今回は、日本発展の鍵となる「新たな外貨獲得モデル」とは何かを見ていきます。※本連載は、金融情報全般を扱う大手情報配信会社、株式会社フィスコ監修の『FISCO 株・企業報 2017年冬号 今、この株を買おう』(実業之日本社)の中から一部を抜粋し、「第4次産業革命」以降の日本経済のゆくえを探ります(分析:株式会社フィスコIR取締役COO・中川博貴氏)。

技術の強化にむけ、海外からヒト・モノ・カネの調達を

前回の続きである。日本は従来のモノを売って外貨を稼ぐモデルから、日本独自のプラットフォームを海外企業に提供して外貨を稼ぐというモデルへ転換をするべきだ。さらなる技術の強化にむけ、海外からヒト、モノ、カネを調達していくことが、日本が生き残る唯一の道ではないか。特に、民間レベルにおけるイノベーションは不可欠だ。

 

 

実際に、イノベーションによる市場創造が期待できる領域では、例えば、100年に一度の大転換と言われる電気自動車(EV)がある。日本の自動車メーカーが中長期の視座に立ち、環境への変化に応じて、各社が有する世界最高水準の技術や知識、データの再構築や再配置、そして再利用をダイナミックにデザインすることは不可欠といえよう。

 

これに先立ち、トヨタ自動車〈7203〉は2017年9月28日、マツダ〈7261〉、デンソー〈6902〉と電気自動車(EV)開発のための新会社を設立することを明らかにした。EVの基本構想に関する技術を共同で開発し、各社の強みを持ち寄ることで開発手法そのものを見直すという。

 

仮想通貨ビジネスで「金融立国」を目指せる余地も

また、個人金融資産が潤沢にある日本の特徴を生かし、金融分野の規制緩和などを仕掛けることで、金融で稼ぐ国(金融立国)を目指せる余地がある。

 

例えば、仮想通貨領域。DMM.comやGMOインターネット〈9449〉によるマイニング事業への参画や、テックビューロのICO(Initial Coin Offering)プラットフォームの「COMSA」などが発表されているが、仮想通貨ビジネスは日本が世界を牽引するチャンスがある数少ない領域である。

 

こうした新しい領域にチャレンジする企業が世界を目指すことで、海外の投資家より外貨を獲得することが可能になる。

 

さらに、先進国としてはいち早く少子高齢化に直面する日本の社会課題を生かし、未知の市場でビジネスチャンスを最大に活かすことも可能だ。

 

野口悠紀雄氏著書『1500万人の働き手が消える2040年問題、労働力減少と財政破綻で日本は崩壊する』によると、2040年の日本は少子高齢化に伴い、4人に1人が医療従事者になるという。このため、労働力確保のために介護従事者に外国人の参入や、介護産業を成り立たせるためには、財源を確保する必要があると警告している。

 

このような課題解決に向けた介護や福祉分野のイノベーションを積極的に推進し、そこに日本の強みであるハードウェア分野のロボットを介護分野向けに開発および導入することで、新たなビジネスモデルの先駆者を目指すのは野心的で興味深い。

 

ただ現状、紹介できる新興ビジネスの実例が少ないことに日本企業の危機感のなさが表れている。

 

私たちフィスコが考えた日本の将来シナリオは4つだ。ベースシナリオは「ゆでガエル」。ついで「格差社会」「シェアリング」「黄金期」である。

 

第4次産業革命の波にのり、日本が成長路線へ回帰するには、「起きるか起きないかわからない」未来を複数描き、まさに今、想定される未来に向けて着実に一手を打ちつつ、不確実な時代に対応できる「戦略」を磨き、挑戦することが鍵になるのではないか。

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