、むし歯や歯周病のなりやすさも一人ひとり異なります。当然ながら、その人に合ったカスタムメイドの予防プランが必要になってくるのです。

 

 

カスタムメイドの予防を提供している歯科医院では、何よりもコミュニケーションを大切にしています。なぜなら、あなたのことを知らないと最適な提案ができないからです。だからこそ、口の中の状態を把握するための検査を行ない、話をじっくりと聞き、どんな質問にも気兼ねなく答えてくれます。

 

ここまで読んで、「歯石や汚れを除去すれば大丈夫」とは言えないことがおわかりいただけたでしょうか? 毎日自宅で行なうセルフケアこそ、歯を守るための最も大切な要素! そのトレーニングに時間をかけ、二人三脚でサポートし、スキルアップへと導いてくれる歯科医院かどうか。そこが、最も重要な見極めのポイントとなります。

取材・文/伊藤秋廣 撮影/永井浩
※本インタビューは、2017年11月16日に収録したものです。

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連載100年自分の歯を保つための“セルフケア”メソッド入門

株式会社オーラルケア マーケティングコーディネーター セミナーインストラクター
チーフ歯科衛生士

1994年 鶴見大学女子短期大学部 歯科衛生士科 卒業、東京都内の開業医に勤務。
2002年 株式会社オーラルケア 入社
2014・2016年 スウェーデン・マルメ大学研修に同行。

書籍『本当のPMTC その意味と価値』『トータルカリオロジー』『トータルペリオドントロジー』の校正に携わる。

著者紹介