ライフスタイルに合わせて柔軟に家を変えるアメリカ人
アメリカにおける不動産流通の最大の特徴として、活発かつ大規模な中古不動産市場が挙げられます。マーケット全体の約8割を中古物件が占め、しかも売り物件の公示から成約までの期間が短く、スピーディーに売買されます。これは、日本人とアメリカ人の住宅に関する考え方の違いが如実に表れている現象といえるでしょう。日本人は一般的に、住宅を購入したら、そこに住み続ける定住志向を持ち、「家は、一生に一度の大きな買い物」であると考えがちです。だからこそ、自分の家を建てるという夢をかなえるために、新築住宅を購入したいと考えるのです。
ところが、アメリカでは住宅に対するマインドがまったく異なります。アメリカにはライフスタイルの変化に合わせて、住む場所を柔軟に変えていく傾向があります。生涯で11回住み替えをするというデータもあるほどです。しかも、彼らは決断が早いため、住み始めるまでに時間を要する新築住宅ではなく、すぐに手に入り、新生活のスタートを切ることができる中古住宅にメリットを感じる方も多いのです。
住宅に対する根本的な考え方が違えば、当然、不動産価格に対する考え方も違ってきます。日本では、一般的に新築時が価格の最高値となり、住めば住むほど、経年劣化によって価値が下がっていくと考えられ、実際に資産価値も目減りしていきます。一方、アメリカでは、前述の通り中古物件に対するニーズが非常に高く、しかも築年数はきちんとメンテナンスをしていれば、物件の価値に大きな影響を与えないという考え方が定着しています。
出口戦略でも優位性を持つアメリカ不動産投資
また、彼らが重視するのは立地です。どのエリアの、どの通り(道路)に面しているかによって不動産価格が決まります。築年数が住宅価値に影響を与えないどころか、そこに住んでいる人が綺麗に使ってさえいれば、価値が上がることも珍しくありません。なぜなら、彼らはライフスタイルの変化に合わせ、すぐにその住宅に住み始めたいと考えるため、通勤や通学に便利で、なおかつ現在の家族構成で生活するのに最適であるという条件を最優先します。
このように、中古住宅の取引が活況を呈しているアメリカの不動産マーケットにおいては、出口戦略を考えやすくなります。売りに出せば簡単に買い手が見つかる中古マーケットは、非常に流動性が高いのです。日本においては、中古住宅の価値が新築時から極端に下落してしまうため、保有物件の売却が難しいケースが多くあります。
不動産に限ったことではありませんが、流動性が低ければ低いほど、売却したいときに実行できないリスクが高まります。アメリカの不動産は、投資家というより、「そこに住みたい」と考えるアメリカ国民が多いことから、マーケットが極めて安定しているのが特徴です。売却してキャピタルゲインを獲得し、その資金を元手に新たな物件を購入する。または、オーナーとしてさらにハイリターンな家賃収入を得るという選択肢も十分に取り得るのです。