恰幅がよく、人のよさそうな老紳士。連れていたのは、かわいい小型犬2匹でした。ところが4年後、退去した3階建て4LDKの戸建て住宅は糞尿まみれ。原状回復費用84万円を請求すると、返ってきたのは「敷金10万円は放棄するので払いません」という言葉でした。裁判では48万円の支払いを命じる勝訴判決を獲得しましたが、回収は難航。大家歴25年の現役CFPが、裁判から強制執行までの実体験を紹介します。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「うわっ……!」人のよさそうな70代男性の退去後、糞尿まみれの部屋に大家が絶叫…裁判で原状回復費用48万円の請求を勝ち取った大家を待ち受けた〈まさかの結末〉【現役大家CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

強制執行も不調。さらに債権回収会社が破産!

判決が出ても、相手が支払わなければお金は戻ってきません。私は強制執行に進みましたが、回収は不調に終わりました。

 

そこで、債権回収会社に回収を委ねました。ところが、2025年には、その債権回収会社まで破産してしまったのです。まさか、回収を依頼した会社まで破産するとは思いませんでした(笑)。


今回の費用と回収額を整理すると、次のようになります。

 

項目 金額
原状回復費用 84万円
残置物撤去費用  5万円
保証会社からの回収 ▲30万円
保険金 ▲5万円
敷金充当 ▲10万円
最終的な実質負担 44万円

 

判決で認められた48万円は、結局回収できませんでした。


裁判で勝つことと、お金を回収することは別問題です。

 

相手に差し押さえられる財産がなければ、勝訴判決があっても回収は難しくなります。

44万円の持ち出し。でも家賃は1万円アップ!

今回の裁判で実感したのは、原状回復費用の請求について、裁判所は大家側にも厳しいということです。室内がどれだけひどい状態でも、請求の根拠を具体的に示さなければなりません。

 

一方、弁護士に依頼せず、自分で裁判を進めることもできます。もちろん、時間と手間はかかります。


今回、最終的には44万円の負担が残りました。それでも、私は裁判をやってよかったと思っています。交渉に応じない相手に対して、契約と証拠に基づいて請求し、判決を取得する。その後の強制執行まで自分で経験できました。


そして、もう一つ。


考えようによっては、3階建て4LDKの戸建てを実質44万円の負担で原状回復できたともいえます。


しかも、次の入居者はすぐに決まりました。


家賃は従来の10万円から1万円アップして、月額11万円。年間12万円の増収です。単純計算では、約3年8か月分の家賃増額が44万円に相当します。


もちろん、44万円の持ち出しがなくなるわけではありません。


それでも、そう考えて自分を納得させています(笑)。

 

 

竹下 昌成

竹下FP事務所 代表

日本FP協会認定CFP・TAC講師