高齢になってからの再婚は、残りの人生をともに過ごすパートナーを得る機会となります。一方、再婚した親と実子の間には、さまざまな問題が生じることも珍しくありません。ある家族のケースから、再婚した親が亡くなった場合の相続について考えていきます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「まさか、あの女にすべて持っていかれるなんて…」再婚6ヵ月で67歳父が急死…「6,000万円の実家」を失った39歳長男の誤算 ※写真はイメージです/PIXTA

再婚した父がわずか6ヵ月で急死

「まさか、あの女にすべて持っていかれるなんて……」と悔しさをにじませる埼玉県在住、39歳の高橋翔太さん(仮名)。妻と2人の子どもの4人家族。東京都内の実家には、67歳の父・修さん(仮名)がひとりで暮らしていました。
母親が亡くなったのは、修さんが54歳のとき。夫婦で暮らしてきた一戸建てに残された父親を、翔太さんは心配していました。仕事や子育てに追われ、頻繁に顔を出すことはできませんでしたが、月に何度か電話をかけ、休日には家族で実家を訪ねていました。


そんな父親から、再婚の話を聞かされたのは半年前のこと。相手は65歳の女性。知人の紹介で知り合い、食事を重ねるうちに親しくなったといいます。


「正直、驚きました。母が亡くなってから、10年以上経つとはいえ、年金をもらうような年齢ですから。でも、父もひとり暮らしが長かったし、これから一緒に過ごす相手がいるなら、それもいいのかなと思ったんです」


ただ翔太さんには、気がかりなことがひとつありました。実家のことです。その家は、もともと母親の実家でした。母親が亡くなった際に修さんが相続し、その後も父親が住み続けていたのです。


翔太さんも、その家で生まれ育ちました。玄関を開けたときの匂いも、家族で食卓を囲んだ居間も、子どものころの記憶と結びついています。自分が引き継ぐことになるのだろうと、漠然と考えていました。


「再婚したら、あの家で一緒に暮らすのかと尋ねると、父は『そうなるだろうな』と答えました」


父親の再婚相手とも顔を合わせましたが、特に険悪な雰囲気になったわけではありません。翔太さんは、父親が選んだ人生なのだからと考え、再婚に反対することはありませんでした。


「財産のことも、いつかは話さなければと思っていました。でも、父も元気でしたし、再婚したばかりのふたりに、いきなり相続の話をするのも気が引けて……」


結局、実家を将来どうするのか、父親ときちんと話し合うことはありませんでした。ところが、再婚からわずか6ヵ月後、突然の知らせが届きます。修さんが自宅で倒れ、搬送先の病院で亡くなったのです。死因は心筋梗塞でした。


「まだ再婚したばかりなのに。これからふたりで暮らしていくはずだったのに……」


翔太さんは、父親が亡くなったことをすぐには受け止められませんでした。葬儀の準備や親族への連絡に追われ、気づけば慌ただしく日々が過ぎていました。


そんななか、再婚相手の女性から、今後の手続きについて話したいと連絡がありました。父親が残した財産は、自宅の土地・建物が3,500万円、預貯金が2,500万円。合計6,000万円です。遺言書は見つかりませんでした。


翔太さんは、預貯金を分け合い、実家についても話し合えばよいと考えていました。しかし、相続について話し合う場で、女性は思いがけないことを口にしました。


「私はこれからも、この家で暮らしていきたいと思っています」


翔太さんは戸惑いました。 「でも、あの家は母の実家なんです。僕にとっても大切な家で……」


そう伝えると、女性は少し間を置いてから答えました。

 

「お気持ちはわかります。でも、私は修さんの妻です。これからの生活もありますから、法律に従って相続したいと思っています」


女性の言い分も、理解できないわけではありませんでした。父親が亡くなった以上、女性も生活を続けていかなければなりません。


それでも、翔太さんには割り切れない思いがありました。

 

「父と結婚して、まだ半年ですよ。僕は子どものころから、あの家で暮らしてきたんです。それなのに、父が亡くなった途端、家をどうするかという話になってしまって……」


もちろん、女性が父親の財産を相続すること自体に異議があるわけではありません。ただ、母親が亡くなった後も父親が住み続けてきた家を、自分ではなく再婚相手が引き継ぐ可能性がある。その現実を、翔太さんは簡単には受け入れられませんでした。