職後の生活では、年金収入や貯蓄額に合わせて支出を見直す人もいるでしょう。一方、子どもや孫のためならと、家計からお金を出し続ける人もいます。本人にとっては家族を思っての行動でも、積み重なれば老後資金を圧迫しかねません。夫婦で家計を共有しているつもりでも、互いの知らない支出がある場合もあります。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「このままじゃ金が尽きるぞ!」〈退職金2,800万円〉〈年金月20万円〉68歳元部長が驚愕した「妻の知られざる出費」 ※写真はイメージです/PIXTA

「このままじゃ金が尽きるぞ!」…夫が初めて知った妻の援助額

浩さんは、由美子さんに預貯金の残高が減っていることを伝え、家計について話し合うことにしました。

 

年金が入っているのに、どうしてこんなに貯金が減っているのか。何か大きな出費があったのか――由美子さんは少し迷ったあと、「娘のところも大変なのよ。子どもにかかるお金も増えているみたいだから、助けてきたの」と打ち明けたといいます。

 

浩さんは、孫のためにお金を使うこと自体に反対だったわけではありません。しかし、どれくらいの頻度で、いくら渡していたのかを聞き、表情が変わりました。月々の生活費の補助に加え、学校関係の費用や家電の買い替えなど、まとまった金額を渡すこともあったといいます。

 

毎月の援助で平均5万円、1年間で60万円。3年間続けば180万円――そこに入学準備や習い事、臨時の援助などが加わります。

 

「総額にして400万円程度になると。ただはっきりとした金額はわからないというじゃないですか。私たちの老後資金だって無限にあるわけではありません。思わず『このままじゃ金が尽きるぞ!』と声を荒らげてしまいました」

 

由美子さんも「でも困っている娘を放っておけない。私たちには退職金もあるから、大丈夫だと思っていた」と反論。浩さんは言葉に詰まりました。

 

浩さんは冷静になり「娘たちを助けたいという気持ちはわかる。でも、いくらまでなら援助できるのか決めておこう」と持ちかけたといいます。そして預貯金の残高や毎月の生活費を確認し、これからは、孫へのお祝いなどを除き、定期的な生活費の補助は原則として行わず、臨時の援助が必要な場合も夫婦で相談してから決めることにしたそうです。

 

「家族だから助けたいという気持ちは変わりません。でも、自分たちの生活が成り立たなくなったら、結局は娘たちにも心配をかけてしまいますから」

 

老後資金で見落としがちなのが「子どもや孫への援助」。最初から「自分たちは自分たち、子どもは子ども」と割り切っているケースもあるでしょう。一方で、子どもや孫には身の丈以上に援助してしまうことも、珍しいことではありません。

 

総務省『家計調査(家計収支編)2025年』によると、65歳以上の夫婦無職世帯における毎月の平均実収入25万4,395円に対し、実支出は29万6,829円で、毎月約4万2,400円の不足が生じています。日々の生活費だけでも貯蓄を取り崩す構造にあるなか、子や孫への定期的な金銭援助まで重なれば、老後資金が底をつくスピードは一気に加速することになります。

 

退職金や貯蓄があることは、老後の安心につながります。しかし、その金額だけを見て「まだ余裕がある」と判断するのではなく、年金収入と日々の支出、今後必要になる医療費や住まいの維持費などを踏まえ、長期的な生活設計を考えることが大切です。