(※写真はイメージです/PIXTA)
「今日、妹が泊まりに来るから!」
ミホさんの我慢が限界に達したのは、ある土曜日のことでした。午前中、長女の昼食を準備していると、ショウヘイさんが突然こう言いました。
「今日、妹が泊まりに来るから! 久しぶりだし、みんなでご飯食べようよ」
義妹は32歳で、都内で一人暮らしをしています。ミホさんとも何度か会ったことがあり、関係が悪いわけではありません。しかし、宿泊するという話は初耳でした。
「え、今日? 何時に来るの?」
「夕方かな。明日はみんなで出かけようと思って」
ミホさんは耳を疑いました。来客用の布団はしまったままですし、部屋の片付けも必要です。長女の世話をしながら、義妹を迎える準備までしなければなりません。
「どうして事前に相談してくれなかったの?」
するとショウヘイさんは、不思議そうな顔をしたといいます。
「妹だよ? 家族なんだから、そんなに気を遣わなくていいじゃん」
義妹本人からも、ミホさんには何の連絡もありませんでした。
「夫の実家は昔からそうなんです。義両親も突然遊びに来ることがあるし、家族なんだから遠慮はいらないという考え方。義妹も、泊まりに行く側が事前に確認するという発想がないみたいで」
ショウヘイさんは、夕食にはデリバリーを頼むつもりだったようです。
「ご飯は俺が頼むから、何も準備しなくていいよ!」
その一言で、ミホさんの怒りが爆発しました。
「それ、サプライズじゃなくてマナー違反だから!」
「ご飯を頼めば済む話じゃないでしょ!」
突然声を荒らげたミホさんに、ショウヘイさんは驚いた様子でした。
「何をそんなに怒ってるの? 妹が泊まりに来るだけじゃん」
「その『だけ』が嫌なの。布団を出すのも、片付けるのも全部私でしょ?」
ショウヘイさんは「言ってくれれば手伝うのに」と答えました。しかし、ミホさんはこれまでも繰り返し、準備や片付けを一緒にしてほしいと伝えてきました。
「何度言えばわかるの? どうして毎回、私が頼まなきゃいけないの?」
ショウヘイさんは「せっかく楽しく過ごそうと思ったのに」と不満そうな顔をしました。その言葉を聞き、ミホさんは交際中から積み重なっていた不満をぶつけました。
「自分が楽しいことなら、私も楽しいと思ってるよね。それ、サプライズじゃなくてマナー違反だから!」
さらに、突然のプロポーズについても、ずっと引っかかっていたことを打ち明けました。
「サプライズって卑怯だよ。あのプロポーズだって、みんなの前で断れると思う? 相手が断りにくい状況をつくってるんだよ。相手が嫌だって言ってることは、いくら自分が良いと思っていてもやっちゃダメなんだよ。自分と相手は違う人間だから。それが相手を尊重するってことなんじゃない? 私にとって、ショウヘイのサプライズはただの自己満足なの」
ショウヘイさんは黙り込んでしまいました。結局、その日の義妹の宿泊は断ってもらいました。しかし、ミホさんの気持ちは収まりませんでした。
「義妹にも腹は立ちました。でも、何度言っても夫に伝わらないことが、一番ショックでした」
お金を出すことと、負担を引き受けることは別
今回の一件をきっかけに、ミホさんは離婚という選択肢を考えるようになりました。ショウヘイさんの収入があるおかげで、住宅ローンを返済しながらも貯蓄を続けられています。ただ、ミホさん自身も育休前は年収約500万円を得ていました。復職すれば、再び自分の収入を確保できます。
総務省「令和3年社会生活基本調査」によると、6歳未満の子どもがいる夫婦と子どもの世帯では、夫の家事関連時間は1日平均1時間54分、妻は7時間28分でした。家事や育児に費やす時間には、依然として大きな差があります。
今回のケースでは、ショウヘイさんは家族を喜ばせようと、キャンプ用品や旅行にお金を使ってきました。しかし、ミホさんが求めていたのは、出かける前の相談や、準備・後片付けの分担でした。キャンプ用品を購入したり、食材代を負担したりすることと、子どもの荷物を用意し、帰宅後に洗濯や片付けをすることは別の話です。家計の支出としては見えにくいものの、そこには時間と労力がかかっています。
また、ミホさんは育休中であっても、復職すれば一定の収入を得られる見込みです。離婚すれば経済的な負担は増えるでしょうが、働き続けてきたことが、今後の生活を考えるうえでの選択肢につながっています。
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