(※写真はイメージです/PIXTA)
「火災保険は代理店に丸投げ」「社員が対応したので…」
売却活動では、購入希望者の住宅ローンや火災保険など、さまざまな問題が出てきます。今回も、火災保険料の高さが問題になりました。そこで社長から出てきた言葉が、
「火災保険は詳しくありません、代理店に丸投げしてて……」でした。
「いやいや、丸投げって……(笑)」
不動産会社の社長が、火災保険の専門家である必要はありません。専門の代理店に任せること自体も問題ないでしょう。しかし、保険料が高いことが売却の障害になっているなら、代理店に確認して、補償内容や条件を見直せないか検討することはできるはずです。専門家に任せることと、任せきりにして自分では把握しないことは違います。
もう一つ、気になった発言があります。
「社員が対応したので、詳細はわかりません」
いやいや、あなた社長でしょう(笑)。
社内の誰が対応したかは、お客さんには関係ありません。わからないなら社員に確認すればいい。その結果を報告すれば済む話です。しかも、社長が社員に確認することは、社員教育にもつながります。
「どういう問い合わせだった?」
「なぜ契約に至らなかった?」
「次はどう対応する?」
こうしたやり取りを重ねれば、社員の経験も蓄積され、会社全体の営業力も高まるはずです。売却活動がうまくいっていないときほど、報告は重要です。
「問い合わせはありませんでしたが、広告の閲覧状況はこうなっています」
「オープンハウスの来場者はゼロでした。次は告知方法を変えてみます」
そんな報告があれば、売主も状況を把握できます。反対に、連絡がないまま時間だけが過ぎると、「いったい何をしているんだろう?」と思ってしまいます。
知らないことが問題なのではありません。知らないことを確認し、次の行動につなげるかどうかです。
売れなかったことより、何をしたかが問題
不動産の売主は、売却が長引けば固定資産税や維持管理費などを負担し続けます。価格を下げれば、受け取る金額も減ります。一方、仲介会社は、通常では売主と同じ価格変動リスクを負いません。だからこそ、売主の立場に立った提案や報告を期待するわけです。
今回の社長も、人柄は良い方でした。ただ、仕事で信頼されるには人柄の良さだけでは足りません。現場に必要なものを準備する。相手に合った連絡手段を選ぶ。確認したことを報告する。うまくいかなければ、次の方法を考える。特別な資格や才能がなくても、できることばかりです。
私はこれまで、たくさんの営業担当者や経営者と仕事をしてきました。そのなかで、また仕事をしたいと思うのは、結果が出なかったときにも、きちんと考え、動いてくれる人です。
成果が出なかったことと、何も工夫しなかったこととは違います。
営業職に限らず、仕事を始めたばかりの若い方にも、ぜひ考えてほしいと思います。今回の社長には、少々厳しい話になりましたが、せっかくのご縁です。今後の仕事に生かしてもらえればうれしいですね。
そして、真冬の山間部で寒さに震えていた社長。次に会うときは、ぜひ防寒着とスリッパ、メジャーを持ってきてほしいと思います。あの大きなベンツなら、それくらい余裕で積めるでしょう(笑)。
竹下 昌成
竹下FP事務所 代表
日本FP協会認定CFP・TAC講師