タックス・ヘイブンの活用コストと国選びのポイント

今回は、タックス・ヘイブンを利用するにあたってのコストと、実際に活用する国・地域を選ぶ際のポイントについて見ていきます。

2つ以上の国を利用することで効果的なプランに

タックス・ヘイブンでは、会社をつくるコストとその会社から得る利益との兼ね合いが問題となります。

 

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一般的に、タックス・ヘイブンは、2つ以上の国を利用することで効果的なプランを立てることが可能になります。つまりそれぞれの国に1社ずつ会社を設立して相互取引を行うことで節税効果が増加するのです。

 

しかし複数の会社を設立するには、設立費用、登記料、年間会社維持費用(たとえば資本金額に応じた公租公課など)、弁護士、税務専門家の報酬などが2倍はかかることになります。さらにペーパーカンパニーではなく経済的な実体を持つためには、オフィスの賃料や現地の役員、従業員などの給与負担、会計事務所への費用負担が発生します。

 

したがって、それらのコストを上回る節税効果がなければ、複数の会社設立は意味のないプランとなってしまいます。この点は事前に十分検討しておかなければなりません。

タックス・ヘイブン選びのポイントとは?

会社法の規制、会社設立コストを見る

現地で株主が出席した上での株主総会を年次で開かなければならない、といった会社法のあるタックス・ヘイブンでは、わざわざその度に現地へ赴かなければなりません。当然、飛行機代、ホテル代など出費がかさみ、時間もかかります。ほとんどのタックス・ヘイブンには、株主総会を年に1回開く旨の規定があります。

 

ただし、その条件はさまざまで、世界中のどこの国で開催してもよい、現地で開催するが電話でも参加できる、書面決議はファックスや電子メールの回覧でも可能という内容も少なくありません。

 

次に確認が必要なポイントは、最低資本金制度の有無です。ほとんどのタックス・ヘイブンにはその規制はありません。つまり1USドル・カンパニーが可能というケースが大多数となっています。もちろん、一応チェックしておくべきでしょう。特殊な会社、自家保険会社や証券会社などは、事業の内容規模に応じて、最低資本金がかなり大きなものと規定されていることもあるからです。

 

最後に、役員の最低員数、役員のうち1人は現地に居住していることが必要、といった規定があるかについても確認が必要です。会社の形態にもよりますが、ほとんどのタックス・ヘイブンでは、取締役は1名、セクレタリーも1名でよく、居住者でなくてもよいことになっているようです。

 

政治的・経済的安定性を分析する

カリブ海のケイマン諸島やブリティッシュ・バージン・アイランド、バハマなどはイギリスの法経済制度にならっていますので、政治的・経済的に安定しています。またマン島や、英仏間の海峡にあるチャンネル諸島のジャージーやガーンジー等は、国防、外交などの機能をイギリスに委ねており、同様に安定した政体を持っています。

 

もちろん例外もあります。たとえばキプロスは、イギリスやロシアの投資資金を受け入れ、オフショア・ファイナンス・センターとして隆盛を誇っていました。しかし、ユーロ危機の結果、同国はEUやIMFから金融支援を受けることになり、大手銀行の大口預金(主なものはロシアからの流入資金)の強制カットや、海外資金流失を防ぐための資本規制を余儀なくされています。

 

外国為替規制の有無

タックス・ヘイブンを利用することにより、資金のフローが生まれるケースは少なくありません。投資資金が自国からA国、A国からB国、B国から自国というように移動するわけです。その度に為替が必要になりますが、ほとんどのタックス・ヘイブンはオフショア・ファイナンス・センターとして機能しているので規制はほとんどありません。ただし、先に挙げたキプロスの例もあるので注意は必要です。

 

通信・交通手段を検討する

電話、ファックス、電子メール、インターネットといった通信手段の進化は地球上のほとんど隅々にまで広がっています。しかし、南太平洋に浮かぶ島国のタックス・ヘイブンなどでは、通信・交通手段の整備が先進諸国と比べて見劣りするのも確かです。こうした点も検討余地のひとつです。

 

その点、主要なオフショア・ファイナンス・センターなどは、世界中に出先のオフィスを構え、会計事務所がIBC(インターナショナル・ビジネス・カンパニー)設立の取り扱いを行える体制を採っています。たとえば、ブリティッシュ・バージン・アイランドの会社は香港でも設立できます。

 

ロケーションを考慮する

かつては自国から近いタックス・ヘイブンを利用するというのが、世界共通の認識でした。ニュージーランド、オーストラリアであれば南太平洋のサモア、クック諸島、バヌアツ、米国ならばカリブ海のタックス・ヘイブン、ヨーロッパならルクセンブルク、リヒテンシュタインといった具合です。

 

しかし最近では、通信手段の発達によって、地理的な距離の重要性はほとんどなくなっており、ヨーロッパの人でもシンガポールの金融機関を利用することが多くなっています。

 

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弁護士・税理士のサービスも必須確認事項

弁護士・税理士等のサービスが充実しているか、国際的な銀行の支店が多くあるかなどもタックス・ヘイブン選択の重要なポイントです。欧米の個人や会社が多く利用するオフショア・ファイナンス・センターには、世界的な大銀行の支店やビッグ・フォーといわれる世界四大会計事務所のオフィスがあり、そうした事務所等から投資時の税務情報などを得ることになります。ただし、料金は高くなってしまいますから、その点を現地の弁護士・税理士等と比較すべきです。

本連載は、2014年10月1日刊行の書籍『究極のグローバル節税』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

本連載の内容に関しては正確性を期していますが、内容について保証するものではございません。取引等の最終判断に関しては、税理士または税務署に確認するなどして、ご自身の判断でお願いいたします。

古橋 隆之

古橋&アソシエイツ・税理士古橋事務所 代表

1954年生まれ。税理士。早稲田大学法学部卒業後、南山大学法学研究科修了、太田昭和アーンストアンドヤング株式会社(現・新日本アーンストアンドヤング税理士法人)などを経て独立。古橋&アソシエイツ・税理士古橋事務所代表。外資系企業の日本進出時の会計・税務や国内投資ファンドへの税務コンサルティング及び国内中小・中堅企業の海外事業進出、資産家に対する国際税務支援で多数の実績を有す。国外のネットワークを活かした最新の世界税務事情に基づくグローバル税務には、国内外で定評がある。著書に『富裕層の新納税術 海外タックス・プランニング』『海外納税のすすめ』『納税者反乱』(総合法令出版)など多数。

著者紹介

連載グローバル節税のための「タックス・ヘイブン」入門

究極のグローバル節税

究極のグローバル節税

古橋 隆之 + GTAC

幻冬舎MC

世界でも高い法人税率の日本。安倍内閣はようやく法人税率引き下げをうたうも、どの程度の引き下げかは不透明だ。さらに一方では、中小企業への徴税強化、高額所得者には厳しい所得税率アップ、相続税の改定もある。かたやあの…

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