西日本某所に所有していた戸建て住宅の売却を、地元の不動産会社に依頼しました。2,100万円と査定したのは社長本人。しかし、真冬の現地確認には防寒着もスリッパもメジャーも持たず、寒さで震えていました。さらに「火災保険は代理店に丸投げ」「社員が対応したので詳細は不明」といった発言も。最終的な売却価格は1,680万円でした。問題は420万円の値下げそのものではありません。現役大家CFPの竹下昌成氏が、実際の取引から営業や仕事の基本を考えます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「ベンツで来たのに、真冬に防寒具なしで震えている…」不動産会社の社長に2,100万円と査定された家が、1,680万円の大幅値下げ。すべてを丸投げしてきた社長の〈呆れた言い訳〉【現役大家CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

真冬の山間部にベンツで現れた社長

私が西日本某所の山間部に所有していた戸建て住宅の売却を、地元の不動産会社にお願いしたときの話です。

 

真冬の現地確認で、不動産会社の社長が寒さに震えていました。防寒着はなし。室内で履くスリッパもなし。物件を確認するためのメジャーも持っていません。一方、乗ってきたのはピカピカのメルセデス・ベンツのSUV。ベルトにはルイ・ヴィトンのバックルが光っています。

 

「いやいや、そっちの準備は万全なのに、現場の準備は……(笑)」

 

もちろん、どんなクルマに乗ろうが、何を身につけようが本人の自由です。ただ、真冬の山間部にある空き家を確認するなら、寒いことくらい予想できるでしょう。スリッパやメジャーも、不動産会社なら用意しておきたい道具です。

 

しかも、今回は営業担当者ではなく、社長本人です。この社長、決して横柄な人ではありません。むしろ腰が低く、穏やかで、とても感じの良い方でした。だからこそ、仕事の進め方とのギャップが気になったのです。

 

私は銀行、リース会社、住宅メーカーで営業を経験してきました。不動産投資も30歳から続けています。営業の第一印象は、話し方や身だしなみだけで決まるものではありません。現場に何を持ってくるか、どんな準備をしているか。そんなところにも仕事に対する姿勢が表れます。

自分で2,100万円と査定しておきながら…「この地域は止まっている」

私が売却を依頼したのは、築15年の木造2階建て住宅です。ハウスメーカー施工の6LDK。土地は約358㎡、建物は約173㎡。地方の戸建てとしては、かなり大きな住宅でした。

 

この住宅の査定額は2,100万円。査定したのは社長本人です。

 

その査定をもとに、2024年12月から売却を開始しました。しかし、売却活動は難航します。

 

物件情報のお気に入り登録は多いのに問い合わせがない。購入希望者が現れても住宅ローンの審査に通らない。契約直前で話が流れる。オープンハウスを開催しても来場者はゼロ。そんななか、社長からは、

 

「値段じゃない。この地域は止まっている」

 

という話もありました。

 

「いやいや、2,100万円と査定したのは社長でしょう(笑)」

 

不動産の査定は、売却価格を保証するものではありません。市場の反応によって価格を見直す必要があるのは当然です。

 

しかし、自分が査定した価格で売れないなら、まず査定の前提や販売方法を検証するべきでしょう。価格が高いのか。広告が届いていないのか。購入希望者の条件に合っていないのか。

 

例えば、自治体の移住者向けサイトへの掲載を検討する。近隣住民への告知を工夫する。広告の対象を変える。実際、最終的な問い合わせは町内や近隣からが中心でした。もっと早く、近隣の人に情報を届ける方法を考えられなかったのか――。

 

結果として、この住宅は1,680万円で売却しました。社長自身の査定額から420万円、率にして20%の値下げです。

 

もちろん、420万円の差額がそのまま仲介会社の責任だと言うつもりはありません。私が気になったのは、売れない状況を変えるための提案がほとんどなかったことです。