(※写真はイメージです/PIXTA)
「固定電話? もうやめたよ」
東京都内で暮らすナツミさん(45歳・仮名)は、会社員の夫と2人暮らし。実家は地方都市にあり、父親(79歳)と母親(77歳)が暮らしています。両親はともに仕事を引退し、年金と預貯金で生活しています。住宅ローンはすでに完済しており、夫婦の年金収入は月約25万円。大きな支出がなければ、日々の生活に困ることはないといいます。
ある週末、ナツミさんは母親に用事があり、実家の固定電話にかけました。ところが、何度かけてもつながりません。
「最初は電話の故障かなと思いました。でも、両親も高齢なので、何かあったのではないかと心配になって。慌てて父の携帯電話にかけたんです」
すると、父親は普段と変わらない様子で電話に出ました。
「固定電話? ああ、もうやめたよ」
思いがけない返事に、ナツミさんは驚きました。
「えっ、いつ? どうして教えてくれなかったの?」
父親によると、固定電話には営業や勧誘の電話がかかってくることが多く、最近はほとんど使っていなかったそうです。
「毎月お金もかかるし、もう必要ないと思ってね。お母さんとも相談して解約したんだよ」
総務省「家計調査」によると、2025年の65歳以上の夫婦のみの無職世帯の消費支出は、月平均26万3,979円。税金や社会保険料を含めると、支出は月平均29万6,829円に上ります。ナツミさんの両親は、夫婦で月25万円ほどの年金収入があり、住宅ローンも完済しています。それでも、今後の医療費や介護費用などを考えると、無駄な支出は抑えておきたいところです。
「父は昔から、必要なものにはお金を使うけれど、無駄な出費は嫌う人なんです。固定電話も、使っていないのに基本料金を払い続けるのがもったいなかったんでしょうね」
ナツミさんは、両親が自分たちで家計を見直し、解約を決めたことに驚きました。同時に、せめて電話番号が変わったことくらい教えてほしかったとも思ったそうです。
スマホもネットも使わない「昭和の両親」
ナツミさんには、以前から気になっていたことがありました。それは、両親がデジタル機器をほとんど使わないことです。父親が持っているのは、通話が中心の従来型の携帯電話。母親は携帯電話を持っていません。自宅にインターネット回線はなく、パソコンもスマートフォンも使いません。
「今どきスマホも持っていないなんて、何かあったときに困るんじゃないかと思っていました。病院の予約や行政の手続きも、ネットでできることが増えていますよね」
以前、ナツミさんは両親にスマートフォンをプレゼントしたこともありました。しかし、使い方を教えてもなかなか覚えてもらえず、結局ほとんど使われないままになってしまったそうです。
「せっかく買ったのに、もったいないと思いました。でも、本人たちに使う気がないので、もう諦めました」
銀行の手続きは窓口やATMを利用し、買い物は近所のスーパーや商店で済ませています。ネットショッピングもネット銀行も利用していません。資産運用にも消極的で、預貯金以外の金融商品にはほとんど手を出していません。
「物価も上がっているし、預金だけではもったいないんじゃないかと思って、投資の話をしたこともあります。でも父は『よくわからないものには手を出さない』と言うんです」
ナツミさん自身は、スマートフォンでニュースを読み、買い物をし、銀行口座や証券口座を管理しています。便利なサービスを利用しない両親を見て、時代に取り残されているのではないかと感じていました。
内閣府「令和8年版高齢社会白書」によると、2024年のインターネット利用率は70~74歳で75.3%、75~79歳で62.7%、80歳以上では33.1%でした。高齢者のインターネット利用は広がっていますが、年齢による違いもあります。