(※写真はイメージです/PIXTA)
年金生活で娘一家を養う73歳女性
「私が我慢すれば、娘たちもなんとかやっていけると思っていたんです。でも、もう家族の食卓すら守れなくなっていました」
郊外の古い一戸建てで一人暮らしをしていたトモコさん(73歳)。35歳で離婚して以来、女手一つで娘のユキさん(43歳)を育て上げ、65歳の定年まで勤め上げました。月額約14万円の年金を受け取りながら、質素で穏やかな老後を送るはずでした。
ところが5年前、状況が一変します。トモコさんの家の近くで飲食店を営んでいたユキさんと夫の経営が、コロナ禍で悪化。住宅ローンの返済や生活費に行き詰まった娘夫婦と、高校生になった孫の3人が、トモコさんの実家へ転居してきたのです。
「最初のうちは『お店が立て直せるまでの居候』という約束でした。でも、いつまでたっても娘たちの収入は不安定なまま。気づけば、光熱費や食費のほとんどを私の年金から出すのが当たり前になっていました」
特にトモコさんの家計を直撃したのが、近年の急激な物価高です。育ち盛りで食べ盛りの孫の食費や、値上がりを続ける電気・ガス代により、生活費は同居当初の1.5倍近くに膨張。月14万円の年金だけでは毎月数万円の赤字が出るようになり、手を付けずにいた自身の退職金と貯蓄を切り崩して補填する日々が続きます。
「家族に苦しい顔は見せたくない」と耐えていたトモコさんですが、預金残高の減り方に恐怖を覚え、無料の家計相談窓口でFPに家計診断を依頼することに。そこで提示された試算結果は、トモコさんにとって絶望的なものでした。現在のペースで物価高と赤字補填が続けば、トモコさんの手持ち貯蓄はあと4年で底をつき、77歳で老後破産に陥るという現実です。
ショックを受けた帰り道、トモコさんは学校からの帰宅途中だった孫に合流。「お腹が空いた」という孫を連れ、久しぶりに近くの牛丼チェーン店へ入りました。喜ぶ孫の姿に目を細めたものの、券売機の画面に表示された価格改定の数字を見て、トモコさんの指が止まります。
「大盛」のボタンを押すことができず、トモコさんは孫に声をかけました。
「ごめんね、今日は並盛でもいいかな」
孫は「うん、十分だよ」と笑ってくれます。娘一家への援助が、いよいよ限界を迎えていることを突きつけられた瞬間でした。