定年退職後、夫婦で過ごす時間が増えることを楽しみにしている人もいるでしょう。しかし、一緒に過ごす時間が増えることが、必ずしも夫婦関係にとってプラスになるとは限りません。総務省「令和3年社会生活基本調査」によると、家事関連時間は男性が1日平均51分、女性が3時間24分と、大きな開きがあります。夫の退職後、家事の負担は変わらないまま、一人の時間まで失った65歳の女性。ある日の買い物をきっかけに、長年連れ添った夫との離婚を考え始めました。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したものです。
邪魔なんだけど!スーパーで妻の後ろをただついて歩く〈年金月29万円〉67歳定年夫…65歳妻が離婚を考え始めたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

定年退職後、妻の買い物についてくる夫

神奈川県内で暮らすカズエさん(65歳・仮名)は、夫のヒデオさん(67歳・仮名)と2人暮らしです。ヒデオさんは大手メーカーに勤め、65歳で退職。カズエさんも長年会社員として働き、60歳で定年を迎えました。現在は週3日、近所の事務所でパートとして働いています。

 

夫婦の年金収入は月約29万円。カズエさんのパート収入は月8万円ほどです。住宅ローンはすでに完済し、預貯金などの金融資産も約3,500万円あります。経済的には比較的安定した老後を送っています。ところが、ヒデオさんが退職してから、カズエさんは以前とは違うストレスを感じるようになりました。

 

「夫がどこにでもついてくるようになったんです。特に困っているのがスーパーでの買い物ですね」

 

現役時代のヒデオさんは帰宅が遅く、休日も趣味のゴルフなどで外出することが多かったといいます。買い物はカズエさんが一人で済ませるのが習慣でした。ところが退職後は、カズエさんがスーパーに行こうとすると「俺も行く」と言うようになったのです。

 

「最初は別に構わないと思っていたんです。でも、買い物を手伝うわけじゃないんですよ。私の後ろをただぼーっとついて歩くだけなんです」

 

カズエさんが献立を考えながら商品を選んでいても、ヒデオさんは特に何もしません。買い物かごを持つこともほとんどなく、妻が移動すれば自分も移動するだけ。

 

「自分が食べたいものを探すわけでもないし、夕食の献立を提案するわけでもない。ただ私の後ろに立っているんです。正直、何のためについてくるのかわからなくて」

「もうついてこないで!」スーパーでの出来事

ある日、いつものように夫婦でスーパーを訪れたときのことです。カズエさんが野菜売り場で商品を選んでいると、背後から大きな舌打ちが聞こえました。振り返ると、ヒデオさんが通路の真ん中に立っており、買い物客の邪魔になっていたのです。ほかの客は明らかに迷惑そうな表情をしていましたが、ヒデオさんは気づいていない様子でした。

 

「思わず『ちょっと、邪魔になってるよ』と言ったんです。そしたら夫は『ああ』と言って少し横にずれただけ。それでまた私の後ろについてくるんですよ」

 

その瞬間、カズエさんはこれまでの不満が抑えられなくなったといいます。

 

「もうついてこないで! 一人で買い物くらいさせてよ」

 

ヒデオさんは驚いた表情を浮かべ、「一緒に買い物に来ただけなのに、そんなに怒ることないだろう」と不機嫌になりました。

 

「夫にしてみれば、夫婦で仲良く買い物をしているつもりだったんでしょうね。でも私にとって買い物は家事なんです。夕飯の献立を考えて、冷蔵庫の中身や予算も確認して、必要なものを買う。夫はそれを全部私に任せたまま、ただついてくるだけなんですよ」

 

カズエさんは、パートの帰りに買い物を済ませることもできます。わざわざ夫と一緒に出かける必要もありません。

 

「買い物くらい、一人で気楽にさせてほしいんです」