(※写真はイメージです/PIXTA)
人のよさそうな老紳士と、かわいい小型犬2匹
私は30歳から不動産投資を始め、現在は約50室を所有しています。25年間の大家業では、さまざまな入居者トラブルを経験してきました。
今回紹介するのは、私が所有する3階建て4LDKの戸建て住宅に入居していた70代男性の話です。
入居時の写真には、恰幅がよく、人のよさそうな男性の姿が写っていました。一緒にいたのは、かわいい小型の室内犬2匹。特に問題が起きそうな印象はありませんでした。
ところが、約4年後の2022年12月に退去。翌月の2023年1月、室内の状態が判明して驚きました。
家中がペットの糞尿まみれだったのです。
階段には糞がこびりつき、和室の畳には尿のシミ。トイレは便器の中だけでなく、床にも糞尿が散乱していました。もはやペットのものなのか、人間のものなのかも分からない状態です。さらに、室内には安全カミソリが約30本も散乱していました。接客業をしていたので、剃髪用だったのかもしれません。足踏みミシンやウォーターサーバーなどの残置物もありました。
この物件はペットの飼育を認めていましたが、賃貸借契約にはペット特約があり、原状回復費用は入居者負担と定めていました。原状回復費用は84万円。残置物の撤去費用も別途5万円かかりました。
当然、私は費用の負担を求めました。
「敷金10万円は放棄するので払いません」
男性から返ってきた言葉は、驚くものでした。
「敷金10万円は放棄するので払いません」
原状回復費用84万円に対し、敷金10万円で終わらせようというわけです。
ペット特約もあり、室内の状況も明らかです。それでも追加の支払いには応じませんでした。男性は高齢で、退職後に転居していました。裁判にあたって調べたところ前住所で住宅ローンに関する差し押さえ歴もあり、回収には不安がありました。
しかし、私は泣き寝入りするつもりはありませんでした。
2023年3月、原状回復費用の支払いを求めて、自分で裁判を起こしました。
裁判では、修繕範囲や金額の妥当性について、裁判所から細かく説明を求められました。写真や見積書があっても、それだけで請求額の全額が認められるわけではありません。通常損耗や経年劣化と、入居者の責任による損傷を区別する必要があります。
ペット特約があっても、具体的な損傷や費用の根拠を示すことが重要です。
そして2023年10月、判決が出ました。
48万円の支払いを命じる勝訴判決です。
84万円の全額ではありませんでしたが、男性の負担が裁判で認められました。
しかし、問題はここからでした。