子どもの将来を願い、教育費を惜しまない親は多くいます。しかし「子の成功=老後の安泰」と信じ込むと、思わぬ落とし穴に直面することもあります。優秀な愛息に老後を託そうとした父親が、久しぶりの帰省で突きつけられた予想外の宣告とは何だったのか。ある家族の事例から、親自身の老後生活と教育投資の現実を考えます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「息子は東大なので安心です」〈年金月10万円〉老後をエリートの愛息に託した65歳父、1年ぶりの帰省で告げられた「衝撃のひと言」 ※写真はイメージです/PIXTA

1年ぶりの帰省、息子に就職後のことを聞いたら…

大学進学後、息子は学業やアルバイトなどで忙しく、帰省する機会が減っていました。浩さんが息子と顔を合わせるのは、年に一度。電話やメッセージのやり取りも、以前より少なくなっていました。

 

そして、約1年ぶりに大学3年生になった息子が帰省した日。食事をしながら、浩さんは何気なく将来の話を切り出します。

 

「卒業したら、東京で就職するんだろう。仕事が落ち着いたら、こっちにも戻ってきてくれよ。お母さんも年を取っていくし、これからは少し頼りにしたいと思っているんだ」

 

息子は少し考えた後、こう答えました。

 

「お父さん、俺、就職するつもりないよ。卒業したら、ベンチャーを立ち上げるつもりなんだ」

「べっ、べんちゃー?」

 

話を聞くと、卒業後は、大学の同級生数人で起業する、今はその準備を進めているといいます。

 

「そんな失敗したら、どうするんだ?」

「成功するか、失敗するか、最初から分かっていることなんてないだろう。もちろん失敗するつもりで起業するわけじゃないけど」

 

このような将来を描いているなか、親の老後のことなど考えられるはずがありません。浩さんは「どれだけお前にお金をかけたと思っているんだ!」と、口から出かかったものの、グッと抑えたといいます。

 

「私も一生に一度はと、飲食店に挑戦をしました。それなのに、子どもの挑戦を反対できるわけがありません」

 

現在、浩さん夫婦の年金収入は月約20万円。住宅費や食費、光熱費などを考えると、決して余裕のある暮らしではありません。これから医療費や介護費用が増える可能性もあります。教育=投資とはいうものの、親の老後が安泰になるかは別問題。むしろ、無関係と考えておいたほうがいいでしょう。