人生が変わる~歯の「セルフケア」体験・体感実例①

欧米をはじめとする先進諸外国では、歯の健康を保つために“治療”ではなく“予防”を重視したセルフケアが常識になっている。本連載では、100歳になっても自分の歯で食べ続けることを目的とした“歯を守るためのセルフケア”の具体的なメソッドについて解説する。
第5回目は、歯を守る知恵と技術を学ぶ、株式会社オーラルケアの“セルフケアプログラム”を修了された岡本侑子氏に、プログラムの体験談を伺った。聞き手は、オーラルケア・歯科衛生士の鈴木茜氏である。

せっかく3ヵ月に1回、歯科検診を受けていたのに・・・

――岡本さんが“セルフケアプログラム”を知ったきっかけを教えてください。

 

岡本侑子 氏
岡本侑子 氏

岡本 自分が暮らす地域でお母さんの子育て支援活動をしてるんですが、その会主催の健康セミナーでセルフケアプログラムのことを知りました。歯について、具体的に悩みを抱えていたわけではなかったですね。私は長年、3ヵ月に1回のペースで、定期的にホームドクターのところで検診を受けていて、その都度ケアはしていただいていました。歯石をとってもらったり、染め出しをして磨けていない箇所をチェックしたり、昔治療した歯の見直しとかも。そこそこ検診を受けていたので、自覚症状もないし、そんなに悪い箇所はないと自分では思っていました。

 

 

――では、“セルフケアプログラム”受診の決断をした理由とはなんだったのでしょう?

 

岡本 歯の定期健診にも行っていたし、歯の悩みはほとんどなかったのですが、先日、私より少し上の年齢で、むし歯でもないのに歯を抜かなければならなくなった方がいたんです。今は健康な歯だから大丈夫と思っていても、もしかしたら自分もいつかは……という不安が後押しした部分はあります。


鈴木 確かにプログラムを受診する方には、岡本さんのように「今の状態で大丈夫なのか」と不安に思って来られる方も多くいらっしゃいます。むし歯等の痛みがあるから受診するという方は、むしろ少ないかもしれません。

歯科医院のやり方とは異なる「フロス」の使い方とは?

――岡本さんが受けたセルフケアプログラムの内容を簡単に教えてください。

 

株式会社オーラルケア
歯科衛生士 鈴木茜 氏
株式会社オーラルケア
歯科衛生士 鈴木茜 氏

鈴木 個々の患者さんで違いますが、基本的な流れでご説明しますと、1ヵ月の間、週に1回の頻度で来院していただきますが、まず最初に、カウンセリングを通して過去の歯科体験や、将来の希望などをじっくりと聞かせていただきます。そして、口の中の検査を行います。むし歯や歯周病を引き起こす菌が口の中にどれだけいるかや、だ液の質などを検査し、見えない部分まで徹底的に調べます。また、食事記録を3日分提出していただき、その方の生活背景を職業も含めて、その方の情報をお聞きします。セルフケアプログラムを無理強いしても習慣化は難しいので、今の生活のなかでどうやったら取り入れられるか、一緒に考えながら進めるのが、一般の歯磨き指導との違いでしょうか。


岡本 予防歯科の観点で、あんなに徹底的に調べてもらうのは初めてでした。口の中を撮影して、写真を見せられるのも驚きましたね。

 

鈴木 その写真を見て、「この状態に対して自分はどうしたらいいですか?」という質問が出てくる会話を展開しながら、選択肢を提示します。一方的な指導や、受け身になってしまうケアでは、なかなか主体性が芽生えにくいのですが、このように自分の現実を知り、「どうすればいいんだろう?」という意識を持っていただくことで、自らが責任をもって毎日のセルフケアに取り組んでもらえるのです。

 

 

――実際、受診してどう感じましたか?

 

岡本 やっぱり歯の表面は磨けているつもりでも、歯と歯の間のプラークが取りきれていないことを痛感しました。特に、フロスの使い方は驚きましたね。それまで歯科医院で教えられていたやり方とは全く違っていて、歯の隅々まで細かく徹底的にきれいにするテクニックをしっかり教えてもらいました。今は毎日やることで慣れてきましたが、初めのうちは教わった通りにやるのがすごく大変でした……。

 

プラークとは、食べかすや糖分などを栄養源にして急速に増加する細菌のこと。歯に定着することで、むし歯や歯周病の原因になります。


鈴木 むし歯や歯周病になるのは様々な要因がありますが、根本的には口内の細菌が原因です。的確に取り除いてリセットできれば、むし歯、歯周病になることはないんです。「むし歯になるのは食べかすが原因」という勘違いが蔓延するほど、細菌の存在に対する知識を皆さん持っていません。歯科医院ではただ磨くことだけしか教えず、何のために、どこのポイントを磨くのかの説明が不足していると思います。


岡本 今までは歯磨きの仕方が悪いせいで、むし歯になるのだと思っていました。でもプログラムを受けて、口の中にいる細菌が原因でむし歯や歯周病になっていて、その細菌は歯ブラシだけでは取りきれないことを教わりました。いつも通っている歯科医院では、歯周ポケットの深さは指摘されましたが、正しい磨き方までは教えてもらえませんでした。プログラムを通して、口の中から細菌を取り除くための正しいフロスのかけ方を習慣化するトレーニングができました。そういう小さな積み重ねによって、歯周病のリスクが大きく違ってくるのではないでしょうか。

株式会社オーラルケア 予防システム構築サポート部 セミナーインストラクター
歯科衛生士

2000年 太陽歯科衛生士専門学校 卒業
2003年 株式会社オーラルケア勤務。全国の歯科医院の予防歯科システム構築コンサルティング及び、歯科医院に勤務する歯科衛生士へ予防業務教育などを担当し、現在に至る。
2012年 日本の歯周病罹患率80%を下げるためのボランティア団体「Goodbye Perio プロジェクト」を発足。現在、全国の歯科衛生士2,791名が登録。
2016年 スウェーデン・マルメ大学研修に同行。

著者紹介

連載100年自分の歯を保つための“セルフケア”メソッド入門

取材・文/山下和樹 撮影/永井浩
※本インタビューは、2018年1月10日に収録したものです。