定年退職を迎えて急増した自由時間の使い道に悩むシニアは少なくありません。なかにはいままで仕事に向いていた関心の矛先が孫や子世代に向いてしまうことも。事例を見ていきましょう。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したものです。
「孫の運動会、行きたかったな…」年金月18万円・定年退職した65歳祖父、ヒマになったのに娘家族からイベントに呼んでもらえないワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

孫の運動会に呼ばれない理由

「今年は下の子も小学生になったから、運動会を楽しみにしていたんです。でも、娘からは『観覧席に制限があるから』とはぐらかされてしまって」

 

自宅でそうこぼすのは、ヨシキさん(65歳)。今年、長年勤めた会社を完全にリタイアし、現在は月約18万円の年金を受け取りながら妻と2人で暮らしています。

 

ヨシキさんには孫がいますが、現役時代は仕事が忙しく、孫の保育園の行事などには一度も参加したことがありませんでした。ですが63歳で再雇用となり、仕事の負担が軽減されたときのこと。孫であるソウくんは当時、小学校3年生で、運動会があると妻から聞き、初めてのイベント参加に張り切りました。

 

実は娘夫婦は、ヨシキさんの以前のいくつかの「やらかし」から、孫のイベントに呼ぶことを躊躇していました。ソウくんのピアノの発表会に顔を出した際は「うちの孫が一番上手いのに、なぜトリじゃないんだ」と先生に文句をいってしまったのです。サッカーの試合を見に行った際も、審判の判定に「いまのを見逃すな!」と観客席から大声で怒鳴りつけ、コーチにまで「あんな甘い指導じゃ勝てない」と説教を始めるなど、周囲をヒヤヒヤさせる言動が目立っていたのです。

 

それでも「おじいちゃんも運動会は初めてだから」と大目に見てもらい、参加を許されたヨシキさん。しかし、張り切る気持ちを止めることができません。ヨシキさんは若いころから運動神経に自信があり、運動会当日に向けて、週末にソウくんを公園に連れ出しては走り方の特訓をするように……。嫌がるソウくんを外に連れ出しては、家の近所中を走り回らせました。

 

「ずっと走る練習をしてきたんだ、努力の成果を確認しなきゃな」

 

当日、カメラを構える保護者たちに混じり、気合十分でグラウンドを見つめていたヨシキさん。ソウくんの徒競走の出番が迫った直前、並んで待機しているソウくんをわざわざフェンス越しに呼び寄せ、「腕はこう振るんだ! 顎を引け!」と身振り手振りで指導を始めます。

 

出番直前で緊張していたソウくんにとっては迷惑でしかなく、列に並ぶ友達からもからかわれる始末でした。結果は2位。観覧席に戻ってきたヨシキさんは満足げでしたが、娘の耳には信じられない言葉が飛び込んできました。ヨシキさんが、すぐ隣にいた見ず知らずの保護者に聞こえる声で「あの先生の指導では速くならないね。私がもっと教えていたら、絶対に1位になっていたよ」と得意げに話していたのです。

 

運動会が終わり、娘夫婦の自宅に戻ったあとのこと。娘がソウくんに「2位になれてすごかったね、よく頑張ったね」と褒めました。しかし、ソウくんは微妙な表情を浮かべ、小さな声で「全然嬉しくない」と呟きます。

 

この一件以来、娘夫婦は公の場に出る孫のイベント時にはヨシキさんに声を掛けないようにしています。