定年後、夫婦で過ごす時間が増えると、現役時代には気づかなかった問題が表面化することがあります。仕事を終え、ようやく自由な時間を手に入れた夫。一方で、家事や身の回りの世話を担ってきた妻にも、自分の時間を楽しみたいという思いがあります。夫婦で温泉旅行に出かけるような何気ない場面にも、定年後の暮らしを考えるヒントが隠れています。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「私はあなたの母親じゃない!」〈退職金1,800万円〉〈年金月18万円〉66歳夫、定年後の温泉旅行で妻から三行半を突きつけられたワケ ※写真はイメージです/PIXTA

「これからも、私が全部やるの?」…定年後に妻が突きつけた現実

その夜、久美子さんは、これまで口に出せずにいた思いを夫に伝えました。

 

「あなたは、私が何でもやってくれると思っているでしょう。旅行の手配も、持ち物の準備も、旅先での予定の確認も、全部私。これから毎日一緒にいるようになっても、ずっと私があなたの世話をするの?」

 

久美子さんは、夫と旅行に行くこと自体が嫌だったわけではありません。むしろ、二人で出かける時間を楽しみにしていました。ただ、夫が旅行を楽しむための段取りを自分だけが担い、現地でも夫の面倒を見続けるのでは、妻自身が休まる時間はありません。

 

現役時代は、浩さんが仕事に出ている間、久美子さんにも自分の時間がありました。ところが定年後は、夫が家にいる時間が増え、食事の用意や日々の細かな用事を頼まれることも多くなりました。夫にとっては、退職後に手に入れた自由な時間です。しかし久美子さんにとっては、家事や夫の世話が続く毎日だったのです。

 

「私、このままだと、あなたと一緒に暮らしていく自信がない。今後のこと、しっかりと考えたい」

 

楽しみにしていた温泉旅行の最中、浩さんは、事実上、妻から三行半を突きつけられたのです。

 

「定年後は、夫婦でゆっくり過ごせると思っていました。でも、こんな形で危機を迎えるとは思ってもみませんでした」

 

温泉旅行後、浩さんは関係修復に躍起になっているといいます。

 

国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』(2022年)によると、妻の1日の平均家事時間は平日4時間7分であるのに対し、夫はわずか47分にとどまります。さらに「献立を考える」(88.9%)や「日用品の在庫把握」(86.0%)といった“見えない家事”の約9割を妻が担っているのが実情です。

 

同調査では「夫も家事を平等に分担すべき」と答えた妻が86.7%に達する一方、50代の妻の48.1%が夫の家事に不満を抱いています。定年後も夫の「頼りきり」な姿勢が続けば、妻の長年の負担が限界を迎え、三行半を突きつけられかねないようです。