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老人ホーム入居から半年、祖母のひと言に固まった10歳の孫
「今度の土曜日、おばあちゃんに会いに行くよ」
10歳の大翔くん(仮名)は、祖母の和子さん(87歳・仮名)が老人ホームに入居してから、母親の真由美さん(60歳・仮名)と一緒に面会に通っていました。和子さんの年金収入は月14万円ほど。認知機能の低下も見られるようになったため、家族で相談して入居を決めたのは半年前のことです。
選んだのは、年金額を踏まえて無理なく入居できるホームで、真由美さんの自宅からは車で1時間ほどの距離にありました。
大翔くんは根っからのおばあちゃん子。面会では学校であったことを話し、和子さんは「そうなの、それでどうしたの」と楽しそうに聞いてくれました。帰り際には「また来てね」と手を振る祖母に、大翔くんも「また来るね」と答えていました。
ところが、入居後、和子さんは少しずつ同じ話を繰り返すようになりました。大翔くんの学校の話を聞いても、すぐに内容を忘れてしまうことが増えていきます。
真由美さんは、母の変化を息子に説明していました。「おばあちゃん、病気のせいで忘れちゃうことがあるんだよ。大翔のことが嫌いになったわけじゃないからね」。大翔くんは「うん」と答え、いつも通り面会に来ていました。
入居から6ヵ月ほどたったある日、いつものように祖母に面会に来た大翔くん。その日は、1ヵ月ぶりの面会でした。すると和子さんは不思議そうな顔を向けました。
「あなたは、どなた?」
大翔くんは笑顔のまま、動きを止めました。「僕だよ、大翔だよ」と名乗っても、和子さんは困ったように首をかしげます。
「ごめんなさいね。どこかで会ったかしら」
真由美さんが「お母さん、孫の大翔だよ」と伝えても、和子さんは思い出せない様子でした。大翔くんは持ってきた学校の絵を差し出すこともできず、母親のそばでうつむいていたそうです。