菊川工業がサプライチェーン・ファイナンスを導入した理由 菊川工業の製品のクオリティを支える職人の技術力

下請取引に関する2016年末のルール改正に伴い、下請事業者への支払いサイト短縮が強く求められている親事業者。そんな中、世界で名を馳せる金属加工メーカー菊川工業株式会社が、支払いサイトの大幅な短縮を可能とする仕組み「サプライチェーン・ファイナンス」を導入した。その狙いは何か? 本連載では詳しく探っていく。第4回目は、サプライチェーン・ファイナンスを導入した理由について、宇津野嘉彦社長にお話を伺った。聞き手は、サプライチェーン・ファイナンスを取り扱うTranzax株式会社の小倉隆志社長である。

「経理は経営の羅針盤たるべし」の真意とは?

――協力会社への支払いシステムを見直される過程で、Tranzaxのサプライチェーン・ファイナンスも導入されたと聞いています。導入のきっかけは何だったのでしょうか?

 

宇津野 直接のきっかけは、当社の総務担当者がTranzaxさんのサービスを新聞で知り、それを私に提案してきたことです。少々話は脱線してしまいますが、私は経理担当者には「経理は経営の羅針盤たるべし」と言い続けてきました。税金の計算や預金を出し入れ、手形の発行は“作業”でしかありません。会社の業績を伸ばすための“仕事”とは言えません。

 

あるプロジェクトがあったら、それに見合った過去の数字を引っ張り出し、整理して各部門にあげるのが羅針盤としての仕事です。口を酸っぱくしてそれを言い続けてきたので、当社は事務の効率化や経営分析のためにさまざまなソフトやシステムを導入してきました。サプライチェーン・ファイナンスの導入提案も、その延長線上のことなのです。

 

――どのような点にメリットを感じましたか?

 

宇津野 当社にとっては大きなコスト削減効果が見込めて、協力会社さんにとっては早期の資金化が可能になる。双方にメリットがある点が最大の魅力でした。Tranzaxさんのサプライチェーン・ファイナンスは、メガバンクさんなどが提供されている一括ファクタリングの仕組みとほぼ一緒です。

 

協力会社さんは納品・検収が済んだ売掛債権を買い取ってもらうことで、早期に資金化できます。ただ、驚くことにメガバンクさんの一括ファクタリングよりも、Tranzaxさんのサプライチェーン・ファイナンスのほうが債権の買い取り時に発生する金利が小さい。これなら、協力会社さんも納得して頂けるだろうと感じました。

 

菊川工業株式会社 代表取締役社長 宇津野嘉彦 氏(右)Tranzax株式会社 代表取締役社長 小倉隆志 氏(左)
菊川工業株式会社 代表取締役社長 宇津野嘉彦 氏(右)
Tranzax株式会社 代表取締役社長 小倉隆志 氏(左)

 

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今回の導入で「コスト削減」を明確に実感

小倉 おっしゃるように、一括ファクタリングとほぼ仕組みは一緒なんですけど、あらゆるコストを低く抑えている点がサプライチェーン・ファイナンスの特徴です。というのも、メガバンクさんの一括ファクタリングは売り上げ規模で1000億円以上の会社を対象にしているんです。なぜなら、導入に当たって大規模なシステム改修が必要になるから。

 

さらに、メガバンクさんの一括ファクタリングは短期プライムレート(1.475%)で売掛債権を割り引くのが一般的ですが、当社のサプライチェーン・ファイナンスでは1%前後に抑えることが可能です。これは当社がベンチャーで運営コストがかからないことに加えて、導入企業の余裕資金やメインバンクからの融資を元手にSPC(特定目的会社)を設立して、その資金で売掛債権の買い取りを行う仕組みにしているからです。大企業ならば0%台の金利でお金を借りられる超低金利時代だからこそ、実現できたサービスです。

 

宇津野 おっしゃるとおり、当社が導入したサプライチェーン・ファイナンスでは売掛債権の割引にかかる金利は1.2%で、メガバンクさんの一括ファクタリングサービスよりも安くなっていますね。おまけに、導入コストもほとんどかかりませんでした。

 

小倉 メガバンクさんの一括ファクタリングの場合は、1000万円単位のシステム改修費用等がかかるんですよ。

 

宇津野 それぐらいかけても、導入したいものなのでしょうね。実際、7月に導入したばかりですが、すでにかなりのコスト削減に繋がっていると実感しています。まず、手形の振り出し作業がほぼ全廃できたのが大きい。以前は、支払いサイトを間違えてしまって、その再発行のために裁判所で手続きを取らなければならない、といったことがしばしばありました。その手間は、相当なものです。

 

――すでに大半の協力会社がサプライチェーン・ファイナンスを利用されているのですか?

 

宇津野 7月に主要な協力会社さん10社でテスト導入してもらい、11月から残りの協力会社さんでも導入してもらっています。そのうち、3~4割が売掛債権の買い取りを希望されているので、かなりのニーズがあったのだと実感しています。

 

菊川工業株式会社 代表取締役社長 宇津野嘉彦 氏(右)
Tranzax株式会社 代表取締役社長 小倉隆志 氏(左)
菊川工業株式会社 代表取締役社長 宇津野嘉彦 氏(左)
Tranzax株式会社 代表取締役社長 小倉隆志 氏(右)

 

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取材・文/田茂井 治 撮影/永井 浩 
※本インタビューは、2017年10月16日に収録したものです。

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Tranzax株式会社 代表取締役社長

一橋大学卒業後、野村證券に入社。金融法人部リレーションシップマネージャーとして、ストラクチャード・ファイナンス並びに大型案件の立案から実行まで手掛ける。主計部では経営計画を担当。経営改革プロジェクトを推進し、事業再構築にも取り組んだ。2004年4月にエフエム東京執行役員経営企画局長に。同年10月には放送と通信の融合に向けて、モバイルIT上場企業のジグノシステムを買収。2007年4月にはCSK-IS執行役員就任。福岡市のデジタル放送実証実験、電子記録債権に関する研究開発に取り組んだ。2009年に日本電子記録債権研究所(現Tranzax)を設立。

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