近年、日本人の富裕層や資産家からも大きな注目を集めている「アメリカ不動産」投資。本連載では、株式会社オープンハウスのウェルス・マネジメント事業部長である井上由美子氏が、「アメリカ不動産」投資の魅力と具体的な進め方をやさしく解説します。今回は、アメリカ不動産投資を行った際、日本国内で納める税金の概要を紹介します。

保有・売却時における「収益」が課税対象に

日本国内に居住している方の場合、たとえ投資対象が海外の不動産であっても、そこで発生する賃貸収入や売却益に対しては、日本国内で確定申告を行い、納税する必要があります。どのような税金がかかるのか、細かく見ていきましょう。

 

アメリカの不動産購入時には、日本国内でも税金がかかることはありません。注意すべきは保有時と売却時で、それぞれインカムゲインとキャピタルゲインが発生した際に、その収益が課税対象となります。つまり、アメリカ不動産を賃貸に出した場合、その賃料が所得税の対象となりますし、アメリカ不動産の売却によって得たキャピタルゲインには譲渡所得税が課税されます。

 

 

譲渡所得税に関しては、アメリカのキャピタルゲイン税と同様、保有期間によって税額が異なります。保有期間が5年以内の場合には「短期譲渡所得」として譲渡所得の39.6%が課税され、保有期間が5年超となる「長期譲渡所得」に関しては、20.315%が課税されます。これらの税率にはすべて復興特別所得税が含まれています。

※5年超、5年以内の判断は、所有不動産を譲渡した年の1月1日時点を基準にします。

 

ただし、税金が発生するのは、いずれも、「黒字」の状態であることが前提となります。保有するアメリカの不動産に借り手がついて、一定の賃料が得られていたとしても、減価償却費や管理修繕費、火災保険料などの経費が発生しており、それらの合計が賃貸収入を上回る「赤字」の状態であれば課税されません。それは不動産売却時にキャピタルゲインではなく、キャピタルロスが発生した場合も同様です。

日米ともに「赤字」の場合、両国で納税の必要なし

ここで注意が必要なのが、日本とアメリカでは、減価償却をはじめとする諸経費の考え方が異なるという点です。日本の税制では、築22年以上の木造物件の場合、建物を4年で減価償却することができますので、この間は「赤字」になりやすくなります。

 

そのため、日本では「赤字」でアメリカでは「黒字」、あるいはその逆であったり、日本でもアメリカでも「赤字」であったり、両方が「黒字」であったりすることも考えられます。

 

 

両方の国で「赤字」の場合には、日米どちらにおいても納税する必要はありません。一方のみが「黒字」の場合には、そちらの国でのみ税金を支払えばよいのですが、注意が必要なのは、アメリカ、日本の両国で「黒字」になった場合です。そのどちらの国に対しても税金を支払ってしまうと、同一の所得に対する二重課税となってしまいますが、これは、日本の「外国税額控除」の制度を利用することで一部の例外を除いて回避できます。アメリカで納税した所得税については、日本で納める所得税から差し引くことが可能です。

 

繰り返しになりますが、アメリカの不動産は、物件価格のうち「土地の価格」よりも「建物の価格」の割合が大きいケースが一般的で、減価償却費を大きくとれるのが特徴です。この減価償却の活用こそ、アメリカ不動産投資で大きなタックスメリットを生むカギとなるのです。