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「600万円、何とかならない?」息子の頼みに揺れる夫婦
「親父たち、貯金あるだろう? 600万円くらい、何とかならない?」
大輔さんの言葉に、茂さんはすぐには返事ができませんでした。600万円は、夫婦が蓄えてきた預貯金の4分の1に当たります。
「冗談じゃない、大切な老後資金だぞ! お前に貸すためのお金じゃない」
茂さんは思わず声を強めました。息子が困っていることはわかります。しかし、夫婦が長年かけて蓄えてきたお金を、息子の事業のために600万円も出すとなれば話は別です。年金収入は月24万円。預貯金は、これからの生活を支えるために残してきたお金でした。
大輔さんによると、事業の借入金は約800万円。売上が伸び悩むなかで返済を続け、仕入れ先への支払いも重なっていました。事業を続けるにしても、いったん整理するにしても、手元資金が必要だといいます。
「このままじゃ、仕入れ先にも迷惑をかける。何とか立て直したいんだ」
息子の説明を聞きながら、茂さんは考え込みました。会社員として収入があるとはいえ、副業の借金まで親が負担すべきなのか。600万円を渡しても事業が立ち直らず、再び資金を求められる可能性はないのか。気になることは次々に浮かびます。
恵子さんも不安を隠せませんでした。
「私たちだって、これから何があるかわからないのよ。病気や介護にお金が必要になるかもしれないでしょう」
一方で、息子が困っていると知り、簡単には断れない気持ちもありました。親として助けたい。しかし、援助したお金が戻ってこなければ、夫婦自身の生活にも影響します。
茂さん夫婦は、息子の求めに応じるかどうか、すぐには決められませんでした。
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、子や孫の生活費を「負担している」高齢者は全体の25.2%に上ります。一方、現在の貯蓄が老後の備えとして「足りない」と感じている割合は57.1%に達し、61.2%が日常的に預貯金を取り崩して暮らしています。子どもへの金銭支援は親心ですが、自身の老後生活を守るためにも、支援できる金額や条件の慎重な見極めが不可欠です。