前回に引き続き、日本を待ち受ける「シェアリングシナリオ」とは何かを見ていきましょう。今回は、様々な改革によって、国民の意識はどのように変わるのか探ります。※本連載は、金融情報全般を扱う大手情報配信会社、株式会社フィスコ監修の『FISCO 株・企業報 2017年冬号 今、この株を買おう』(実業之日本社)の中から一部を抜粋し、「第4次産業革命」以降の日本経済のゆくえを探ります(分析:株式会社フィスコIR取締役COO・中川博貴氏)。

「何を選択し、何を諦めるか」の判断を迫られる国民

前回の続きである。このようなベーシックインカム制度の導入や働き方改革の成功が実現すれば、大半の国民にとって働くことは生きる上で不可欠ではなくなる。

 

また「何を選択し、何を諦めるか」を意識させられることにより、自分にとって大切なものを真剣に考えることが求められるようになるだろう。

 

リンダ・ハミルトンの著書『ライフシフト』では、社会構造の変化ともに従来の人生設計が通用しなくなると指摘している。自ら仕事を生み出すことができるインディペンデント・プロデューサー、もしくは一つの職業に固執せず様々な活動を同時に行うポートフォリオ・ワーカー的な働き方が求められる時代となる。そのためには、知識・スキル・人的ネットワークなどお金に換算できない無形資産の構築が重要になるという。

所有から利用へ…多様な生き方を認め合う社会が到来

これらの変化によって「何を選択し、何を諦めるか」という意識が高まれば、国民の間では「所有」するのではなく「利用」、「シェアしていく」という概念が広がることになるだろう。

 

自動車や家もシェアしていくシェアリングエコノミーがさらに主流になっていく。

 

英大手コンサルのプライスウォーターハウスクーパースによると、シェリングエコノミーの世界市場規模は2013年の約150億ドル(約1兆7000億円)から25年には約3350億ドル(約37兆2000億円)に拡大すると見込まれている。情報通信総合研究所の推計によると、日本の16年度の市場規模は1兆1812億円になるという。

 

人口減少に伴う空き家の増加や稼働していない自家用車など個人が有する遊休資産を有効に活用することで、環境への配慮かつ持続可能な社会へと転換することが可能となる。

 

また、地域活性化の起爆剤になるとの期待感も高い。新経済連盟の推計によると、ホームシェアによる経済効果は12.3兆円で、そのうちの7.5兆円がインバウンド消費(訪日外国人による旅行支出)によるものだという。

 

また、ライドシェアは渋滞緩和やそれによる損失時間を大幅削減し、社会の生産性が向上されるほか、経済効果としても3.8兆円が見込まれるという。

 

ただし、財務省の「シェアリングエコノミーの定量分析」に言及されているように、シェアリングエコニミーの拡大は国内総生産(GDP)で測ると、経済に及ぼす影響はネットでマイナスになる可能性もある。

 

たとえば、ライドシェアが主流になった場合、自家用車保有率は低下する。それに伴い、販売量は減少し、消費量が低下。その結果、GDPが低迷する可能性は否めない。現状のGDP統計では、シェアリングエコノミーによる経済構成を測ることができず、消費者余剰で計測することが最良であるとの見方もあるが、実際には観測不可能だ。

 

技術革新の恩恵を受ける資本家や超エリート層と、労働代替によりベーシックインカムを享受する大半の国民と、社会階層も二層化されることで富裕層の意識も変化するだろう。

 

第35代大統領のジョン・F・ケネディの父、ジョセフ・ケネディ氏が「財産の半分が法の下に間違いなく保護されるなら、あとの半分は喜んで差し出そう」と述べたように、社会秩序の均衡と平和をもたらすため、富裕層は社会貢献のために富を投下していく。

 

多様な考え方や生き方を認め、互いに助け合いながら、過去の蓄積や社会資本をうまくシェアして生活していく社会へ移行していくに違いない。

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