老後の生活水準を左右するのは、年金額の多寡だけではありません。同じ月15万円の受給額でありながら、暖房代を切り詰める人と、心豊かに外食を楽しむ人に分かれるのはなぜでしょうか。明暗を分けたのは、退職後の「支出」との向き合い方でした。老後破綻を防ぎ、ゆとりある暮らしを維持するための家計防衛策を考えます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「40年も働いた結果がこれか」電気代をケチって寒さに耐える71歳と、週1で寿司を楽しむ71歳…年金「月15万円」生活、明暗を分けた決定的な差 ※写真はイメージです/PIXTA

年金平均月15万円だが…退職金1,500万円がほぼ底をついた

11月に入り、肌寒さが増すなか、厚手のフリースを着込む高橋茂さん(71歳・仮名)。ひんやりとした木造の一戸建て、エアコンの暖房はつけていません。電気代が気になるからです。

 

「退職金は1,500万円ほどありました。それが今じゃ、暖房をつけるのもためらう暮らしです。まさか、こんなことになるとは思いませんでした」

 

高橋さんが受け取る年金は月額約15万2,000円。

 

厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金保険(第1号)受給権者の平均年金月額は15万289円。男性が16万9,967円、女性は11万1,413円です。高橋さんの受給額は、男性平均を少し下回る水準です。

 

高校を卒業したのち、地元の会社に就職。40年近く勤めを続け、定年退職時には約1,500万円の退職金を受け取りました。老後資金に困るような状況ではないと思っていたといいます。

 

ところが、現在の預金残高は100万円台にとどまっています。

 

原因の一つは、現役時代と同じ感覚でお金を使い続けたことでした。長男が住宅を購入した際には、親として力になってやりたいと500万円を援助。長年乗り続けてきた大型セダンも、退職後すぐには手放しませんでした。さらに、築35年の自宅では外壁や水回りの補修が必要になり、そのたびにまとまったお金が出ていきました。

 

年金だけでは足りない分を退職金から補う生活が続き、気がつけば残高は大きく減っていたのです。現在の支出は、固定資産税や車の維持費、光熱費、保険料などで月約12万円。年金からこれらを差し引くと、食費や医療費などに使えるお金は3万円余りしか残りません。

 

長年使っている冷蔵庫は異音がするようになりましたが、まだ冷えているからと買い替えを先延ばしにしています。突然壊れたらどうしようという不安も抱えています。

 

「息子に援助した500万円も、あの車も……。今になって考えれば、もう少し使い方を考えればよかったんでしょうね」

 

息子への援助を後悔しているわけではないといいます。ただ、退職後の生活にどれほどお金が必要になるのか、当時は具体的に考えていなかったことが悔やまれます。