長年連れ添った夫婦の離婚。人生における大きな決断でしょう。しかし、なかには熟年離婚後にもう一度結婚したくなる人も……。事例を見ていきます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したものです。
「独身サイコー!」熟年離婚を切り出した60歳定年夫、30年ぶりの自由を満喫も…2年後に結婚相談所へ走ったワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

結婚相談所へ駆け込むと…

回復して出勤すると、学さんはたまらず、同じく定年再雇用の職場の先輩に「一人暮らしで病気になると、本当に死ぬかと思いましたよ」と弱音を漏らしました。すると、その先輩からは意外な言葉が返ってきたのです。

 

「男の気楽な一人暮らしなんて体が動くうちだけだぞ。俺の友人も離婚して数年後に体を壊して懲りてね。1年前にシニア向けの結婚相談所にいって、同年代のバツイチの女性と再婚したんだ。いま、幸せそうだよ」

 

その話に、学さんの心は大きく揺れ動きました。

 

元妻との復縁が頭をよぎり、長女に電話で探りを入れてみたものの、「お母さんはいま、趣味や友達との旅行で楽しそうに暮らしてるよ。うちの子の面倒もみてくれるし。『お父さんのお世話をしなくてよくなって肩の荷が下りた』って(笑)」といわれ、戻る道は完全に断たれていました。

 

元妻への未練が断ち切られた学さんの脳裏に浮かんだのは、「スペックへの自負」でした。

 

「自分には退職金があり、貯蓄も年金もある。週3日とはいえ現役で働いていて収入も途切れていない。同世代のなかでは条件がいいはずだ。入会金や月会費をしっかり払う結婚相談所なら、家庭的で身の回りのことを気遣ってくれる女性がすぐに見つかるのではないか」

 

そう考えた学さんは、大手結婚相談所の無料カウンセリングへと向かいました。

 

しかし、そこでアドバイザーから告げられたのは、シニア男性が直面する厳しい現実でした。

 

「お話を伺う限り、学さんが求めていらっしゃるのは『パートナー』ではなく、身の回りの家事や看病をしてくれる『無償のケア要員』に見えてしまいます。同世代の女性たちから、そうした役割を期待するシニア男性は最も敬遠されますよ」

 

手厳しい指摘に、学さんは言葉を失いました。自由を求めて自ら家族を手放した代償の重さに、いまさらながら打ちのめされているそうです。

熟年単身男性の現実

厚生労働省『令和7年人口動態統計』によると、2025年の離婚件数は17万9,068組です。このうち、同居期間20年以上の離婚は3万9,886組。長い年月を連れ添っても、配偶者の定年退職や子の独立を機に離婚を選択する夫婦は、決して少なくありません。

 

離婚後、一人暮らしとなると、どのように生活が変化するのでしょうか。ここには、男女間での差が存在します。

 

内閣府『令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査』によると、一人暮らしの高齢者において「日常的な会話の頻度が2〜3日に1回以下」と回答した割合は、女性の11.9%に対し、男性は28.8%にのぼります。

 

また、同調査を引用した内閣府『令和6年版 高齢社会白書』でも、頼れる人の有無や地域活動への参加率において、単身男性は同年代の女性に比べて著しく低い水準にとどまっている実態が報告されています。地域社会や親族ネットワークとの結びつきを長年配偶者に依存してきた男性の場合、家庭という防壁を失った途端に地域で孤立し、社会的な孤立無援状態に陥りやすい傾向があるようです。

 

また、生活習慣の乱れによる健康リスクも深刻です。家事労働や食事管理を外食に頼らざるを得ない結果、生活習慣病の発症や重症化を招きやすく、病気や要介護状態に陥った際のセーフティネットが脆弱である点も単身高齢男性の大きな課題です。

 

高齢期における単身生活を維持するためには、マネープランだけでなく、自活するための最低限の家事能力と健康管理スキルを身につけること、そして家族以外の地域コミュニティや友人関係を自ら主体的に築いておくことが重要です。自由の獲得と引き換えに生じる生活維持コストや孤立リスクを見極めないまま下した決断は、老後の生活設計が大きく崩れてしまう要因となりかねません。

 

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