日本の平均寿命は年々伸びている。「令和3年簡易生命表」(厚生労働省)によれば、平均寿命は男性81.47年、女性87.57年となっている。これは世界的に見て非常に長い。日本は世界屈指の長寿国となっている。平均寿命は、男性は2013年、女性は1984年に、それぞれ80年を超えた。それ以降も、徐々に長生きの年数が伸びており、大変喜ばしいことといえるだろう。ところで、この平均寿命をもとに、「あと何年生きるか」を考えようとすると……「男性の平均寿命が81.47年ということは、70歳の男性は、平均的に、あと11.47年生きる?」「80歳の男性だと、あと1.47年生きる?「では、90歳の男性は?」と、何だかよくわからなくなってしまうかもしれない。ニッセイ基礎研究所の篠原拓也氏が、生命表をもとに長生きの年数について考えていく。
平均寿命と長生きの年数…生命表をもとに長生きの年数について考えてみよう (写真はイメージです/PIXTA)

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「平均的に、あと何年生きるか」は平均余命で見る

まず、平均寿命の平均とは何か。これは、生まれたばかりの0歳の人が、平均的に何年生きるかを示すものだ。それ以外の人には、平均寿命は当てはまらない。そこで出てくるのが、「平均余命(よめい)」だ。平均余命は、ある年齢の人々が、平均的に何年生きるかを示す。つまり、生まれたばかりの0歳の平均余命が、平均寿命ということになる。

 

例えば、令和3年簡易生命表によると、40歳の人の平均余命は、男性42.40年、女性48.24年となっている。平均寿命から年齢(40歳)を差し引いた年数(男性41.47年、女性47.57年)と比べると、男性で0.93年、女性で0.67年長い。40歳では、半年以上長いわけだ。

 

下記の表(図表1)の通り、この差は高齢になるほど大きくなっていく。

 

【図表1】
【図表1】

 

40歳の人は、生まれてから40年間亡くならずに生きてきた。当然のことだが、同じ時に生まれてこの40年間に亡くなった人は、寿命が40歳未満だった。40歳の人は、寿命が短かった人を除いた集団と言うことができる。このため、40歳の人の平均余命は、平均寿命-年齢よりも、長いことになる。

 

平均余命と、「平均寿命-年齢」の差

40歳のうち半数の人は平均余命よりも2年以上長生きする

平均余命は、ある年齢の人々が、平均的に、あと何年生きるかを示す。実は、この「平均的に」というのがクセモノだ。

 

「40歳の男性の平均余命は42.40年」と聞くと、「40歳のうちの半数の人が42.40年生きる」と考えてしまいがちだ。ところが、実際には40歳の人々の集団が半減する年数は、約44.6年であり、平均余命よりも2年以上長い。

 

平均余命は、今後の生存年数の“平均”だ。以下の「各年齢での生存者数」の図で、棒グラフの面積と四角形の面積が等しくなるような年数となる。

 

一方、40歳の人が半減するのは、以下の「各年齢での死亡者数」の図で、棒グラフの面積が左右で等しくなる年数となる。

 

「令和3年簡易生命表」で、各年齢での死亡者数を見てみると、男性は80代後半、女性は90代前半でピークを迎える。問題は、そのピークの前後だ。死亡者数は左右対称には分布していない。ピークに至るまでは、年齢が進むにつれて緩やかに死亡者数が増加する。しかし、ピークを超えた後は急に減少する。このため、平均余命や、生存者が半減する年数は、このピーク前までに前倒しされる。

 

40歳の人の場合、この前倒しは、平均余命のほうが、生存者が半減する年数よりも強く効いている。その結果、40歳のうち半数の人は平均余命よりも2年以上長生きする、ということになる(図表2~6)

 

【図表2】
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【図表3】
【図表3】
【図表4】
【図表4】
【図表5】
【図表5】
【図表6】
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