老後の生活水準を左右するのは、年金額の多寡だけではありません。同じ月15万円の受給額でありながら、暖房代を切り詰める人と、心豊かに外食を楽しむ人に分かれるのはなぜでしょうか。明暗を分けたのは、退職後の「支出」との向き合い方でした。老後破綻を防ぎ、ゆとりある暮らしを維持するための家計防衛策を考えます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「40年も働いた結果がこれか」電気代をケチって寒さに耐える71歳と、週1で寿司を楽しむ71歳…年金「月15万円」生活、明暗を分けた決定的な差 ※写真はイメージです/PIXTA

固定費を見直した71歳男性、同じ年金額でも暮らしに余裕

一方、高橋さんと同じ71歳で、月15万円台の厚生年金を受け取る小林清さん(仮名)は、対照的な生活を送っています。

 

「今の暮らしには満足していますよ。毎日ぜいたくができるわけではありませんけど、週に一度、近所の寿司屋でランチを食べるのが楽しみなんです」

 

小林さんは千葉県内の中古マンションで一人暮らしをしています。60歳で退職した際、まず考えたのが住まいと車のことでした。長年暮らしてきた郊外の戸建ては、夫婦2人で住むには広すぎると感じていたからです。

 

そこで戸建てを売却し、その資金で駅に近い中古マンションを一括購入。あわせて自家用車も手放しました。

 

「家は広ければいいというものでもないですからね。掃除も大変でしたし、庭の手入れもありました。車だって、乗らなくてもお金はかかります。退職したら、そういうものを一度整理しようと思っていました」

 

現在の住居費は、管理費や修繕積立金などを合わせて月数万円。通信費などを含めた固定的な支出も月7万円程度に収まっています。

 

食費や光熱費などを含めた毎月の支出は約12万5,000円。年金収入が月15万円台のため、毎月2万5,000円ほどを手元に残せています。

 

もちろん、小林さんにも予想外の出費はあります。家電の買い替えや医療費など、まとまったお金が必要になることもあるため、毎月の余剰分をすべて使うわけではありません。

 

それでも、週に一度の寿司ランチを楽しむ余裕はあります。

 

「年金が入ったら、まず生活に必要なお金を確保します。残った分を貯蓄に回して、余裕があるときに好きなものを食べる。そんな感じですね。以前の家に住み続けて、車も持っていたら、今の生活は難しかったと思います」

 

小林さんは市民農園で野菜を育てたり、図書館で本を借りたりしながら過ごしています。お金をあまりかけなくても楽しめることを見つけ、退職後の暮らしを組み立ててきました。

 

対照的に、高橋さんは今も広い戸建てと自家用車を維持しています。住まいや車を手放すことには抵抗があり、生活を変える決断を先送りにしてきました。

 

「退職金が振り込まれたとき、1,500万円という大金を前に気が大きくなってしまった。年金も毎月入ってくるし、これまでと同じように暮らせるだろうって。でも、あっという間でしたね。もっと早く考えておけばよかった」

 

高橋さんは、これから車を手放すことや住まいの見直しも考えなければならないと話します。ただ、長年暮らしてきた家をどうするか、簡単には答えが出ません。

 

同じ71歳で、年金額も大きく変わらない2人。それでも、一方は暖房をつけることをためらい、もう一方は週に一度の外食を楽しんでいます。

 

老後の生活では、年金額だけでなく、住居費や車の維持費など、毎月の支出をどこまで抑えられるかも重要になります。退職金があるからと安心して現役時代の暮らしを続けるのではなく、収入が変わるタイミングで生活全体を見直すことが、その後の暮らしを大きく左右するのです。