前回に引き続き、日本を待ち受ける「シェアリングシナリオ」とは何かを見ていきましょう。今回は、ベーシックインカム制度導入による影響、働き方改革による影響を説明します。※本連載は、金融情報全般を扱う大手情報配信会社、株式会社フィスコ監修の『FISCO 株・企業報 2017年冬号 今、この株を買おう』(実業之日本社)の中から一部を抜粋し、「第4次産業革命」以降の日本経済のゆくえを探ります(分析:株式会社フィスコIR取締役COO・中川博貴氏)。

ベーシックインカム制度が導入され、総需要を下支え

前回の続きである。そこで、政府は国民の所得損失分補償をすべくベーシックインカム制度の導入を打ち出す。技術革新によって代替された労働者(=消費者)に一定の収入をもたらすベーシックインカム制度を導入することで、総需要を下支えする。

 

政府が国民の所得損失分を補填することで個人消費を肩代わりし、企業の賃金を底上げしていく循環を生み出すだろう。

 

政府は2種類のタイプの税を併用し、自動化された雇用の賃金を補填する。富裕層(個人)に対する高率の事業税やキャピタルゲイン税、累進課税の強化を実現するだろう。また、いくつかのタイプの消費税の運用により、賃金喪失分の捕捉が可能だ。

 

また、企業も多くの国民が自分の地位向上に向けた期待感を維持できるために、雇用者が報われる報酬の受け取り方法やインセンティブの享受方法など、所得に格差をつけるシステムを導入することは十分に予想される。

イノベーションの醸成を狙うダイバーシティが推進

また、政府の働き方改革も効果を発揮する。バーチャル雇用の創出を狙って教育に対する投資や地域活動と市民活動の推奨、ダイバーシティの推進を進める。

 

「教育」に対する投資は、機械化の影響を受けた労働者が、それによって出来た時間を活かして、より専門性の高い職能教育と育成機会を最大限享受できるようになされることとなる。

 

たとえば、「ゼネラリスト」から「スペシャリスト」教育を積極的に進める。高度な専門技能(知識)取得の支援や初等段階から英語・プログラミング、アート(クリエイティブ)、コミュニケーション力の醸成支援を積極的に行う。

 

地域活動と市民活動の推奨は、人でなければできない、人だからこそできる非営利活動の推奨や労働機会の提供を積極的に増やしていく。自己再生のコミュニティ構築の機会なども提供する。

 

現状でもフィデリティ投信やゴールドマン・サックスなど一部の大企業は、一部の従業員にボランティアを義務付けている。こうした流れが主流になり、自分自身のプライベートワークの中に社会奉仕が組み込まれることとなる。

 

それぞれの問題意識と解決へのアイデアが集約されることでイノベーションの芽が生まれ社会課題を解決するような仕組みを構築することも可能となる。

 

 

さらに、ジェンダー(性別)、ジェネレーション(世代)、カルチャー(文化)の異なる者同士による協力を通じてイノベーションの醸成を狙うダイバーシティが推進される。

 

また、インターネットを駆使したミニ起業家たちの生態系(エコシステム)も誕生する。たとえば、アプリケーション開発は、言語が異なってもプログラミングを共通言語にコミュニケーションすることができる。

 

新しいアイデアを共有することで、共感や支援を申し出る人との出会は、ビジネスへとつながっていく。国内にとどまらず、グローバルな協創によるイノベーションが主流となっていく。

 

この話は次回に続く。

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