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「これからも、私が全部やるの?」…定年後に妻が突きつけた現実
その夜、久美子さんは、これまで口に出せずにいた思いを夫に伝えました。
「あなたは、私が何でもやってくれると思っているでしょう。旅行の手配も、持ち物の準備も、旅先での予定の確認も、全部私。これから毎日一緒にいるようになっても、ずっと私があなたの世話をするの?」
久美子さんは、夫と旅行に行くこと自体が嫌だったわけではありません。むしろ、二人で出かける時間を楽しみにしていました。ただ、夫が旅行を楽しむための段取りを自分だけが担い、現地でも夫の面倒を見続けるのでは、妻自身が休まる時間はありません。
現役時代は、浩さんが仕事に出ている間、久美子さんにも自分の時間がありました。ところが定年後は、夫が家にいる時間が増え、食事の用意や日々の細かな用事を頼まれることも多くなりました。夫にとっては、退職後に手に入れた自由な時間です。しかし久美子さんにとっては、家事や夫の世話が続く毎日だったのです。
「私、このままだと、あなたと一緒に暮らしていく自信がない。今後のこと、しっかりと考えたい」
楽しみにしていた温泉旅行の最中、浩さんは、事実上、妻から三行半を突きつけられたのです。
「定年後は、夫婦でゆっくり過ごせると思っていました。でも、こんな形で危機を迎えるとは思ってもみませんでした」
温泉旅行後、浩さんは関係修復に躍起になっているといいます。
国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』(2022年)によると、妻の1日の平均家事時間は平日4時間7分であるのに対し、夫はわずか47分にとどまります。さらに「献立を考える」(88.9%)や「日用品の在庫把握」(86.0%)といった“見えない家事”の約9割を妻が担っているのが実情です。
同調査では「夫も家事を平等に分担すべき」と答えた妻が86.7%に達する一方、50代の妻の48.1%が夫の家事に不満を抱いています。定年後も夫の「頼りきり」な姿勢が続けば、妻の長年の負担が限界を迎え、三行半を突きつけられかねないようです。